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第2章
68.二人目の聖女様4
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国王陛下は、大変立腹なさって、即刻、兵を出してくださることになった。
「リリアーヌという娘の出自を明らかにして、その家族がいたら、ひっ捕らえてこい!」
「はっ!」
「それにしても、ここまでの道中、空を飛んでこられたと聞き、驚いた。今回の問題がカタをつけば、ぜひ、儂にも空を体験させてもらいたいものじゃ」
「ええ。いつでも、かまいませんわ」
「でも、二人聖女の原因を探らないと、オチオチ寝てもいられませんから」
「たぶん、その娘の虚言癖から端を発していると思うが、将来の国母とは、大きく出たものだな」
「明日にでも、糾弾するつもりでいます」
「その娘、今はどこに?」
「おそらく学園の寮にいると思います」
「それならば、これから行って、分捕まえて来ようか?」
「えっ!まあ、可能なことは可能でしょうけど……」
「その空飛ぶ船に儂も乗せてくれ」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
急遽、ムーラン国の国王陛下と近衛兵、リリアーヌの母と思しき女性、司祭様、アルカイダ国教会の教皇とクリストファー殿下、ジェニファーとその護衛達で、広い船内が狭く感じるほど、ひしめくほどに人が乗り込んでいる。
シドニーまで、隣の国だから、あっという間に着き、このまま学園内に船で乗り付けると目立って仕方がない。
お城から、馬車で来てもらおうかとも、思っていると、
「あ!あれが、学園ですか?」
バレたので、そのまま船に隠ぺい魔法をかけて、寮のすぐ近くで船を下ろす。リリアーヌ母の話によれば、リリアーヌは、3日ほど前から家出しているという。
隠ぺい魔法をかけたままの状態で、空中クローゼットに船を仕舞い込み、何気ない顔をして女子寮に向かう。
「こっちよ。」
クリストファーの護衛が学園長室に入り、仔細を説明しているようだ。その間に女子寮の家宅捜索を行う。
ジェニファーも、つい先頃まで、寮の住人だったので、勝手はわかっている。
すぐに寮母を見つけ、
「聖女様のお部屋はどこ?」
それは、ジェニファーの隣の部屋だったところ。そうか、ここ空き部屋だったのか?今更ながらに、思い当たる節があったことを思い出す。
その部屋はいつも静まり返っていた。だから、ジェニファーが出入りしていても物音ひとつしないから、好都合だったことを思い出す。
白髭の司祭様とリリアーヌ母を寮母に紹介し、女子寮の出入り口は、ムーランの近衛兵に固めさせる。
ノックをするのは、ジェニファーがすることになり、司祭様とリリアーヌ母は、ジェニファーの部屋のドアを開けっぱなしにした状態で、そこにいてもらうことにした。
「コンコンコン」
「はーい」
「隣室の者です。リリアーヌ聖女様のお部屋で間違いなかったでしょうか?」
できるだけ丁寧に、優しく微笑みを湛えながら静かに言うと、
「お友達が欲しかったの。仲良くしてね」
少々、胸が痛んだが、リリアーヌが明るく返事をしたところに、リリアーヌ母が飛び込んできて、
「アンタ!今まで、どこをほっつき歩いていたのかと思えば、隣の国へ行ってまで、他人様の迷惑までかけちまって、この親不孝者が!」
リリアーヌ母は、勢い込んで、バシバシとリリアーヌ嬢を引っ叩いている音がして、慌てて司祭様が止めに入られるまで、リリアーヌ嬢の頬は赤く腫れあがっていたのだ。
「その方が、聖女様ということは、まことの話か?」
「だれよ。このジジイ。そうよ。私は聖女リリアーヌ、ご神託を受けて、聖女様になったのよ」
「嘘を言うな!この親不孝者めが!」
「嘘じゃないわよ!」
「儂は、ムーラン国教会の司祭じゃ。これより聖女様の判定を行う」
「え!……いや、ちょっと待ってよ」
「立会人は、聖女ジェニファー様にお願いしてもよいか?」
「はい。謹んでお引き受けします」
「えー!嘘よ。あんた、さっき、隣室の者って、言ってなかった?」
「はい。隣室の者です」
「では、同道願おう」
「え!ヤダ!ちょっと待ってよ」
いくらリリアーヌが阿婆擦れでも、お年寄りとはいえ、男性の力には抵抗できない、寮の入り口に引きずり出される。
そこには、ムーラン国の国旗を掲げた近衛兵氏の姿が隊列を組んで待ち構えている。
「今、この場で、水晶玉判定をしてもらおう」
司祭様が教会を出るときに用意されたものであろうか、紫色の袱紗に包まれた水晶玉をリリアーヌ嬢の前に差し出される。
「え……と、今日は調子が悪くて、明日でもいいなら……」
「ダメだ。大きく息を吸って、止めて静かに吐いて」
司祭様は、嫌がるリリアーヌの手を引いて、無理やり水晶玉に手をかざさせる。
「……」
「ムーラン国、近衛兵ダニエル・ストマー、これより我が国発の偽聖女様を捕まえ、本国へ帰還および連行する!」
高らかに宣言され、リリアーヌはそのまま、近衛兵の中に飲み込まれていった。
アルカイダ国国教会の教皇様は、寮の部屋から聖女島に戻られたけど、よく考えれば、あちらに馬車を置きっぱなしだったことを思い出し、いったんクリストファーと護衛とともに、聖女島へ行き、そこから馬車を飛ばして、お城に帰る。
「リリアーヌという娘の出自を明らかにして、その家族がいたら、ひっ捕らえてこい!」
「はっ!」
「それにしても、ここまでの道中、空を飛んでこられたと聞き、驚いた。今回の問題がカタをつけば、ぜひ、儂にも空を体験させてもらいたいものじゃ」
「ええ。いつでも、かまいませんわ」
「でも、二人聖女の原因を探らないと、オチオチ寝てもいられませんから」
「たぶん、その娘の虚言癖から端を発していると思うが、将来の国母とは、大きく出たものだな」
「明日にでも、糾弾するつもりでいます」
「その娘、今はどこに?」
「おそらく学園の寮にいると思います」
「それならば、これから行って、分捕まえて来ようか?」
「えっ!まあ、可能なことは可能でしょうけど……」
「その空飛ぶ船に儂も乗せてくれ」
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急遽、ムーラン国の国王陛下と近衛兵、リリアーヌの母と思しき女性、司祭様、アルカイダ国教会の教皇とクリストファー殿下、ジェニファーとその護衛達で、広い船内が狭く感じるほど、ひしめくほどに人が乗り込んでいる。
シドニーまで、隣の国だから、あっという間に着き、このまま学園内に船で乗り付けると目立って仕方がない。
お城から、馬車で来てもらおうかとも、思っていると、
「あ!あれが、学園ですか?」
バレたので、そのまま船に隠ぺい魔法をかけて、寮のすぐ近くで船を下ろす。リリアーヌ母の話によれば、リリアーヌは、3日ほど前から家出しているという。
隠ぺい魔法をかけたままの状態で、空中クローゼットに船を仕舞い込み、何気ない顔をして女子寮に向かう。
「こっちよ。」
クリストファーの護衛が学園長室に入り、仔細を説明しているようだ。その間に女子寮の家宅捜索を行う。
ジェニファーも、つい先頃まで、寮の住人だったので、勝手はわかっている。
すぐに寮母を見つけ、
「聖女様のお部屋はどこ?」
それは、ジェニファーの隣の部屋だったところ。そうか、ここ空き部屋だったのか?今更ながらに、思い当たる節があったことを思い出す。
その部屋はいつも静まり返っていた。だから、ジェニファーが出入りしていても物音ひとつしないから、好都合だったことを思い出す。
白髭の司祭様とリリアーヌ母を寮母に紹介し、女子寮の出入り口は、ムーランの近衛兵に固めさせる。
ノックをするのは、ジェニファーがすることになり、司祭様とリリアーヌ母は、ジェニファーの部屋のドアを開けっぱなしにした状態で、そこにいてもらうことにした。
「コンコンコン」
「はーい」
「隣室の者です。リリアーヌ聖女様のお部屋で間違いなかったでしょうか?」
できるだけ丁寧に、優しく微笑みを湛えながら静かに言うと、
「お友達が欲しかったの。仲良くしてね」
少々、胸が痛んだが、リリアーヌが明るく返事をしたところに、リリアーヌ母が飛び込んできて、
「アンタ!今まで、どこをほっつき歩いていたのかと思えば、隣の国へ行ってまで、他人様の迷惑までかけちまって、この親不孝者が!」
リリアーヌ母は、勢い込んで、バシバシとリリアーヌ嬢を引っ叩いている音がして、慌てて司祭様が止めに入られるまで、リリアーヌ嬢の頬は赤く腫れあがっていたのだ。
「その方が、聖女様ということは、まことの話か?」
「だれよ。このジジイ。そうよ。私は聖女リリアーヌ、ご神託を受けて、聖女様になったのよ」
「嘘を言うな!この親不孝者めが!」
「嘘じゃないわよ!」
「儂は、ムーラン国教会の司祭じゃ。これより聖女様の判定を行う」
「え!……いや、ちょっと待ってよ」
「立会人は、聖女ジェニファー様にお願いしてもよいか?」
「はい。謹んでお引き受けします」
「えー!嘘よ。あんた、さっき、隣室の者って、言ってなかった?」
「はい。隣室の者です」
「では、同道願おう」
「え!ヤダ!ちょっと待ってよ」
いくらリリアーヌが阿婆擦れでも、お年寄りとはいえ、男性の力には抵抗できない、寮の入り口に引きずり出される。
そこには、ムーラン国の国旗を掲げた近衛兵氏の姿が隊列を組んで待ち構えている。
「今、この場で、水晶玉判定をしてもらおう」
司祭様が教会を出るときに用意されたものであろうか、紫色の袱紗に包まれた水晶玉をリリアーヌ嬢の前に差し出される。
「え……と、今日は調子が悪くて、明日でもいいなら……」
「ダメだ。大きく息を吸って、止めて静かに吐いて」
司祭様は、嫌がるリリアーヌの手を引いて、無理やり水晶玉に手をかざさせる。
「……」
「ムーラン国、近衛兵ダニエル・ストマー、これより我が国発の偽聖女様を捕まえ、本国へ帰還および連行する!」
高らかに宣言され、リリアーヌはそのまま、近衛兵の中に飲み込まれていった。
アルカイダ国国教会の教皇様は、寮の部屋から聖女島に戻られたけど、よく考えれば、あちらに馬車を置きっぱなしだったことを思い出し、いったんクリストファーと護衛とともに、聖女島へ行き、そこから馬車を飛ばして、お城に帰る。
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