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第2章
56.縁談6
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「お聞きになりたいことは、パサラン国のガブリエル王子が聖女様の結婚相手として、相応しいかどうかということですか?」
「はい。そうです。何かガブリエル様のことで、良くない噂などを聞かれたことはございませんか?」
「まあ、あれだけ美丈夫な王子様ですし、浮いた噂の一つや二つはあってもおかしくはないと思っておられるでしょうが、そういった話はとんと、聞き及びがないです。可もなく不可もないと言ったところでしょうか。でも、聖女様が隣国パサランの王妃様となられるのであれば、我々は歓迎いたします。これからは、友好と親睦を深めて参りたいと思っております」
可もなく、不可もなくって……。
ケセラン国での聞き合わせは不調に終わる。それで仕方なく、もう一国に聞き合わせを行うことにして、早々に暇乞いをして、次の国に向かう。
続いて向かう国はパサラン国の北側に位置するサフラン帝国に行く。
この帝国は、内陸で海なし国なので、空飛ぶ船でお城まで飛んでいくと怪訝な顔をされたのだが、今はそんなことに気にしている猶予はない。
船から降りて、空中クローゼットの中に船を仕舞い込んでいると、衛兵から、「それが海で乗る船か?」と質問攻めにあう。
「ええ。乗ってみますか?」
「よいのか?」
「かまいませんよ」
そういえば、アルカイダも海なし国だったから、余計に海へのあこがれがあったのだと思い出す。
今、仕舞ったばかりの船を再び出し、衛兵の何人かを乗せて、海へ向かう。
「ところで、わが国にはどういったご用向きで来られたのだ?」
「その話は、我が国についてから申しましょう」
まもなく聖女島が見えてくる。いったん、ここでトイレ休憩にしてから、再び出発する予定。
その前に、サフラン国の衛兵の質問に答えることにする。
「実は、縁談の聞き合わせですわ。お相手はパサラン国のガブリエル殿下のことで、何かご存知の方がいらっしゃればと思いまして」
サフラン国から連れてきた衛兵は、大きく目を見開いて、
「ガブリエル殿下とは、学園で同級生でした。そうか、もうご結婚されるのか」
その衛兵は、しばらく感慨深げに遠い目をしている。きっと、学園生活の思い出にふけっているのかもしれない。
「当時、お付き合いされていたご令嬢のことをお伺いしたいのです」
「えっ!?」
その衛兵は、明らかに動揺の色を隠せないでいる。
やっぱりね。あれだけのイケメンに彼女がいないわけがない。女の方がほっとかないもの。
「もう、ご存知だったのですね。ええ、クリスティーヌ公爵令嬢のことを、殿下とクリスティーヌ様は小さいときに政略で婚約者になられたのですが、それは仲睦まじいカップルで、学園のみんながうらやましがるお二人で。でも、お二人の幸せは長くは続きませんでした」
「何か、あったのですか?」
「はい。夏休みにクリスティーヌ様が領地へ帰られるときに事件がおきまして、盗賊がクリスティーヌ様の乗られた馬車を襲い、クリスティーヌ様は辱めを受けられてしまったのです。翌朝、「殿下に申し訳ない」と遺書を残して、首を吊り自害された姿でみつかったのです」
「まあ!お辛いことがあったのですね」
「はい。それで私は騎士の道を志し、もう二度と婦女子が盗賊に襲われないように日々精進して、この春やっと、近衛に昇格しました」
そんなことがあったの……。それで、夜這いを仕掛けてきたのね。
でも、それと聖女の配偶者とは、別問題だから気にしない。と言えば、嘘になる。どうやって、その辛苦から立ち直られたのかしら。そちらの方が、興味があるかもしれない。
ケセラン国では、どうも奥歯にモノが挟まった感じだったこともこの話で頷ける。
とりあえず、その衛兵をサフラン国まで送り、そのままジェニファーは聖女島へ戻る。
「はい。そうです。何かガブリエル様のことで、良くない噂などを聞かれたことはございませんか?」
「まあ、あれだけ美丈夫な王子様ですし、浮いた噂の一つや二つはあってもおかしくはないと思っておられるでしょうが、そういった話はとんと、聞き及びがないです。可もなく不可もないと言ったところでしょうか。でも、聖女様が隣国パサランの王妃様となられるのであれば、我々は歓迎いたします。これからは、友好と親睦を深めて参りたいと思っております」
可もなく、不可もなくって……。
ケセラン国での聞き合わせは不調に終わる。それで仕方なく、もう一国に聞き合わせを行うことにして、早々に暇乞いをして、次の国に向かう。
続いて向かう国はパサラン国の北側に位置するサフラン帝国に行く。
この帝国は、内陸で海なし国なので、空飛ぶ船でお城まで飛んでいくと怪訝な顔をされたのだが、今はそんなことに気にしている猶予はない。
船から降りて、空中クローゼットの中に船を仕舞い込んでいると、衛兵から、「それが海で乗る船か?」と質問攻めにあう。
「ええ。乗ってみますか?」
「よいのか?」
「かまいませんよ」
そういえば、アルカイダも海なし国だったから、余計に海へのあこがれがあったのだと思い出す。
今、仕舞ったばかりの船を再び出し、衛兵の何人かを乗せて、海へ向かう。
「ところで、わが国にはどういったご用向きで来られたのだ?」
「その話は、我が国についてから申しましょう」
まもなく聖女島が見えてくる。いったん、ここでトイレ休憩にしてから、再び出発する予定。
その前に、サフラン国の衛兵の質問に答えることにする。
「実は、縁談の聞き合わせですわ。お相手はパサラン国のガブリエル殿下のことで、何かご存知の方がいらっしゃればと思いまして」
サフラン国から連れてきた衛兵は、大きく目を見開いて、
「ガブリエル殿下とは、学園で同級生でした。そうか、もうご結婚されるのか」
その衛兵は、しばらく感慨深げに遠い目をしている。きっと、学園生活の思い出にふけっているのかもしれない。
「当時、お付き合いされていたご令嬢のことをお伺いしたいのです」
「えっ!?」
その衛兵は、明らかに動揺の色を隠せないでいる。
やっぱりね。あれだけのイケメンに彼女がいないわけがない。女の方がほっとかないもの。
「もう、ご存知だったのですね。ええ、クリスティーヌ公爵令嬢のことを、殿下とクリスティーヌ様は小さいときに政略で婚約者になられたのですが、それは仲睦まじいカップルで、学園のみんながうらやましがるお二人で。でも、お二人の幸せは長くは続きませんでした」
「何か、あったのですか?」
「はい。夏休みにクリスティーヌ様が領地へ帰られるときに事件がおきまして、盗賊がクリスティーヌ様の乗られた馬車を襲い、クリスティーヌ様は辱めを受けられてしまったのです。翌朝、「殿下に申し訳ない」と遺書を残して、首を吊り自害された姿でみつかったのです」
「まあ!お辛いことがあったのですね」
「はい。それで私は騎士の道を志し、もう二度と婦女子が盗賊に襲われないように日々精進して、この春やっと、近衛に昇格しました」
そんなことがあったの……。それで、夜這いを仕掛けてきたのね。
でも、それと聖女の配偶者とは、別問題だから気にしない。と言えば、嘘になる。どうやって、その辛苦から立ち直られたのかしら。そちらの方が、興味があるかもしれない。
ケセラン国では、どうも奥歯にモノが挟まった感じだったこともこの話で頷ける。
とりあえず、その衛兵をサフラン国まで送り、そのままジェニファーは聖女島へ戻る。
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