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第2章

70.ざまあ

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 クリストファー殿下を呼んだのは、ジェニファーの護衛だということに気づき、お礼を言う。

 女性の友人だからと言って、油断してはいけない。男の嫉妬の方が、キツイが、女性の嫉妬もなかなかのものだということをここでも、忘れていた。

 女性は嫉妬心が大きくなればなるほど、その相手の女性から何もかも奪いたくなるもの。たとえ、それが命であったとしても。

 だから、今回は殺されずに済んでよかったと思う。

 でも、これって、昨日のリリアーヌよりは、タチが悪いのでは?と思う。

 それなら、この娘に天罰が下るのかしら?聖女様を愚弄した罪は大きい。どんな天罰になるかわからないので、これからは、この娘にあまり関わらない方がいいかもしれないと、考え始める。

 その後、この娘は、学園長に呼び出しを食らい、さんざん絞られたみたいだけど、懲りていない様子。

 無論、ジェニファーは、真の天罰がこの程度で済まないことは承知している。


 それでも、相変わらず、ジェニファーにつっかかってくる。

「なにをしているのだ。聖女様をお守りしろ!」

 その声にハッとなった男子生徒の何人かが、ジェニファーの周りを取り囲んでくれる。

 その娘は伯爵令嬢のマリアンヌ・フォンダ、つい最近、婚約者の侯爵令息と婚約破棄されたばかりだそうで、それをジェニファーのせいにされても、困るわよ。

 そのマリアンヌは、傍から見ても醜悪な目つきになっていて、学園長に叱られたことを根に持っているみたいだった。

 ジェニファーを取り囲んだ男子生徒の中に、マリアンヌを婚約破棄した侯爵令息が混じっていたようで、マリアンヌに対し、

「落ち着け」

 火に油を注いだ結果になってしまう。

 マリアンヌは、目を見開き、ますます激昂していく。

 知らないわよ。本当に天罰が下るわよ。

 その日の放課後、それまで晴れていた天気が一変して、雲行きが怪しくなってくる。

 帰りも馬車だから、別にいいけど。

 幸いまだ雨は降り出していない。でも、やたら黒い雲が気になるところ。

 馬車駐めのスペースには、帰宅を急ぐ生徒と護衛騎士でごった返している。

 コアラルンプール学園は、全寮制の学園だけど、もう3年生ともなるとシドニー国の貴族の令嬢令息は、自宅から通学を許されている。

 本人の自由意思で、寮で生活したり、自宅から通学したりを選択できる仕組みになっている。

 それで今日みたいに急にお天気が悪くなりかけると、里心がつくのか、家に帰りたがる生徒が増える。

 ジェニファーとしては、寮の部屋から聖女島に帰ることもできるので、どっちでもよかったのだけど、昨日の今日のことだから、クリストファー殿下がベッタリくっついて、放してくださらない。

 それで馬車駐めのところまで来ているのだが、なんせごった返しているものだから、なかなか王家の馬車が駐めてあるところまで行きつけていないというのが今の状況なのだ。

 こういう時に、身分や王族であることを持ち出さない殿下は偉いと思うし、尊敬しているところなので、何も言わず、馬車が駐めてあるところまで、空くのをひたすら待っている。

「ピカッ!ドーン……キャァッー!」

 なになに?どこかに堕ちた?

 ピンポイントで、カミナリが落ちたようだ。

 真っ青になっている人物の中心に目をやると、……絶句してしまった。

 真っ黒に墨みたいになっている人の形をしたまま横たわっている。男か女かの判別もできない。ただ、その馬車の紋章は、フォンダ伯爵の紋章であったことから、その人物は、マリアンヌである可能性が極めて高い。

 空を見上げると、あれだけ真っ黒だった雲の塊がウソのように消えていて、そこには、鮮やかな青空が広がっている。

 やっぱり、天罰が下ったとしか思えない。

 ジェニファー自身は、天罰が下った瞬間を目にすることが初めての経験だったから、少々戸惑いながらも王城へ戻った。
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