68 / 99
第2章
68.二人目の聖女様4
しおりを挟む
国王陛下は、大変立腹なさって、即刻、兵を出してくださることになった。
「リリアーヌという娘の出自を明らかにして、その家族がいたら、ひっ捕らえてこい!」
「はっ!」
「それにしても、ここまでの道中、空を飛んでこられたと聞き、驚いた。今回の問題がカタをつけば、ぜひ、儂にも空を体験させてもらいたいものじゃ」
「ええ。いつでも、かまいませんわ」
「でも、二人聖女の原因を探らないと、オチオチ寝てもいられませんから」
「たぶん、その娘の虚言癖から端を発していると思うが、将来の国母とは、大きく出たものだな」
「明日にでも、糾弾するつもりでいます」
「その娘、今はどこに?」
「おそらく学園の寮にいると思います」
「それならば、これから行って、分捕まえて来ようか?」
「えっ!まあ、可能なことは可能でしょうけど……」
「その空飛ぶ船に儂も乗せてくれ」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
急遽、ムーラン国の国王陛下と近衛兵、リリアーヌの母と思しき女性、司祭様、アルカイダ国教会の教皇とクリストファー殿下、ジェニファーとその護衛達で、広い船内が狭く感じるほど、ひしめくほどに人が乗り込んでいる。
シドニーまで、隣の国だから、あっという間に着き、このまま学園内に船で乗り付けると目立って仕方がない。
お城から、馬車で来てもらおうかとも、思っていると、
「あ!あれが、学園ですか?」
バレたので、そのまま船に隠ぺい魔法をかけて、寮のすぐ近くで船を下ろす。リリアーヌ母の話によれば、リリアーヌは、3日ほど前から家出しているという。
隠ぺい魔法をかけたままの状態で、空中クローゼットに船を仕舞い込み、何気ない顔をして女子寮に向かう。
「こっちよ。」
クリストファーの護衛が学園長室に入り、仔細を説明しているようだ。その間に女子寮の家宅捜索を行う。
ジェニファーも、つい先頃まで、寮の住人だったので、勝手はわかっている。
すぐに寮母を見つけ、
「聖女様のお部屋はどこ?」
それは、ジェニファーの隣の部屋だったところ。そうか、ここ空き部屋だったのか?今更ながらに、思い当たる節があったことを思い出す。
その部屋はいつも静まり返っていた。だから、ジェニファーが出入りしていても物音ひとつしないから、好都合だったことを思い出す。
白髭の司祭様とリリアーヌ母を寮母に紹介し、女子寮の出入り口は、ムーランの近衛兵に固めさせる。
ノックをするのは、ジェニファーがすることになり、司祭様とリリアーヌ母は、ジェニファーの部屋のドアを開けっぱなしにした状態で、そこにいてもらうことにした。
「コンコンコン」
「はーい」
「隣室の者です。リリアーヌ聖女様のお部屋で間違いなかったでしょうか?」
できるだけ丁寧に、優しく微笑みを湛えながら静かに言うと、
「お友達が欲しかったの。仲良くしてね」
少々、胸が痛んだが、リリアーヌが明るく返事をしたところに、リリアーヌ母が飛び込んできて、
「アンタ!今まで、どこをほっつき歩いていたのかと思えば、隣の国へ行ってまで、他人様の迷惑までかけちまって、この親不孝者が!」
リリアーヌ母は、勢い込んで、バシバシとリリアーヌ嬢を引っ叩いている音がして、慌てて司祭様が止めに入られるまで、リリアーヌ嬢の頬は赤く腫れあがっていたのだ。
「その方が、聖女様ということは、まことの話か?」
「だれよ。このジジイ。そうよ。私は聖女リリアーヌ、ご神託を受けて、聖女様になったのよ」
「嘘を言うな!この親不孝者めが!」
「嘘じゃないわよ!」
「儂は、ムーラン国教会の司祭じゃ。これより聖女様の判定を行う」
「え!……いや、ちょっと待ってよ」
「立会人は、聖女ジェニファー様にお願いしてもよいか?」
「はい。謹んでお引き受けします」
「えー!嘘よ。あんた、さっき、隣室の者って、言ってなかった?」
「はい。隣室の者です」
「では、同道願おう」
「え!ヤダ!ちょっと待ってよ」
いくらリリアーヌが阿婆擦れでも、お年寄りとはいえ、男性の力には抵抗できない、寮の入り口に引きずり出される。
そこには、ムーラン国の国旗を掲げた近衛兵氏の姿が隊列を組んで待ち構えている。
「今、この場で、水晶玉判定をしてもらおう」
司祭様が教会を出るときに用意されたものであろうか、紫色の袱紗に包まれた水晶玉をリリアーヌ嬢の前に差し出される。
「え……と、今日は調子が悪くて、明日でもいいなら……」
「ダメだ。大きく息を吸って、止めて静かに吐いて」
司祭様は、嫌がるリリアーヌの手を引いて、無理やり水晶玉に手をかざさせる。
「……」
「ムーラン国、近衛兵ダニエル・ストマー、これより我が国発の偽聖女様を捕まえ、本国へ帰還および連行する!」
高らかに宣言され、リリアーヌはそのまま、近衛兵の中に飲み込まれていった。
アルカイダ国国教会の教皇様は、寮の部屋から聖女島に戻られたけど、よく考えれば、あちらに馬車を置きっぱなしだったことを思い出し、いったんクリストファーと護衛とともに、聖女島へ行き、そこから馬車を飛ばして、お城に帰る。
「リリアーヌという娘の出自を明らかにして、その家族がいたら、ひっ捕らえてこい!」
「はっ!」
「それにしても、ここまでの道中、空を飛んでこられたと聞き、驚いた。今回の問題がカタをつけば、ぜひ、儂にも空を体験させてもらいたいものじゃ」
「ええ。いつでも、かまいませんわ」
「でも、二人聖女の原因を探らないと、オチオチ寝てもいられませんから」
「たぶん、その娘の虚言癖から端を発していると思うが、将来の国母とは、大きく出たものだな」
「明日にでも、糾弾するつもりでいます」
「その娘、今はどこに?」
「おそらく学園の寮にいると思います」
「それならば、これから行って、分捕まえて来ようか?」
「えっ!まあ、可能なことは可能でしょうけど……」
「その空飛ぶ船に儂も乗せてくれ」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
急遽、ムーラン国の国王陛下と近衛兵、リリアーヌの母と思しき女性、司祭様、アルカイダ国教会の教皇とクリストファー殿下、ジェニファーとその護衛達で、広い船内が狭く感じるほど、ひしめくほどに人が乗り込んでいる。
シドニーまで、隣の国だから、あっという間に着き、このまま学園内に船で乗り付けると目立って仕方がない。
お城から、馬車で来てもらおうかとも、思っていると、
「あ!あれが、学園ですか?」
バレたので、そのまま船に隠ぺい魔法をかけて、寮のすぐ近くで船を下ろす。リリアーヌ母の話によれば、リリアーヌは、3日ほど前から家出しているという。
隠ぺい魔法をかけたままの状態で、空中クローゼットに船を仕舞い込み、何気ない顔をして女子寮に向かう。
「こっちよ。」
クリストファーの護衛が学園長室に入り、仔細を説明しているようだ。その間に女子寮の家宅捜索を行う。
ジェニファーも、つい先頃まで、寮の住人だったので、勝手はわかっている。
すぐに寮母を見つけ、
「聖女様のお部屋はどこ?」
それは、ジェニファーの隣の部屋だったところ。そうか、ここ空き部屋だったのか?今更ながらに、思い当たる節があったことを思い出す。
その部屋はいつも静まり返っていた。だから、ジェニファーが出入りしていても物音ひとつしないから、好都合だったことを思い出す。
白髭の司祭様とリリアーヌ母を寮母に紹介し、女子寮の出入り口は、ムーランの近衛兵に固めさせる。
ノックをするのは、ジェニファーがすることになり、司祭様とリリアーヌ母は、ジェニファーの部屋のドアを開けっぱなしにした状態で、そこにいてもらうことにした。
「コンコンコン」
「はーい」
「隣室の者です。リリアーヌ聖女様のお部屋で間違いなかったでしょうか?」
できるだけ丁寧に、優しく微笑みを湛えながら静かに言うと、
「お友達が欲しかったの。仲良くしてね」
少々、胸が痛んだが、リリアーヌが明るく返事をしたところに、リリアーヌ母が飛び込んできて、
「アンタ!今まで、どこをほっつき歩いていたのかと思えば、隣の国へ行ってまで、他人様の迷惑までかけちまって、この親不孝者が!」
リリアーヌ母は、勢い込んで、バシバシとリリアーヌ嬢を引っ叩いている音がして、慌てて司祭様が止めに入られるまで、リリアーヌ嬢の頬は赤く腫れあがっていたのだ。
「その方が、聖女様ということは、まことの話か?」
「だれよ。このジジイ。そうよ。私は聖女リリアーヌ、ご神託を受けて、聖女様になったのよ」
「嘘を言うな!この親不孝者めが!」
「嘘じゃないわよ!」
「儂は、ムーラン国教会の司祭じゃ。これより聖女様の判定を行う」
「え!……いや、ちょっと待ってよ」
「立会人は、聖女ジェニファー様にお願いしてもよいか?」
「はい。謹んでお引き受けします」
「えー!嘘よ。あんた、さっき、隣室の者って、言ってなかった?」
「はい。隣室の者です」
「では、同道願おう」
「え!ヤダ!ちょっと待ってよ」
いくらリリアーヌが阿婆擦れでも、お年寄りとはいえ、男性の力には抵抗できない、寮の入り口に引きずり出される。
そこには、ムーラン国の国旗を掲げた近衛兵氏の姿が隊列を組んで待ち構えている。
「今、この場で、水晶玉判定をしてもらおう」
司祭様が教会を出るときに用意されたものであろうか、紫色の袱紗に包まれた水晶玉をリリアーヌ嬢の前に差し出される。
「え……と、今日は調子が悪くて、明日でもいいなら……」
「ダメだ。大きく息を吸って、止めて静かに吐いて」
司祭様は、嫌がるリリアーヌの手を引いて、無理やり水晶玉に手をかざさせる。
「……」
「ムーラン国、近衛兵ダニエル・ストマー、これより我が国発の偽聖女様を捕まえ、本国へ帰還および連行する!」
高らかに宣言され、リリアーヌはそのまま、近衛兵の中に飲み込まれていった。
アルカイダ国国教会の教皇様は、寮の部屋から聖女島に戻られたけど、よく考えれば、あちらに馬車を置きっぱなしだったことを思い出し、いったんクリストファーと護衛とともに、聖女島へ行き、そこから馬車を飛ばして、お城に帰る。
1
お気に入りに追加
800
あなたにおすすめの小説
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
「おまえを愛することはない。名目上の妻、使用人として仕えろ」と言われましたが、あなたは誰ですか!?
kieiku
恋愛
いったい何が起こっているのでしょうか。式の当日、現れた男にめちゃくちゃなことを言われました。わたくし、この男と結婚するのですか……?
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう
楽歩
恋愛
白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳のシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢。
きらびやかに彩られた学院の大広間で、別の女性をエスコートして現れたセドリック王太子殿下に婚約破棄を宣言された。
傍若無人なふるまい、大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、王太子が心惹かれる男爵令嬢には嫌がらせをする。令嬢の有責で婚約破棄、国外追放、除籍…まさにその宣告が下されようとした瞬間。
「心当たりはありますが、本当にご理解いただけているか…答え合わせいたしません?」
令嬢との答え合わせに、青ざめ愕然としていく王太子、男爵令嬢、側近達など…
周りに搾取され続け、大事にされなかった令嬢の答え合わせにより、皆の終わりが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる