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第2章

46.引っ越し1 小ざまあ

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 その頃、お城では国王陛下からたいへんな叱責を受けているスティーブンの姿があった。

 「だってリリアーヌが、ジェファニーは浮気していると言ったから。」

 「バカ者!聖女様は純潔の証と決まっておる!確たる証もなしに、お前という奴は!みすみす聖女様と婚約させてやったというのに、性悪女に引っかかり、聖女様と婚約破棄すれば、どんな神罰が下るかもしれんというのに!ドイル侯爵の娘とは、さっさと手を切れ!いいな。」

 国王陛下はジロリとスティーブンを睨んでいる。

 スティーブンは、昨日の夜、ジェニファーを失ったばかりで、今日は、リリアーヌも失うことになりそうで気が重い、王位継承権のことがあるから、仕方なく頷く。

 国教会は、必死になり、グラント一家の行方を捜しているが、見つからない。王都の公爵邸が建っていたところは大穴が開いているということがわかり、グラント領に確認に行かせたところ、同様の穴が見つかっただけ。

 その穴は、近くに行かなければわからない。なぜなら、そこには以前と変わらぬ風景があったので、教会の使者は、門扉についている呼び鈴を鳴らすべく、紐に手をかけると、それは霧の集団で掴めなかったことから、その足元に目をやると、そこにぽっかりと大穴の存在に気づいた。

 「聖女様は、いったい何処へ。」



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 ジェファニーは、急いで脱出したため、いまだアルカイダ国にグラント公爵家の使用人の家や家族をたくさん残してきたことに思案する。

 希望者があれば、この急ごしらえの避難所に連れて来てもいいと、思っている。それに幼馴染のシャーロットのことも気がかり、魔法鳥なんか飛ばしているより、行った方が早いとは思っているけど。

 ジェニファーの侍女は自分の家のことを言いだすことを遠慮しているみたいだけど、黒い雨が降れば、そんなこと言っていられないということがわかっていない。

 もう、ほっとこかなあ。と思い始める。

 でも、シャーロットのことは、ほっとけない。だから、もう一度、王都へ行くつもりにしている。

 それで侍女に着替えを手伝ってもらっていると、おもむろに自分の家族や領地も、こちらへ持ってきてほしいという話になったのだ。

 「いいわよ。」

 それで念のため、使用人の家族で、王都やその他の土地にいるものも希望があれば、ここへ移り住んでもよいという話をする。

 昨日の今日で、遠慮していた者も、侍女が言い出したことで、言いやすい環境ができたのか、我も我もと、手を挙げてきた。

 執事に、使用人の自宅や親戚の者の住所をリストアップさせ、希望者を全員並ばせる。その者たちの家族は、皆、王都に家を構えている。

 まずは、侍女のエリエールのところから、行くことにする。エリエールはスコット伯爵の娘で、グラント家に行儀見習い兼花嫁修業で来ている。

 ジェニファーは、希望する使用人全員を王都への転移魔法で送る。

 その足で、スコット家と幼馴染のクレイマー家に顔を出し、これこれしかじかと南の島にいることを教え、良かったら来ないか?と誘う。

 シャーロットは、すぐに了解してくれて、両親と執事に話しを通してくれたようだった。そして、クレイマー家の使用人の家もついでに連れていけることを言うと、驚いて、希望する使用人のリスト作りに加わってくれる。

 スコット家でも同じやり取りをして、領地と王都の使用人の家も併せて、南の島に移転することにしたのだ。

 使用人の地面は、もっていかないことにして、なぜなら住宅密集地で深さ50メートルの大穴が開いていると危ないからで、これでもアルカイダ国に配慮したつもりでいる。
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