ブチギレ令嬢の復讐婚~親友と浮気され婚約破棄、その上結婚式場として予定していた場所まで提供してほしいと言われ💔

青の雀

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第2章

53.縁談3

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 ジェファニーが目にした乗り物は、桟橋に停泊中の船。聞けば、ガブリエル様の持ち物だという。

 「それなら、これで乗っていきましょうよ」

 「えっ!でも、お帰りはどうされるのですか?」

 「大丈夫よ。なんとかなるわ」

 全員は、乗り込んだところで、クイに巻き付けていたロープが解かれる。

 水夫がオールを手にした途端、海ではなく空気を漕いでしまう。スカッスカッ。

 「あれ?」

 「……」

 「すっげぇー!」

 「空だ!空を飛んでいる!」

 ガブリエル様も側近の方々も身を乗り出して、落ちたらどうすんのよ!

 「ご乗船ありがとうございます。まもなくパサラン国上空に参ります。到着までしばらくお待ちくださいませ」

 そのままジェニファーは、山の方まで飛んでいき、ガブリエル様に

 「このあたりで、よろしいかしら?それとも、もう少し奥まで行きますか?」

 ガブリエルは驚愕を隠しもせずに、目で合図する。

 ふもとの作業小屋の近くに、降りることにして、どこかに空き地を探す。

 作業員たちは、空から急に船が下りてきたので、びっくりしながら上を睨んでいる。

 中には、疲れすぎて、目がかすんだのだろうか何度も、目をこすっている者の姿も見える。

 やがて、降りてきた人物がガブリエル殿下だとわかると、鉱夫達は一斉に跪く。

 「聖女様をお連れ申した。この山の神を鎮めてくださる祈りを捧げて下さる。皆の者、ありがたく頭を垂れよ」

 「ははーっ」

 「祓いたまえ!清めたまえ!」

 一通り祈りが終わると、ジェニファーは、前世ヤーパン国で覚えた歌を歌い始める。

 「だーれもいないと思っていても、どこかでどこかでエンジェルが!」

 すると鉱夫たち、ガブリエル、護衛の騎士に側近、水夫たち、教会関係者の元にエンジェルがラッパを背中に背負って現れ、セーロガンのような調べを奏でる。

 「ぱっぱらっぱっぱらぱーぱーぱーぱぱん」

 不思議とスッキリした気分になる。エンジェルの姿は、もういない。

 「さて、祝福も終わりましたので、そろそろ帰りましょうか?」

 「はい。聖女様」

 司祭様に修道士が跪いている。

 なぜかガブリエル様に他の護衛の騎士さんも顔を上げないでいる。

 「え?皆さん、帰られないのかしら?」

 「聖女様、実は、もう少し東側の山の神もお願いしたいのですが?」

 「あら、そう。まだ、あったのね?」

 もう一度船に乗り込む一行を、祝福を受けた鉱夫たちはいつまでも、見上げ、歓声を送っている。

 東側の山々も蒼い地肌が見える。

 「あれかしら?」

 ジェニファーは、そこにも作業小屋を見つけ、その近くに下り立ち、そこで祈りを捧げ、エンジェルの詩を歌い、全員に祝福を与える。

 「2回目の祝福を頂きましたが、不思議と気分がいいです」

 騎士様は、堪らず聖女様に駆け寄り、握手を求める。

 ジェニファーは、別に嫌がりもせず、握手に応えていると、急にガブリエルが二人の間に入ってきて、ムスっとしている。焼きもち?その様子がおかしくって、ついクスクスと笑ってしまう。

 「ブフッ!」

 教会関係者も同じように、吹き出して、大声で笑ったので、ガブリエルは顔を真っ赤にしている。

 ガブリエルをお城まで送ると、ついでだからここで休憩しようという話になり、初めてパサラン国のお城へお邪魔することにした。

 船は、お城の中庭につけることにして、水夫たちには、存分なご褒美をもらったみたいで、何度も頭を下げ、お城から帰っていく。

 この船は、後で港のどこかに帰せばいいだろうか?と思っていたら、ガブリエルは、生まれて初めて空を飛んだ興奮から冷めやらずで

 「もしよろしければ、その船を聖女様に寄贈したい」

 申し出てくれたので、ありがたく頂戴することにした。よし。これで帰りの足もなんとかなったとほくそ笑む。

 船は空中クローゼットの中にしまう。

 でも、よく考えたら、これからここにちょくちょく来るのだから、このお城のどこかにゲートを作らせてもらおう。そうすれば、船に乗らずとも、いつでも、お互いに行き来ができるというもの。

 ガブリエルもその意見に賛意してくれ、ガブリエルの資質のクローゼットにゲートを作る。
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