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第1章

25.里帰り1 ざまあ

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 いよいよ里帰りのために、ジャガード国に入るのだが、司祭様に言われるには、当初、巡礼の予定地ではなかったが、ジャガード国の国王陛下より、是非にと思し召しがあったので、急遽立ち寄ることになったらしい。

 ジェニファーは、しょっちゅう実家に帰っているので、今更、里帰りもなんだという気がしていたけど、司祭様の心遣いだと思っていたから何も疑問を挟む余地もなく、でも……国王陛下がなぜ?という気がしてきた。

 お国入りは、空中クローゼットを遣わず、あえて、空飛ぶ絨毯で馬車ごと飛ばし、華々しく御国入りした。そして、アーノルドに見せつけるかのようにブレンディ商会の前で、絨毯を下ろし、中へ乗り込んでいく。

 ジャガード国の上空に現れた光る五芒星……その正体は、もちろんゲートなわけで、幻影魔法で作り出したもの。

 ゲートは、幻影魔法で要するにここから出ますということが分かればいいだけのものだから、とびきり神秘的な演出をする。

 その中から、突如、現れ出た空飛ぶ絨毯、歌舞音曲と共に光の粒をまき散らしながらの演出に、ジャガード国民は、度肝を抜かれる。

 王都を回りながら、最終目的地であるブレンディ商会前に下り立つ。

 通りにいた人々は、魔法の絨毯に心を奪われ、売り物なのかと聞く?

 売ってもいいけど、高いよ?

 それにメンテナンスもいるからね、年がら年中、馬車代わりにこき使っていたら、あっという間に普通の絨毯になっちゃうわよ。

 もとはと言えば、普通の絨毯なんだもの。

 売るか売らないかは、司祭様のお気持ちひとつってところかしらね。

 

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 その夜、聖女様御出現歓迎晩さん会が、なぜかジャガード国の王宮で催された。

 「御出現」晩餐会は、すでにバラード国で開かれているにもかかわらず、なぜかジャガード国で開かれるなど、違和感を覚えざるを得ない。

 それはジェニファーがジャガード国出身者だからという意味なのだろうけど、別に出身者というだけで、この国に恩恵を与えるつもりなど毛頭ない。

 憎きスカーレットの生家は、王族の親戚の公爵家だというのに、ジェニファーの婚約者を面白半分で奪っておきながら、一度の謝罪もなく当然のような顔をしておきながら、さらにブレンディ家の領地での自分たちの婚約発表を行うなど、常軌を逸した希望を出したのだ。それも公爵家の意向をかさに着て。

 実際、アーノルドとの結婚式の場に乗り込んできたのも事実で、兄がアレクサンダーを紹介してくれなかったら、ジェニファーは道化をさせられるところだったというのに、スカーレットは、ジェニファーガみじめに落ち込んでいるところをみたいがためにアーノルドを奪ったのだと思っている。

 そんな王家のために誰が恩恵を与えるなど、よくそんな自分たちに都合がいい考えができるものだと呆れてモノが言えない。

 今まで、国が存続しているだけで、ありがたいと思いなさい。

 それを「御出現」などと銘を打つことなど、大国バラード国に喧嘩を売っているということがわからないのだろうか?

 それで、その晩さん会に司祭様以下、教会関係者は誰一人として、出席しない意向を固める。

 だって、この国へは、あくまでも里帰りのためにだけ、帰ったのですもの。そんなパーティに出席を強要されるいわれはどこにもない。

 表向きは、里帰りだけど、そんなものいつだって好きな時に帰れるのだから、ジェニファーは、実家では、お茶だけを呑んで、セシールを拾って、すぐに五芒星を出し、さっさとバラード国へ帰ることにする。

 「御出現」などという無礼なパーティさえ開かなければ、しばらく実家で羽根を伸ばす?でも、いつでも本当にすぐ2歩で帰れるのだから抗議の意味合いを含めて帰った。

 焦ったジャガード国は、バラード正教会に対し、お伺いを立てるも、

 「聖女様が『御出現』されたのは、あくまでもバラード国でのことなので、ジャガード国での公爵家からされた仕打ちに対して、まだ許していないとの意思表示をお示しになられただけのこと、とおっしゃられております。」

 ジャガードの使者は、何のことかさっぱりわからず、「公爵家とはどこの家のことかわからないので、持ち帰って調べてみます。」と返答したという。

 数日後、カスバートソン家は、爵位と領地を没収され、平民落ちとなったそうだが、それを知らせても聖女様から、パーティの出席に色よい返事はもらえなかったという。
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