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第1章

36.ママ友会3

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 何度となく肌を重ねて、ジェニファーとアレクサンダーは話し合うことに。

 王家が貴族の夫婦生活にどこまで口を挟めるかについて、有識者を交えて、意見を聞き、その結果、手助けぐらいなら問題はないだろうという結論に至る。

 手助けって?

 具体的には、誰もが口を噤む。

 それでママ友会主催の行事として、ぜひ、パートナーもご一緒にという一文を入れるにとどまったのだが、聖女様のパートナーは、アレクサンダー王太子殿下であるということは周知の事実なわけで、皆、出世のためにほとんどのママ友のパートナーは出席せざるを得ない状態。

 誰だって、上司の引きはありがたい。わざわざそれを手放すほどの愚か者はいないと見た。

 決行日は、休前日、その日は泊りがけのつもりでいらしてください。と案内文に添える。

 会場は王城の別宮で催されることにし、この別宮は外国からの賓客をもてなすところで、宿泊施設も完備している。

 旅程は、2泊3日を予定しているが、途中参加も中途不参加も両方認めている。

 参加資格は、ママ友会に所属していること、それ以外は何もない。身分の隔たりもなく結婚以外で自分の夫や家門を出世させる下剋上でもある。

 だから全員が参加することになった。

 日が傾きはじめると、別宮の馬車駐めには、ぞくぞくとそれぞれの家紋を掲げた立派な馬車が到着していく。

 まずは、晩餐会からのスタートではあるが、別宮に入ると、それぞれの部屋に案内される。

 部屋には、簡単な応接セットとクローゼット、ドレッサー、バストイレ付き、それに奥には、キングサイズのベッドが一つだけ置かれてある簡素な造りとなっている。

 この日のために別宮をリフォームしていたが、間に合ってよかった。

 そこで、荷物を解き、それぞれの家の使用人は、帰ってもらうことにする。

 そして晩餐会の席順は、最奥に王太子ご夫妻が向かい合ってお座りになり、その横は公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵という順番で座っていく。

 食事タイムが終わると、王太子妃殿下は真っ先に立ち上がられ、

 「夜空を見ながら、お散歩でもしてくださいませ。要領は馬と同じ扱いをすれば、大丈夫ですわ。さて、どなたから行かれますか?」

 出席者は、ママ友をはじめ、きょとんとしているが、ここで真っ先に手を挙げたのが、近衛騎士団長のジェラード・マジソン伯爵。

 セシールの前に跪き、ドレスの裾にキスをしてから、エスコートする。

 そこに二人乗り用の空飛ぶ絨毯を浮かばせ、二人は颯爽と飛び立っていく。

 それをキョトンとして見送るも、殿方もママ友もざわめきながらも興味があるような顔をしている。

 「次は、どのカップルが挑戦なさいますか?馬の操り方と同じです。ごゆっくり夜空を堪能してくださいませ。」

 するとエリザベスのパートナー、ロッテンマイヤー侯爵が手を挙げる。

 そして、エリザベスの腰を抱きながら、右手の甲と手のひらの両方にキスを落とし、魔法の絨毯に乗り込んでいく。

 他のママ友は、その様子にうっとりとして眺め、次は自分が……と思っていると、

 ジェニファーはそのタイミングで、次々と絨毯を空中クローゼットから取り出し、浮かばせていく。

 絨毯も心得たかのように、端を階段状にして、上りやすくしている。

 殿方は、男の、夫の威信をかけ、自らのパートナーであるママ友をエスコートして、次々と絨毯に挑戦していく。

 ジェニファーが馬の操り方と同じだと言ったことが利いているのだろう。

 ここで怖気づいては、男が廃るし、決して出世の道は途絶えてしまうと考えてのことだろう。

 中には、今夜で国の要職をもらう!と勢い込んできた殿方もいる。我先にと、ママ友をお姫様抱っこしたまま、絨毯に乗り込む猛者もいる。

 そして、最後にジェニファーとアレクサンダーも乗り込み、久しぶりの空の旅を楽しむ。
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