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第1章

22.巡礼の旅8

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 ジェニファーは、ヤーパン国で大量のシルク織物、シルク生地を買い付ける。ドレスを何着でも仕立てられるぐらいに、男性用のタキシードも、これぐらいあれば、向こう100年間は、不作になっても、在庫で賄えるほどに。

 さらにヤーパン国は金山、銀山が豊富にあり、その埋蔵量も計り知れないことから、金糸銀糸も追加で購入する。

 布教活動をしているというより、お買い物三昧をしているみたいに見える。それで司祭様からお小言を言われ、仕方なく今日は、真面目?にやります!

 それで今日は、診療所を開設して、無料あるいは、格安で治療している。

 元首から不要な建物を譲り受けたのに、柱も壁も金ぴかで、まるで金閣寺か金堂のよう。どこが不要なのかと尋ねたら、

 「まぶしすぎて、落ち着かない。」と言われてしまった。

 確かに治療には向かないかも?でも、できればこれを実家へ持っていき、商品のディスプレイ用にすれば、お客様がたくさん来て、よく売れるだろうな?というような商売絡みのことを考えてしまう。

 それというのも、商会の使用人から、「前にセシールとともに、お嬢様が里帰りされてからというもの、旦那様と奥様がいつもイチャイチャしていらして、見ているこっちが気恥ずかしいぐらいなのです。もっと商売に身を入れてもらわなくては、困ります。」

 苦情があったので、かわりにジェニファーガ頑張っているというわけ。

 あれは、司祭様が母上を美しいだのなんのって、褒めそやして、父上がそれに嫉妬されたことがあったなぁと思い出す。

 あんなのただの社交辞令に決まっているというのに、母上も母上だ。でも、年齢の割に、確かに綺麗だとは思う。

 でも、そんなこと父上は、かねてから言っていたのでは?と思うし、今更、司祭様から言われたところで、聞きなれているわ。と流せなかったことが不思議でならない。

 その日の治療が終わり、これをもらえないだろうか?と打診をしてみると、元首様は快諾してくださり、これをディスプレイ用として転用することにする。

 夕食前に、取り急ぎ転移して、店のどこへ配置しようかとあれこれ思案する。

 正面に配置すれば、成金趣味丸出しになるし、目立たない奥にすれば、ディスプレイの勝ちは下がる。

 その時、後ろの方から、

 「ダーリン。」

 「なんだい?ハニー。」

 まさか!?とジェニファーが振り返ってみると、父上と母上が呼び合って?確かにイチャイチャしている。

 「げ!何しているのよ!ここは、お店の中よ!ほかにお客様もいらっしゃるというのに!いい年して恥ずかしくないの?」

 「ジェニファー、帰っていたのか?いや、ちょっとふざけて呼んでいただけだよ。そんな怒ることでもないよ。」

 使用人から苦情が来ている。と言おうとしたが、それでは効果がないと思い、

 「お客様から苦情が来ているのよ、お客を蔑ろにして、いつも主人夫婦がイチャイチャしているって。」

 「……。」

 思い当たる節があるのか、二人とも黙ってしまう。

 「そんなことしているのなら、お父様の……を一生使い物にならないようにしてあげるわよ?聖女様の魔法をナメたら承知しないからね!」

 「それだけは、どうかご勘弁を……。」

 父上も母上も、必死に懇願してくるので、思わず吹き出しそうになるのを必死でこらえる。

 そうだ!今は、お説教している場合ではない。いや、場合か?ディスプレイ用のものなど、その気になればいつでも設置できるのだから、今はとにかくこの夫婦にお灸をすえることの方が先決。

 でも、父上も母上も、なんとか話題を逸らそうと懸命になる。

 ジェニファーがにらみつけていると、気まずくなったのか、アレクサンダーに話題を振る。

 「そういえば、まだ懐妊しないのか?孫の顔を早く見たいものだ。」

 「今は 巡礼中で、それどころではないのよ。」

 「いや。少し聞いただけだ。悪かった。聖女様のおかげで儲けさせてもらっているのだからな。本当に、ジェニファーには感謝しているよ。」

 「それで、頼んでいたシルクは手に入ったかい?」

 「別に頼まれていないけど?」

 「え!ヤーパン国の特産品は、シルクだって言ったでしょう?買ってこなかったのかい?」

 「まあまあ、そう言うな。ジェニファーだって、教会の手前や信者様の手前もあり、なかなか自由時間が取れないのだろう?」

 時刻は、間もなく7時ごろ、夕食の時間が迫ってきているので、この夫婦のバカさ加減に呆れつつも、時間がないから、さっさとすましちゃえって、ことで。

 「店にぴったりのディスプレイ用の建物をもらってきたから、どこに置こうか悩んでいるのよ。」

 本題に入る。

 両親に実物を見せると、目を丸くされ、驚いている。

 「こんな高価なものをもらったのか?」

 それから「店の入り口に。」と父上が言えば、母上が「成金趣味みたい。」と、もはや今度は夫婦喧嘩に発展していく。

 結局、使用人の意見を取り入れて、店の西側の壁に設置することにして、中に、大量のシルクの束、金糸銀糸を飾っていき、ヤーパン国へ帰ろうとする。

 ふと、振り向くとまだ、両親は、言い争いをしている。

 「成金趣味とは、なんだ?誰のおかげで、楽な暮らしをさせてやっていると思っているのだ!」

 「わたくしが死ぬ思いで産んだジェニファーのおかげですわ!」

 「なんだとぉ、もういっぺん行ってみろ!」

 先ほどまで、あんなにオチャイチャしていた夫婦と同じ夫婦化と、目を疑いたくなる。

 夫婦って、本当、わからない。

 アレクサンダーと手を繋ぎ、ヤーパン国へ帰る。
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