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第1章

39.ママ友会4

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 ハイビスカス公爵は、イライラしながら帰宅した。

 そして、ジャクリーンを見つけるなり、寝室のドアを閉める。

 中からは、ジャクリーンの悲鳴とバシッバシッという音しか聞こえない。

 誰が見ても愛し合っているようには、思えない音がしている。。

 出てきた公爵は、「誰も寝室には近づくな。ジャクリーンは、当分の間、食事を与えるな。」とだけ言い、その後は、愛人の部屋を順番に回り、翌朝も力なく出仕した。

 ハイビスカス公爵は、昨日、王城へ出仕して、大恥をかかされたと思っている。それも妻、ジャクリーンによって、昨日、王城へ行くと、聖女様のママ友会の話題でもちきりになっている。

 聖女様である王太子妃殿下が、産後の不安と情報交換のために、ママ友会という集まりを開いていることは知っていたのだが、なんと!自分の妻が参加者だけでなく聖女様にまで、度重なる嫌がらせをしていたことが発覚したのだ。

 それも自分の方が上位者であるかのような顔をしていて、事もあろうに聖女様にだ。バカか?ジャクリーンは、もう終わっている。

 いくらジャクリーンが世間知らずでも、ジャガード国がどうなったかぐらいのこと、知っていると思っていたのだが……。ここまでのバカは救いようがない。害悪そのもので、ハイビスカスの邪魔でしかなかった。

 それにその会に参加しなかったら、将来の要職の道は閉ざされたもの同然だと聞く。いつもなら、細君がどんなに賢くても、政と奥は、異なるもので分離して考えるのが普通ではある。

 それがそうとも言い切れない状況になる。

 なぜなら、聖女様は王太子妃殿下で、先週のママ友会には、王太子殿下もご臨席賜ったということから、その噂に信ぴょう性が出てくる。

 当然、そこでは政治の話も出てくるだろう。

 女だけの集まりであれば、大した話もないとタカをくくっていたが、王太子殿下まで出てこられるとなると、その会に何が何でも出席したい。

 ところが、その会に出席するためには、ひとつだけ条件がある。

 「ママ友会」だからママでなければならない。だから愛人でも、ママなら入れるだろうが、あいにくハイビスカス家にママと呼べる愛人はいない。かろうじて妻が娘を産んでいるので、ママには違いないが、娘しか生んでいない分際で、メンバーばかりか聖女様に説教をたれたなど、あってはならないことをしたばかりか……、自分は愛されているアピールまでしてやがった。

 愛されているなら、愛人なんて面倒なもの作らない。

 自分が誰からも愛されていないことなど、自分が一番よくわかっているのでは、と俺は思い違いをしていただけ。

 あいつ、どうやって始末してやろうか?

 それにしても、ジャクリーンの実家の兄嫁さんは、うまいこと聖女様に取り入って、次の乳母候補に挙がっているらしいではないか?

 それにセックスレスだと噂があったが、家を出るとき、たまたま見かけたら、もう新婚か!?と思えるほどのラブラブぶりで、見ているこっちが赤面してしまうぐらいだった。

 兄嫁さんのような可愛げが少しでもジャクリーンにあったら、でも、あの性格は手遅れ感満載でどうしようもないと思う。

 それに王子とご学友の線も消えたな。あと、何人、御兄弟が増えられるかわからないが、ママ友会が聖女様の周りをガッチリ固めているから、新参者が入るスキはないだろう。

 それにしてもジャクリーンの奴、腹が立つ。ママ友会に入ってくれさえすれば、俺がこんな思いを抱くこともなかったというのに、さて、仕事も終わったことだから、今夜はどの愛人を抱くことにしようか?

 愛人は、妻と違って、焼きもちを焼かないから関係が楽だ。

 そこへ廊下を歩きながら話声が聞こえてくる。

 「いやあ、聖女様の会、よかったよ。あれなら毎月でも参加したいぐらいだ。妻が美しく、可愛く、見えて。」

 俺は、足をとめて、思わず聞き入ってしまう。今の声は確かアドバス伯爵の声ではなかったか?

 それにもう一人は子爵の……?名前は忘れたが……?

 あいつらの奥方も聖女様に取り入っていたのか?
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