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第2章
58.留学1
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ジェニファーの留学先は難航する。
全寮制で、宗教法人が経営していないところがいい。なぜなら、宗教法人の経営だと、水晶玉判定が必須で、聖女様であることがバレてしまうから。
同じ理由で、魔法学園もダメ。
できるだけ一般人として、学園生活を送ってもらい、その中でダイヤモンド原石というべき殿方を探してもらう狙いがある。
それでようやく合格できた学園は、聖女島からはるか南方にあるシドニー国のコアラルンプール学園というところ。
全寮制で、学食も完備しているので、貴族令嬢の場合は、一応侍女と護衛を連れて来てもいいことになっている。
グラント家からは、2人の侍女と2人の護衛という態で、送り込むことにする。
一応、全寮制なのだが、ジェニファーは、見かけだけ、寮に住んでいることにして、実際は聖女島から毎朝、通学することにして、騎士も侍女も同じく聖女島から一緒にシドニー国へ通勤するという形にしている。
だから、寮の部屋は生徒一人につき一室で、騎士の部屋、侍女の部屋、書斎、リビング、寝室と簡単なキッチンもあるが、未使用のまま置いてある。
まったく生活感のない寮の部屋なのだが、勉強机などの調度品は、備え付けられているので、それこそ身一つで学園に来ても、何も困らない。
それで本来なら、学園に馬車で乗り付けてくるところだが、別に荷物と言っても学園の制服ぐらいなので、自宅の公爵邸から着て出たままの姿で、転入生用の入学式に臨んでいる。
「ご入学、ご転入おめでとうございます。私はコアラルンプール学園長のベッパンと申します。皆さんは、若く、これから勉強にスポーツを励んで、悔いのない学園生活を送っていただきますように、ご挨拶に替えさせていただきます」
長い挨拶が、やっと終わって、これから、クラス担任とともに、新しいクラスに入り挨拶して、今日のところの予定は終了するはず。
それなのに、担任の先生と校庭を歩き、教室に向かっているジェニファーの元に一人の青年が近づいてくる。
担任の先生は、見知った顔なのか、礼をとり、そのまま通り過ぎようとなさったので、ジェニファーも同じように礼をして、少し脇に寄り、その男性が通り過ぎるのを待つ。
すると、どういうわけか、その男性は、ジェニファーの前に立ち大声で宣言を始められる。
「公爵令嬢カトリーヌ・バトラー、貴様との婚約は今をもって、破棄させてもらうこととする!」
「?」
「わ、わ、殿下、人違いでございます!」
ジェニファーの前を歩いていた担任の先生が慌てて引き返してきて、殿下と呼ばれる人に頭を下げ説明しているにも関わらず、その殿下とやらは、喚き散らしていて、聞く耳を持たない様子。
これには、ジェニファーも何のことやらさっぱりわからず、ポカンとしている。
「貴様は、我が愛しのエリーゼに、さんざんなイジメを繰り返し、将来の国母に無礼を働いた咎により、……」
「殿下、ですから人違いです!この令嬢は、本日転入されてきたばかりのジェニファー・グラント公爵令嬢で、カトリーヌ嬢とは、まったく無縁の令嬢でございます!」
「へっ!?」
「……」
「あ、いや……これは、ご無礼致した。後程、お詫びに行かせていただく」
「一言、よろしいでしょうか?」
「はい。なんなりと」
「眼鏡を新調なさってくださいね」
そう言い残し、ジェニファーは担任の先生と共に教室に向かう。
殿下と呼ばれる男性の側近だろうか、大慌ての様子で殿下と呼ばれる男性に駆け寄り、殿下と呼ばれる男性を引きずっていく姿を目端におく。
クラス担任の先生とともに、教室に入ると、もうジェニファーのことが格好の噂の対象になっていた。
人違いでの婚約破棄とはいえ、あまりいい気がするものではない。
ジェニファー自信も、人生2度目、前世から数えて、3度目の婚約破棄は、少し胸が痛む。自分のことではないと思っていても、これを言われた令嬢のことを考えるとやり切れない思いがする。
全寮制で、宗教法人が経営していないところがいい。なぜなら、宗教法人の経営だと、水晶玉判定が必須で、聖女様であることがバレてしまうから。
同じ理由で、魔法学園もダメ。
できるだけ一般人として、学園生活を送ってもらい、その中でダイヤモンド原石というべき殿方を探してもらう狙いがある。
それでようやく合格できた学園は、聖女島からはるか南方にあるシドニー国のコアラルンプール学園というところ。
全寮制で、学食も完備しているので、貴族令嬢の場合は、一応侍女と護衛を連れて来てもいいことになっている。
グラント家からは、2人の侍女と2人の護衛という態で、送り込むことにする。
一応、全寮制なのだが、ジェニファーは、見かけだけ、寮に住んでいることにして、実際は聖女島から毎朝、通学することにして、騎士も侍女も同じく聖女島から一緒にシドニー国へ通勤するという形にしている。
だから、寮の部屋は生徒一人につき一室で、騎士の部屋、侍女の部屋、書斎、リビング、寝室と簡単なキッチンもあるが、未使用のまま置いてある。
まったく生活感のない寮の部屋なのだが、勉強机などの調度品は、備え付けられているので、それこそ身一つで学園に来ても、何も困らない。
それで本来なら、学園に馬車で乗り付けてくるところだが、別に荷物と言っても学園の制服ぐらいなので、自宅の公爵邸から着て出たままの姿で、転入生用の入学式に臨んでいる。
「ご入学、ご転入おめでとうございます。私はコアラルンプール学園長のベッパンと申します。皆さんは、若く、これから勉強にスポーツを励んで、悔いのない学園生活を送っていただきますように、ご挨拶に替えさせていただきます」
長い挨拶が、やっと終わって、これから、クラス担任とともに、新しいクラスに入り挨拶して、今日のところの予定は終了するはず。
それなのに、担任の先生と校庭を歩き、教室に向かっているジェニファーの元に一人の青年が近づいてくる。
担任の先生は、見知った顔なのか、礼をとり、そのまま通り過ぎようとなさったので、ジェニファーも同じように礼をして、少し脇に寄り、その男性が通り過ぎるのを待つ。
すると、どういうわけか、その男性は、ジェニファーの前に立ち大声で宣言を始められる。
「公爵令嬢カトリーヌ・バトラー、貴様との婚約は今をもって、破棄させてもらうこととする!」
「?」
「わ、わ、殿下、人違いでございます!」
ジェニファーの前を歩いていた担任の先生が慌てて引き返してきて、殿下と呼ばれる人に頭を下げ説明しているにも関わらず、その殿下とやらは、喚き散らしていて、聞く耳を持たない様子。
これには、ジェニファーも何のことやらさっぱりわからず、ポカンとしている。
「貴様は、我が愛しのエリーゼに、さんざんなイジメを繰り返し、将来の国母に無礼を働いた咎により、……」
「殿下、ですから人違いです!この令嬢は、本日転入されてきたばかりのジェニファー・グラント公爵令嬢で、カトリーヌ嬢とは、まったく無縁の令嬢でございます!」
「へっ!?」
「……」
「あ、いや……これは、ご無礼致した。後程、お詫びに行かせていただく」
「一言、よろしいでしょうか?」
「はい。なんなりと」
「眼鏡を新調なさってくださいね」
そう言い残し、ジェニファーは担任の先生と共に教室に向かう。
殿下と呼ばれる男性の側近だろうか、大慌ての様子で殿下と呼ばれる男性に駆け寄り、殿下と呼ばれる男性を引きずっていく姿を目端におく。
クラス担任の先生とともに、教室に入ると、もうジェニファーのことが格好の噂の対象になっていた。
人違いでの婚約破棄とはいえ、あまりいい気がするものではない。
ジェニファー自信も、人生2度目、前世から数えて、3度目の婚約破棄は、少し胸が痛む。自分のことではないと思っていても、これを言われた令嬢のことを考えるとやり切れない思いがする。
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