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第2章
59.留学2
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「皆様、はじめまして。わたくしはジェニファー・グラント。公爵の一人娘でございます。この国へ留学を決めたのは、どなたかいいお婿さんを探しにやってきました。どうぞ、よろしくおねがいします」
「カトリーヌ様とは、お知り合いですか?」
「いいえ。まったく存じ上げませんわ」
「そうよね。似ても似つかないもの」
クスクスと少女の一人が笑うと、なぜか教室中が爆笑の渦に包まれる。
理由を聞くと、ジェニファーは金髪碧眼なのに対し、カトリーヌ様は銀髪蒼眼なのらしい。やっぱり、あの殿下と呼ばれる男性に対し、眼鏡を新調と無礼極まりないことを言ったことは正解だったようで、似ても似つかない令嬢と知ったうえで、喧嘩を吹っかけてきたのなら許さないわよ、と強く思う。
ホームルームで挨拶を終え、その日はそれだけだったので、寮へと急ぐ。もちろん、聖女島に帰るためで、他にすることがない。
寮の部屋に着くなり、先ほど殿下と呼ばれる男性の側近らしい人が訪ねてきた。
「今から殿下が、謝罪したいと仰せなので、ご足労だが王城まで来ていただけないだろうか?」
「お断りします。謝罪なさるのなら、わたくしではなく婚約者のカトリーヌ様でしたか?その方に謝罪されるのが筋では、ございませんか?」
「いや、しかい……殿下が、先ほどの公爵令嬢に、と申されておりますので」
「眼鏡をお買いになられたのなら、お会いしますが、まだお買いになっていらっしゃらないのでは、お会いしても無駄でございますわ」
疲れたのと、少々めんどくさいのが、重なって、結局、扉をバタンと閉めて、追い返す形になってしまった。
空中クローゼットを通り、さっさと自宅に戻り、居間でお茶をしていらした母上相手に愚痴をこぼす。
「今朝ね。入学式が終わり、担任の先生と一緒に教室へ行こうとしたら、シドニー国の殿下と呼ばれる男性から……殿下と呼ばれるからには、王子様なのかしら?その王子様から、いきなり婚約破棄されちゃって、人違いだったらしいのだけど、縁起が悪いったらありゃしないわ」
「わぁ。大変だったわね。お疲れさま」
「ったくよ。教室に行ったら、その間違えた婚約者の見てくれをいろいろ聞いたら、わたくしとは全然、似ても似つかないので、さらにビックリしちゃったわよ。あの王子、目が悪いというよりアタマがおかしいのだと思うわ」
婚活に来ているのに、入学早々、人違いとはいえ婚約破棄されてはたまらない。
「それで、謝罪したいからって、王城へ来い。って言うのよ」
「行ってくればいいじゃない」
「いやよ。縁起が悪いわ」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「なに!?あの人違いだった令嬢に断られた?なぜだ?女は誰でも、俺が呼べばホイホイと来るものではないか?それなのに、なぜ断る?」
「あの公爵令嬢、かなりの美人でしたからね。怒っているのでは、ありませんか?」
「えっ!美人なら、なおさら俺に媚を売るものではないのか?」
「クリストファー殿下、本当に眼鏡を作られた方がいいのではございませんか?差し出がましいようですが、あの美形の公爵令嬢は金髪碧眼で、婚約者のカトリーヌ様は銀髪蒼眼なので、似ても似つかない容姿をしていらっしゃるのですよ。お二方の違いも判られないのでしたら、私からも眼鏡の購入をオススメします」
「いや、少し違うな。とは、思ったのだが、とにかくカトリーヌと婚約破棄しなければ、このまま立太子の礼をすることになってしまう。何とかそれだけは、避けたいのだ」
「それでは、婚約破棄などせずに、廃嫡願を出されたら、いかがですか?」
「そんなことができるものなら、もうとっくにやっているわ!」
「カトリーヌ様とは、お知り合いですか?」
「いいえ。まったく存じ上げませんわ」
「そうよね。似ても似つかないもの」
クスクスと少女の一人が笑うと、なぜか教室中が爆笑の渦に包まれる。
理由を聞くと、ジェニファーは金髪碧眼なのに対し、カトリーヌ様は銀髪蒼眼なのらしい。やっぱり、あの殿下と呼ばれる男性に対し、眼鏡を新調と無礼極まりないことを言ったことは正解だったようで、似ても似つかない令嬢と知ったうえで、喧嘩を吹っかけてきたのなら許さないわよ、と強く思う。
ホームルームで挨拶を終え、その日はそれだけだったので、寮へと急ぐ。もちろん、聖女島に帰るためで、他にすることがない。
寮の部屋に着くなり、先ほど殿下と呼ばれる男性の側近らしい人が訪ねてきた。
「今から殿下が、謝罪したいと仰せなので、ご足労だが王城まで来ていただけないだろうか?」
「お断りします。謝罪なさるのなら、わたくしではなく婚約者のカトリーヌ様でしたか?その方に謝罪されるのが筋では、ございませんか?」
「いや、しかい……殿下が、先ほどの公爵令嬢に、と申されておりますので」
「眼鏡をお買いになられたのなら、お会いしますが、まだお買いになっていらっしゃらないのでは、お会いしても無駄でございますわ」
疲れたのと、少々めんどくさいのが、重なって、結局、扉をバタンと閉めて、追い返す形になってしまった。
空中クローゼットを通り、さっさと自宅に戻り、居間でお茶をしていらした母上相手に愚痴をこぼす。
「今朝ね。入学式が終わり、担任の先生と一緒に教室へ行こうとしたら、シドニー国の殿下と呼ばれる男性から……殿下と呼ばれるからには、王子様なのかしら?その王子様から、いきなり婚約破棄されちゃって、人違いだったらしいのだけど、縁起が悪いったらありゃしないわ」
「わぁ。大変だったわね。お疲れさま」
「ったくよ。教室に行ったら、その間違えた婚約者の見てくれをいろいろ聞いたら、わたくしとは全然、似ても似つかないので、さらにビックリしちゃったわよ。あの王子、目が悪いというよりアタマがおかしいのだと思うわ」
婚活に来ているのに、入学早々、人違いとはいえ婚約破棄されてはたまらない。
「それで、謝罪したいからって、王城へ来い。って言うのよ」
「行ってくればいいじゃない」
「いやよ。縁起が悪いわ」
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「なに!?あの人違いだった令嬢に断られた?なぜだ?女は誰でも、俺が呼べばホイホイと来るものではないか?それなのに、なぜ断る?」
「あの公爵令嬢、かなりの美人でしたからね。怒っているのでは、ありませんか?」
「えっ!美人なら、なおさら俺に媚を売るものではないのか?」
「クリストファー殿下、本当に眼鏡を作られた方がいいのではございませんか?差し出がましいようですが、あの美形の公爵令嬢は金髪碧眼で、婚約者のカトリーヌ様は銀髪蒼眼なので、似ても似つかない容姿をしていらっしゃるのですよ。お二方の違いも判られないのでしたら、私からも眼鏡の購入をオススメします」
「いや、少し違うな。とは、思ったのだが、とにかくカトリーヌと婚約破棄しなければ、このまま立太子の礼をすることになってしまう。何とかそれだけは、避けたいのだ」
「それでは、婚約破棄などせずに、廃嫡願を出されたら、いかがですか?」
「そんなことができるものなら、もうとっくにやっているわ!」
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