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第1章

28.里帰り4 ざまあ

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 ジャガード国王のもとに、ブレンディ侯爵夫妻が脱獄したとの知らせが入ったのは、もう朝日がさんさんと降り注いでからのことだった。

 牢番が朝食を届けに行ったときに、やっと気づき、急ぎ、他の牢屋に所縁のある者を確認しに行ったところ、全員が脱獄した後のことだったのだ。

 脱獄というよりは、転移で送っただけなのだけど、やっぱり脱獄ということになるのかしらね。

 国王は、ブレンディ商会に様子を見に行かせるも、そこには広大な空き地が広がっているだけで、建物ごとなくなっている。ほかに貴族街を確認してみると、ブレンディ家もしくは聖女様と仲が良かった家すべてが、建物ごと消えていることに気づく。

 昨日、浮かんでいた光の五芒星は、黒の五芒星と色が変わっていて、その黒い五芒星からポツリ、ポツリと雨が降り出してきた。

 それは、黒い雨だった。不思議なことにブレンディ家やその他の貴族の屋敷跡には降らず、王宮とその周辺にだけ、降った。白いシャツを着ていたはずなのに、王宮に戻ってみたら白が黒に変色している。

 黒い雨は3日間降り続き、次に降ったのが砂交じりの雨、これも3日間降り続き、その次に降ってきたものは小石、その次はこぶし大の石、その次はカボチャぐらいの大きさの石、最後は岩で、その次は大岩が降る頃には、王都の街はがれきの山と化し、王宮も跡形もなく破壊されていた。

 人っこひとりいない死んだ街になってしまったのだ。

 ジェニファーが直接、手出ししたわけではない神様のご意向として、ひとつの街が滅んだ。

 黒い雨は、最初、王都にだけ降っていたものが、次第に国全体に広がり、ひとつの国が丸ごと消滅したのだ。

 残された人々は、聖女領地へ移民された者だけ。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 「国王だ、なんだといっても、神様の前では無力なもの。それを自分に力があると過信して、横暴なふるまいをすれば、最後は必ず罰が当たる。

 だいたい、不動産と呼べるものは、神様の持ち物である。それを売買して、税金を払うなど、神様から借り物をしているという意識がない。すべての土地は神様が所有しているもの。

 国王は、その土地の権利を主張し、戦争をして戦利品のように扱っていても、もとをただせば、それは神様の持ち物を横取りしたことに気づかないで、勘違いしているだけのこと。

 過ぎた強欲は、神様に返還されるべきもの。神様に税金を支払うことなどは、求められていない。それはおろかな人間が勝手に作り出したルールに過ぎない。

 そして時折、神様はそんな人間に対して、天罰を下される。それが天災と試練。

 神様は、真面目にコツコツ努力している人間が大好き。もっと、神様に好かれるように、どんどん精進してくださいね。」

 ジェニファー聖女は、布教活動の一環として、世界各地を説法して回っている。

 子供は、まだいない。

 セシールは、無事、元気な女の子を出産し、今はマジソン家で専業主婦をしている。

 ジャガード国を引き合いに出しながら、説法するので、聴衆は真剣そのもの。もう、二度とジャガード国のような過ちはしないと心に誓いながら、今日も真面目に精進している。

 そんな信者さんのために、ジェファニーは、下手な歌声を披露する。

 「だーれもいないと思っていても、どこかでどこかで、エンジェルが~♪」

 すると無数のエンジェルが、歌声と共に現れ、信者様の頭上でくるくる回り出す。そして、背中に背負っているラッパを吹くと、正露丸のような曲。ぱっぱらぱっぱら、ぱっぱらぱっぱら、ぱーぱぱーぱ、ぱん!光の粒が飛び出して、祝福を与える。
 
 その儀式が済むと皆さん、穏やかな顔つきになって、教会を後にされ、帰って行かれる。信じる者は救われる。

 これがヤーパン国で教えてもらった大勢に魔法をかけるときの暗号。これがあるおかげで、説法も、祝福も楽になったこと間違いなし。
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