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第1章

40.ママ友会5ざまあ

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 立ち話を聞いたことで、さらなる怒りがハイビスカスを襲う。

 驚いたことは、聖女様が作られたママ友会は、ママであれば、誰でも入れる。身分や爵位など関係がないということ。

 そして、会費を払うことなく無料で、様々なサービスを受けられるということ。

 例えば、行事で泊りがけの度も、着替えなどの荷物を持っていくだけで、別宮の宿泊費、食費、すべてが無料の上、空飛ぶ絨毯まで乗せてもらえたとか。

 その魔法の絨毯で、パートナーを誘いランデブーを勧められ、妻と愛を深めることができたと喜んでいる同僚がいる。

 王太子妃殿下でもあらせられる聖女様は、その会を母体として、社交界の運営、政治、教会内での地位すべてに権限を持っているということを見逃してはならない。

 すなわち、権力の中枢にいたければ、聖女様に逆らっては、生きていけないことを意味するのだが、そのあたりのことが、ジャクリーンにはまったくと言っていいほど理解していない。

 いつまでも娘時代のままの思考パターン、気持ちは公爵令嬢だった頃と何ら変わっていない。

 でも、今や公爵の妻なのだから、少しは自覚をもって行動してもらいたい。

 悩んだ挙句、昨日、暴力をふるってしまい、しばらく罰として、食事抜きにしたのだが、今日はどうしたものかと、思案している。

 こういう時、もし俺が女だったら間違いなく聖女様に相談するところなのだが、あいにく男に生まれてしまったので、おいそれと相談できずにいる。

 逡巡していると、アレクサンダー殿下に見つかってしまい、妻のことを相談するも

 「ママ友とジェニファーに謝ってくれたらいいですよ。たぶん。それで解決する問題だと思います。」

 それを素直に聞いてくれる嫁でないことは、よくわかっている。

 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 その頃、アレクサンダーから、ハイビスカス公爵がママ友会に興味があると聞かされたジェニファーは、あの奥方が素直に謝ってくるとは、到底思っていない。

 でも本当に、謝罪してきたら受け入れるつもりで入る。

 あのタイプは、世渡り下手の典型だから、絶対に謝罪してくるようなタマではない。謝罪しても、どうせ本心からのものではない。どうせ旦那に泣きつかれて、渋々と言った態だろう。

 それでも謝罪は謝罪だから、受け取るつもりでいる。

 でも、それからいつになっても、謝罪が行われないまま時だけが無情に過ぎていく。そして、次のママ友会のお泊り会が目前になったころ、ハイビスカス公爵とジャクリーンが離婚したという一報が入ってくる。

 ああ、やっぱり謝るのがイヤで……、離婚されてしまったのか。

 それはそれで仕方がないような。ジェニファーの責任ではないのだから、放っておくのが筋だよね?

 ジャクリーンの実家は、ハイビスカス家の隣の家だから、隣へ引っ越しただけ?

 そういえば、ジャクリーンの兄嫁に当たる人は、ママ友さんだっけ?前のお泊り会で、ジェニファーのお隣の席だったような気がする。あれは、爵位の高い人からの席順で間違いなかったから、やっぱり公爵夫人だったのかもしれない。

 ということは、アレクサンダーの隣にいた柔和な人がジャクリーン様のお兄様ということになるわね。

 ジェニファーは、ウチの兄上も他人様から見たら、ああいう風に見えるものかと思う。

 食後の絨毯ランデブーのときには、3番目に乗りたいという意思表示をされた人でもあるから、よく覚えている。

 その後の人たちは、殺到しちゃったから、正直覚えていないけど、3人目までは、みんな様子見していたから、危険か安全かわからないものに、大事な奥様を乗せたいとは思わなかったみたい。

 でも、伯爵、侯爵、公爵様が順番に手を挙げられて、乗り込むところをみたら、奥様の手前、どうしても挙手したくなる。

 そういう意味でも、3番目の挙手には、意味がある。

 そっか。離縁されてしまわれたか。でも、お嬢様の親権は、どうなってしまわれたのかしらね。

 ジェニファーの心配をよそに、ジャクリーンの娘は、ハイビスカス家で大切に育てられていることを後で聞き、安堵する。
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