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第2章
61.留学4 ざまあ
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それからというもの、学園公認の仲になったジェニファーとクリストファーは、学園内だけでなく、王城でも、寮の中でもイチャイチャしているが、まだ深い仲というところまでは至っていない。
意外とクリストファーがオクテで、その気になれば、ジェニファーに夜這いをかけられるのに、そうしない。きっと根が真面目なのだろうと思う。
あのパサラン国のガブリエルとは、雲泥の差がある。
それにジェニファーも、まだ自分の正体を明かせてない。一応、空中クローゼットを通って、グラント公爵夫妻が何日かシドニー王城に滞在し、国王ご夫妻と挨拶も済ませているが、肝心な話は、まだしていないという現状がある。
ジェニファーとしてはいつ、言い出すべきかと悩んでいるが、クリストファーもシドニー国も、ジェニファーのことをアルカイダの公爵令嬢としてしか見ていないから、学友たちからは、玉の輿と囃し立てられ、言い出せずにいる。
「やっぱり。美人は得よね。転入してきたその日に、王太子殿下から見初められ、玉の輿に乗っちゃうんだもの」
「カトリーヌ様だって、妾腹でも、第2王子様と結婚できるのだから、公爵家の令嬢と王族は玉の輿ルート間違いなしってとこね」
「ああ、私も公爵家に生まれてくれば、よかったわ」
「アンタは美人じゃないから、願っても玉の輿なんて、無理よぉ」
「何よ!夢を壊さないでよ」
学友たちが、教室でワイワイ騒いでいるところを、廊下越しに猛烈悪意を放って睨んでいる少女がいることに気づく。
「あの娘は誰?」
「ああ、あの娘は男爵令嬢のエリーゼよ、そういえば、王太子殿下があのエリーゼを当て馬に使ったのよね?クリストファー殿下の側近が、あの娘にお金を払って買収したって話、聞いたけど、それからどうなったのか知らないわ」
「聞いた話では、エリーゼの男爵家は左前で、相当借金を抱えているみたいなそうよ」
「それで、一時的にも、当て馬役を買って出たって、聞くわ」
「ふーん。そうなの。ありがとう」
「それより、ジェニファーは、故郷でお妃教育が済んでいるって聞いたけど、具体的にお妃教育って何するの?」
学友たちとのおしゃべりは、絶えない。
それにエリーゼの憎悪に満ちた視線はコワイわね。
何もなければ、いいけど……。
それから2~3日は何事もなく、穏やかな日々を過ごす。すっかり、エリーゼ嬢のことを忘れていたのは、失敗だったと思い知らされることになろうとは、まだ思いもしていなかったのだ。放課後、寮に戻らず、学園帰りは王城で過ごすことが多くなり、その日も、護衛の騎士とともに、王家からの馬車に乗り込んだ瞬間、違和感を覚える。
憎悪の視線だけではなく、何かゾッとするような殺気を感じる。それで、慌てて、乗り込んだ馬車全体に結界を張るのだが……。
あともう少しで、王城が見えてくる。というところで、何者かに弓で射かけられることになってしまったのだ。幸い、事前に馬車には、結界を張っていたので、馬車は無事だったのだが、並行している護衛の一人が負傷してしまった。
パサラン国で、2回に渡り、祝福を与えた騎士だったので、命に別状はない。その騎士のカラダを馬車の中に引き入れ、治癒魔法を施すと、あっという間に回復し、また騎乗して、護衛を再開させるのだが、今度は、「呪い返し」の結界を2人の護衛騎士にも張る。
「呪い返し」とは、悪意を持って、行った呪いが倍になって術者の元へ跳ね返る仕組みの結界で、この場合、最初に射かけた弓の本人に倍になって、跳ね返るというものを施す。
馬車の運行を始めて、すぐ再び襲撃されたが、襲撃されたのは、1回きりで、二度と射かけられることはなくなった。
要するに犯人が、アタマを狙えば、犯人のアタマめがけて2本の矢が跳ね返る仕組みの呪いだから、二本目の矢をつがえる前に落命したのかもしれない。
その日を境に、エリーゼの姿を見たものはいない。
意外とクリストファーがオクテで、その気になれば、ジェニファーに夜這いをかけられるのに、そうしない。きっと根が真面目なのだろうと思う。
あのパサラン国のガブリエルとは、雲泥の差がある。
それにジェニファーも、まだ自分の正体を明かせてない。一応、空中クローゼットを通って、グラント公爵夫妻が何日かシドニー王城に滞在し、国王ご夫妻と挨拶も済ませているが、肝心な話は、まだしていないという現状がある。
ジェニファーとしてはいつ、言い出すべきかと悩んでいるが、クリストファーもシドニー国も、ジェニファーのことをアルカイダの公爵令嬢としてしか見ていないから、学友たちからは、玉の輿と囃し立てられ、言い出せずにいる。
「やっぱり。美人は得よね。転入してきたその日に、王太子殿下から見初められ、玉の輿に乗っちゃうんだもの」
「カトリーヌ様だって、妾腹でも、第2王子様と結婚できるのだから、公爵家の令嬢と王族は玉の輿ルート間違いなしってとこね」
「ああ、私も公爵家に生まれてくれば、よかったわ」
「アンタは美人じゃないから、願っても玉の輿なんて、無理よぉ」
「何よ!夢を壊さないでよ」
学友たちが、教室でワイワイ騒いでいるところを、廊下越しに猛烈悪意を放って睨んでいる少女がいることに気づく。
「あの娘は誰?」
「ああ、あの娘は男爵令嬢のエリーゼよ、そういえば、王太子殿下があのエリーゼを当て馬に使ったのよね?クリストファー殿下の側近が、あの娘にお金を払って買収したって話、聞いたけど、それからどうなったのか知らないわ」
「聞いた話では、エリーゼの男爵家は左前で、相当借金を抱えているみたいなそうよ」
「それで、一時的にも、当て馬役を買って出たって、聞くわ」
「ふーん。そうなの。ありがとう」
「それより、ジェニファーは、故郷でお妃教育が済んでいるって聞いたけど、具体的にお妃教育って何するの?」
学友たちとのおしゃべりは、絶えない。
それにエリーゼの憎悪に満ちた視線はコワイわね。
何もなければ、いいけど……。
それから2~3日は何事もなく、穏やかな日々を過ごす。すっかり、エリーゼ嬢のことを忘れていたのは、失敗だったと思い知らされることになろうとは、まだ思いもしていなかったのだ。放課後、寮に戻らず、学園帰りは王城で過ごすことが多くなり、その日も、護衛の騎士とともに、王家からの馬車に乗り込んだ瞬間、違和感を覚える。
憎悪の視線だけではなく、何かゾッとするような殺気を感じる。それで、慌てて、乗り込んだ馬車全体に結界を張るのだが……。
あともう少しで、王城が見えてくる。というところで、何者かに弓で射かけられることになってしまったのだ。幸い、事前に馬車には、結界を張っていたので、馬車は無事だったのだが、並行している護衛の一人が負傷してしまった。
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「呪い返し」とは、悪意を持って、行った呪いが倍になって術者の元へ跳ね返る仕組みの結界で、この場合、最初に射かけた弓の本人に倍になって、跳ね返るというものを施す。
馬車の運行を始めて、すぐ再び襲撃されたが、襲撃されたのは、1回きりで、二度と射かけられることはなくなった。
要するに犯人が、アタマを狙えば、犯人のアタマめがけて2本の矢が跳ね返る仕組みの呪いだから、二本目の矢をつがえる前に落命したのかもしれない。
その日を境に、エリーゼの姿を見たものはいない。
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