上 下
47 / 99
第2章

47.引っ越し2 ざまあ

しおりを挟む
 王都から持ってきたスコット領地とクレイマー領地は、グラント領地の横に出す。貴族邸は、そのままタウンハウスを並べていくつもりでいたが、少々誤算が生じた。

 それは、王都で使用人の家を引っ越すのは、たいして問題にはならなかったのだが、スコット邸の地面を収納している最中に、運悪く国教会の連中に見つかってしまったからで、国教会は、それならば、と大聖堂の地面を差し上げますので、自分たちも聖女様と共に行きたいと申し出てこられた。

 えー!と思ったけど、面倒ごとになるのでは?と……、でもアルカイダ国は、いずれ黒い雨が降り壊滅することは、わかっている。前世のジャガード国の様になることがわかっていながら、少なくとも聖女様の存在、女神さまを信仰している者をこのままアルカイダ国へ置いていても大丈夫かと、不安がよぎる。

 それで、国教会ごと連れてくることにしたのだ。アルカイダ国に散らばっている牧師、修道士の類も、国教会の命令ひとつで、それぞれ国境を越え、南の島へ行くまでの間、拾えるものは、拾って、避難所へ連れて来ている。

 後は、司祭様を案内役として、鄙びた教会を回収して、ついでにそこの地面ももらうため、大聖堂を束して戻ってきたところ。

 それら地面を全部海上に浮かべれば、そこそこの広さの島になるが、ジェニファーはあえて、ドーナッツ型にして、真ん中は望めば、いつでも海の幸が手に入れられるようにしたのだ。

 ちょうど、前世のアサシン国の様に。ただ、違うのは、いきなり外洋ではなく湾にすることで、漁をしやすくしたつもり。

 嵐や時化の時も、湾にしといた方が何かと安心なのでは?という配慮で、ドーナッツ型の島にしてみたのだ。

 少しずつだが、島らしくなってきたと自己満足している。

 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 その頃、リリアーヌ・ドイルは荒れている。

 「どうして、わたくしが婚約してもらえないのかしら?スティーブンは、2~3日前には、ジェニファーと婚約破棄しているというのに!」

 「いえ。お嬢様、グラント公爵令嬢様は聖女様になられたからでございましょう。ですから、ひょっとすれば王家はまだ婚約破棄ということには、至っていないのかもしれません。」

 「なんですって!?それなら、わたくしも聖女様になるわっ!それならジェニファーと互角になるわよね?」

 「いいえ、それが聖女様とは、1000年に一人しかなれないので、ございますれば、今世でジェニファー嬢のほかを置いて、聖女様となることは出来かねます。」

 「フン。そんなもの教会にお金を掴ませたら、どうにでもなるって話でしょ?今すぐ、教会へ行って、ジェニファーを聖女様の地位から引きずり降ろしてきなさい!」

 「いや、そればかりは、なんともなりません。」

 「いいから。今すぐ行ってきなさい!」

 リリアーヌお嬢様は、少々バカだから、聖女様というものがどういうものか、さっぱり理解されていない。

 1000年に一人という意味も、お金では買えないということも、そして何より大切なことは、聖女様は処女でしかなれないということをわかっていらっしゃらない。

 バカに付ける薬はないのだから、このまま無視しておこうかとも、思う。

 そこへ絶妙のタイミングで、スティーブン殿下がお見えになり、ドイル家は、ホっとため息を漏らす。

 「リリアーヌ、すまない。別れてくれ。」

 「はあ?何、言っているのよ。ジェニファーとは、婚約破棄していないの?聖女様になったから?スティーブンを引き留めるために、聖女様なんて、手を使ったに違いはないわよ!目を覚ましてよ。」

 「いや、ジェニファーと別れてから、聖女様判定が下ったのだ。それで親父にさんざん怒られて、リリアーヌと別れろって言われてさ。頼む。今は王位継承権がかかっている大事な時期なんだ。だから継承権の決着がつくまで、しばらく別れたフリをしていてくれ。きっと、迎えに行くから。頼む。」

 スティーブンにそこまで言われたら、ワガママも言えない。

 「わかったわ。おとなしく待つ。でも、今日は、泊っていくのでしょう?」

 「あ、いや……ダメだ。そんなことすれば、廃嫡になりかねない。ごめん。」

 「っもう!なんなのよ。」

 リリアーヌは、手当たり次第にモノを投げ、そのうちの一つがスティーブンに命中し、額が少し切れたようで、血がにじんでいる。

 それだけで、不敬罪と傷害罪、それに国家反逆罪の疑いまで着くのだが、頭に血が上っているリリアーヌは、気づいていない。

 ドイル家から、項垂れて出てきたスティーブンを見て、刃傷沙汰があったと勘違いした護衛の騎士は、ドイル家に舞い戻り、リリアーヌを引っ立てて、お城の地下室に放り込む。

 だが、その現場をスティーブンは、側近に手当てしてもらっていたので、見ていない。ということも、不運の拍車がかかる
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『番外編』イケメン彼氏は年上消防士!結婚式は波乱の予感!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は年上消防士!・・・の、番外編になります。 結婚することが決まってしばらく経ったある日・・・ 優弥「ご飯?・・・かぁさんと?」 優弥のお母さんと一緒にランチに行くことになったひなた。 でも・・・ 優弥「最近食欲落ちてるだろ?風邪か?」 ひなた「・・・大丈夫だよ。」 食欲が落ちてるひなたが優弥のお母さんと一緒にランチに行く。 食べたくないのにお母さんに心配をかけないため、無理矢理食べたひなたは体調を崩す。 義母「救護室に行きましょうっ!」 ひなた「すみません・・・。」 向かう途中で乗ったエレベーターが故障で止まり・・・ 優弥「ひなた!?一体どうして・・・。」 ひなた「うぁ・・・。」 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

奥様はエリート文官

神田柊子
恋愛
【2024/6/19:完結しました】【2024/11/21:おまけSS追加中】 王太子の筆頭補佐官を務めていたアニエスは、待望の第一子を妊娠中の王太子妃の不安解消のために退官させられ、辺境伯との婚姻の王命を受ける。 辺境伯領では自由に領地経営ができるのではと考えたアニエスは、辺境伯に嫁ぐことにした。 初対面で迎えた結婚式、そして初夜。先に寝ている辺境伯フィリップを見て、アニエスは「これは『君を愛することはない』なのかしら?」と人気の恋愛小説を思い出す。 さらに、辺境伯領には問題も多く・・・。 見た目は可憐なバリキャリ奥様と、片思いをこじらせてきた騎士の旦那様。王命で結婚した夫婦の話。 ----- 西洋風異世界。転移・転生なし。 三人称。視点は予告なく変わります。 ----- ※R15は念のためです。 ※小説家になろう様にも掲載中。 【2024/6/10:HOTランキング女性向け1位にランクインしました!ありがとうございます】

【完結済み】「こんなことなら、婚約破棄させてもらう!」幼い頃からの婚約者に、浮気を疑われた私。しかし私の前に、事の真相を知る人物が現れて……

オコムラナオ
恋愛
(完結済みの作品を、複数話に分けて投稿します。最後まで書きあがっておりますので、安心してお読みください) 婚約者であるアルフレッド・アルバートン侯爵令息から、婚約破棄を言い渡されたローズ。 原因は、二人で一緒に行ったダンスパーティーで、ローズが他の男と踊っていたから。 アルフレッドはローズが以前から様子がおかしかったことを指摘し、自分以外の男に浮気心を持っているのだと責め立てる。 ローズが事情を説明しようとしても、彼は頑なに耳を貸さない。 「こんなことなら、婚約破棄させてもらう!」 彼がこう宣言したとき、意外なところからローズに救いの手が差し伸べられる。 明かされたのはローズの潔白だけではなく、思いもよらない事実だった……

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】転生令嬢は玉の輿に乗りました

hikari
恋愛
エレオノーレは王太子、サウルと婚約をしていた。しかし、サウルは仲良しグループの1人ヴィルジニアに浮気をしていた。それに怒ったエレオノーレは婚約を破棄。 婚約破棄をしたのち、自分が転生者だと知る。前世は貧しい家の出自でご飯もろくに食べられなかった。そして、餓死。 実は第二王子パウルがエレオノーレを狙っていた事が判明。 親友と婚約者の裏切り。ただで済むはずはなく……。

処理中です...