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第2章
44.聖女判定1
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翌朝になって、ジェニファーは、王都と領地の執事を呼び出して、両親を交え、次の避難先の話をする。
昨夜、ジェニファーガお城から戻った時には、両親はすでに就寝していたので、両親に黙って王都を抜け出してきたことの詫びを一番に言う。
両親は、怒るというよりジェニファーが聖女様であったことが、よほど驚いたらしく、しばし目をパチクリさせていた。
「ジェニファーちゃん、いつ聖女様だということが分かったの?」
「え……と、3歳ぐらいの頃かしら。」
「だからスティーブン殿下のお妃選びの時、抵抗していたのね。言ってくれれば、良かったじゃない?水臭いわね。」
「もし、言えば、何が何でも殿下の婚約者にされて、……言わなくても、されたのだから、もっとひどい目に遭っていたかもしれませんわ。」
「それもそうね。浮気していながらジェニファーちゃんを側妃にしたいなんて、言い出しかねないものね。」
「だから今まで悟られないように、猫をかぶっていたの。ごめんなさい。」
「して、アルカイダが危ないというのは、誠の話か!?」
父であるグラント公爵が急に話に割り込んでくる。
「ええ。その通りです。まず王都に黒い雨が降り出します。ですから、その前にアルカイダを脱出した方がいいのです。」
「タウンハウスを持ち出してきたのだから、もう王家は出奔したことに気づいているはず。早めに手を打たないと、この領地が危ない。」
「しばらくは、幻影魔法が役立ってくれているはずです。タウンハウスと似たような影をもとあったところに、出しておきました。しばらくは、目くらましになると思いますわ。」
「そうか、よくやった。して、アテはあるのか?」
ジェニファーは少し逡巡したのち、ハッと閃いたかのように顔を上げ、
「この先の南の海を目指そうかと思います。いや、西の海でもいいですが。移動は、昨日と同じようにこのタウンハウスで移動して、王都の公爵邸が建っていた地面と領地の地面を持っていき、海を埋め立てて、しばらくは避難しようかと考えています。」
「なんと!聖女様は、海原を埋め立てて、その上に住もうと思っているのか!?」
「しばらくは、自給自足の生活になるかもしれませんが、今のところ、それが一番安全ではないかと思っています。」
うーん。父上は、黙って腕組をしている。このグラント領地は肥沃な土地で、黒い雨に晒されることは忍びない。
だけど、想像を絶する発想に、「ハイ、そうですか。」と賛意は示せず悩んでいる。
いくら聖女様だと言え、だいたい海原を埋め立てるなど、できるものなのか? 信じられないという思いが先に立つ。
失敗すれば、全員が海の底に落ちてしまう。こんな一か八かの賭けに乗れるだろうか?でも、ジェニファーの話が本当ならば、このままアルカイダに留まることはジリ貧の他ならないこと。
いずれにせよ、どこか安住の地を探さなければならない。
「わかった。でも、それには条件がある。疑っているわけではないが、パパの前でジェニファーが聖女様であるということを証明してくれないか?」
それは、つまりアルカイダ国教会で、聖女判定をしてくれということを意味すると父上は言っている。
「そんなこと、お安い御用ですわ。なんなら今からでも、行きます?でも、国教会に知られたら、大事になりますけど、よろしくて?」
「無論、構わない。覚悟はできている。」
ジェニファーは、会議に出席している全員に転移魔法をかけ、国教会がある王都の大聖堂に向かう。
まだ、両親にも空中クローゼットのことは言っていないので、今は転移魔法で行くことにする。
あっという間に、大聖堂の前に飛んだ一行は、今しがたまで、領地の領主の館に勢ぞろいしていたことが嘘みたいに思えて、キツネにつままれたような顔をしている。
昨夜、ジェニファーガお城から戻った時には、両親はすでに就寝していたので、両親に黙って王都を抜け出してきたことの詫びを一番に言う。
両親は、怒るというよりジェニファーが聖女様であったことが、よほど驚いたらしく、しばし目をパチクリさせていた。
「ジェニファーちゃん、いつ聖女様だということが分かったの?」
「え……と、3歳ぐらいの頃かしら。」
「だからスティーブン殿下のお妃選びの時、抵抗していたのね。言ってくれれば、良かったじゃない?水臭いわね。」
「もし、言えば、何が何でも殿下の婚約者にされて、……言わなくても、されたのだから、もっとひどい目に遭っていたかもしれませんわ。」
「それもそうね。浮気していながらジェニファーちゃんを側妃にしたいなんて、言い出しかねないものね。」
「だから今まで悟られないように、猫をかぶっていたの。ごめんなさい。」
「して、アルカイダが危ないというのは、誠の話か!?」
父であるグラント公爵が急に話に割り込んでくる。
「ええ。その通りです。まず王都に黒い雨が降り出します。ですから、その前にアルカイダを脱出した方がいいのです。」
「タウンハウスを持ち出してきたのだから、もう王家は出奔したことに気づいているはず。早めに手を打たないと、この領地が危ない。」
「しばらくは、幻影魔法が役立ってくれているはずです。タウンハウスと似たような影をもとあったところに、出しておきました。しばらくは、目くらましになると思いますわ。」
「そうか、よくやった。して、アテはあるのか?」
ジェニファーは少し逡巡したのち、ハッと閃いたかのように顔を上げ、
「この先の南の海を目指そうかと思います。いや、西の海でもいいですが。移動は、昨日と同じようにこのタウンハウスで移動して、王都の公爵邸が建っていた地面と領地の地面を持っていき、海を埋め立てて、しばらくは避難しようかと考えています。」
「なんと!聖女様は、海原を埋め立てて、その上に住もうと思っているのか!?」
「しばらくは、自給自足の生活になるかもしれませんが、今のところ、それが一番安全ではないかと思っています。」
うーん。父上は、黙って腕組をしている。このグラント領地は肥沃な土地で、黒い雨に晒されることは忍びない。
だけど、想像を絶する発想に、「ハイ、そうですか。」と賛意は示せず悩んでいる。
いくら聖女様だと言え、だいたい海原を埋め立てるなど、できるものなのか? 信じられないという思いが先に立つ。
失敗すれば、全員が海の底に落ちてしまう。こんな一か八かの賭けに乗れるだろうか?でも、ジェニファーの話が本当ならば、このままアルカイダに留まることはジリ貧の他ならないこと。
いずれにせよ、どこか安住の地を探さなければならない。
「わかった。でも、それには条件がある。疑っているわけではないが、パパの前でジェニファーが聖女様であるということを証明してくれないか?」
それは、つまりアルカイダ国教会で、聖女判定をしてくれということを意味すると父上は言っている。
「そんなこと、お安い御用ですわ。なんなら今からでも、行きます?でも、国教会に知られたら、大事になりますけど、よろしくて?」
「無論、構わない。覚悟はできている。」
ジェニファーは、会議に出席している全員に転移魔法をかけ、国教会がある王都の大聖堂に向かう。
まだ、両親にも空中クローゼットのことは言っていないので、今は転移魔法で行くことにする。
あっという間に、大聖堂の前に飛んだ一行は、今しがたまで、領地の領主の館に勢ぞろいしていたことが嘘みたいに思えて、キツネにつままれたような顔をしている。
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