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第1章
17.巡礼の旅4
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宴の話題は、もっぱら聖女様御一行が空を飛んできたことに限定される。
司祭様は、自慢げに
「いやあ、眼下に広がる景色の美しいことと言えば、この上もなかったことで、初めて、空を飛びました。」
ジェニファーは、スープを飲みながら、お前の力で飛んでいないだろう。と心の中で悪態をついている。
ヒューズ国の陛下は実にうらやまし気に
「金はいくらでも払うから一度儂にも、その体験をさせてほしい。」
「それは出来かねますな。聖女様の秘中の中でも特に秘中魔法でございますれば、そればかりは何卒、ご勘弁を。」
ははーん。これは、司祭様、お布施のお値段を吊り上げる作戦に出たことがわかる。
「それに一度その魔法を使われると、聖女様は、そうそう再び、続けてその魔法がお使いになられぬ。それは、それだけ聖女様の体力を消耗することにつながるからでございます。どうか、此度のことはご容赦してくださいませ。」
司祭様は、陛下の好奇心を煽っている。
「うぐぐ……。」
陛下は、それでもまだ諦めきれないご様子。
ジェニファーの近くの椅子に座りなおし、なおも交渉しようとしている。
ジェニファーは、このチャンスを見逃さない。空中から、聖女キーホルダーを出し、
「実は、これはわたくしが心を込めて、ご祈祷したものなのです。少々、在庫があり、それを買い取ってくださるのなら、魚心あれば水心とも申しますし……。」
「ほう。いくらだ?」
「一つ銀貨1枚です。それが1000個ほどありまして……。」
「わかった。すべて貰おう。」
陛下は、側近に命じて、代金、金貨100枚に上乗せして、金貨1000枚も支払ってくださいました。
ジェニファーはもう、ほくほくで嬉しくてたまらない。
「それで?いつなら水心はできそうかな?」
今すぐにでも、と言いかけやめる。だって、司祭様がウソを吐いたことになってしまわれるから。
「体調がいいときでないと、空には舞いあがれません。もう、しばらくお待ちくださいませ。」
「うむ。いい返事を期待している。」
ランチが終わり、王都観光に出かけることにしたのだ。もちろん護衛は、ジェラード、セシールも同行するから。
ランチの宴は思いがけなく豪華料理だったので、観光に司祭様も付いてこられることになる。けっこうな大所帯での移動に、うんざりしつつも、これも布教活動の一環と割り切ることにしたのである。
ヒューズ国は、毛織物で有名な国。行く先々で、絨毯の屋台がある。頂いた金貨で毛織物を大量に仕入れ、ジャガード国で、売りさばいてやろうか?
試しに金貨1枚で絨毯を買ってみて、それに浮遊魔法と風魔法を二重にかけると、絨毯がふわりと舞い上がる。
信者様や露天商にいた買い物客は、それを見て「空飛ぶ絨毯だ!」と歓声を上げる。
ジェニファーの頭上で、ジェニファーは右腕を高く揚げ、グルグルと縁を描くように動かすと、絨毯も大きく回っている。
司祭様は思わず、「金貨1枚で空飛ぶ絨毯に乗せてあげるよ!」
大人は無理だろうが、子供のように軽い体重であれば、乗せてあげられるだろうけど、子供から料金を取ることは憚られる。
そういう意味で、司祭様は金の亡者か?と疑いたくなる。
そこへ小さな女の子が来て、ジェニファーに一輪の花を差し出してくる。
「いいわよ。」
ジェニファーは、絨毯を地べたに下ろし、小さな女の子を乗せてあげる。すると、その女の子の兄弟だろうか、お兄ちゃんらしき男の子が自分も、という顔をしている。
「お兄ちゃんがいたのね。どうぞ。」
兄妹二人を乗せた絨毯は、空高く舞い上がる。この時、ジェニファーは、遠目の魔法で、あたりに障害物がないかを確かめながら、地上から操作をしている。
信者様も、買い物客も、ジェニファー御一行様も、すべての人が絨毯の行方を見守るため、上を向いている。
一通り、回って、絨毯が地上に帰ってきたときには、金貨1枚を手にした人だかりが行列を生していた。
デブのオジサンがやけに目立つ。デブは、無理だって……、落ちても知らないわよ。
その夜のアレクサンダーからのリクエストが、空飛ぶ絨毯の上で、と言われたことは間違いないこと。
司祭様は、自慢げに
「いやあ、眼下に広がる景色の美しいことと言えば、この上もなかったことで、初めて、空を飛びました。」
ジェニファーは、スープを飲みながら、お前の力で飛んでいないだろう。と心の中で悪態をついている。
ヒューズ国の陛下は実にうらやまし気に
「金はいくらでも払うから一度儂にも、その体験をさせてほしい。」
「それは出来かねますな。聖女様の秘中の中でも特に秘中魔法でございますれば、そればかりは何卒、ご勘弁を。」
ははーん。これは、司祭様、お布施のお値段を吊り上げる作戦に出たことがわかる。
「それに一度その魔法を使われると、聖女様は、そうそう再び、続けてその魔法がお使いになられぬ。それは、それだけ聖女様の体力を消耗することにつながるからでございます。どうか、此度のことはご容赦してくださいませ。」
司祭様は、陛下の好奇心を煽っている。
「うぐぐ……。」
陛下は、それでもまだ諦めきれないご様子。
ジェニファーの近くの椅子に座りなおし、なおも交渉しようとしている。
ジェニファーは、このチャンスを見逃さない。空中から、聖女キーホルダーを出し、
「実は、これはわたくしが心を込めて、ご祈祷したものなのです。少々、在庫があり、それを買い取ってくださるのなら、魚心あれば水心とも申しますし……。」
「ほう。いくらだ?」
「一つ銀貨1枚です。それが1000個ほどありまして……。」
「わかった。すべて貰おう。」
陛下は、側近に命じて、代金、金貨100枚に上乗せして、金貨1000枚も支払ってくださいました。
ジェニファーはもう、ほくほくで嬉しくてたまらない。
「それで?いつなら水心はできそうかな?」
今すぐにでも、と言いかけやめる。だって、司祭様がウソを吐いたことになってしまわれるから。
「体調がいいときでないと、空には舞いあがれません。もう、しばらくお待ちくださいませ。」
「うむ。いい返事を期待している。」
ランチが終わり、王都観光に出かけることにしたのだ。もちろん護衛は、ジェラード、セシールも同行するから。
ランチの宴は思いがけなく豪華料理だったので、観光に司祭様も付いてこられることになる。けっこうな大所帯での移動に、うんざりしつつも、これも布教活動の一環と割り切ることにしたのである。
ヒューズ国は、毛織物で有名な国。行く先々で、絨毯の屋台がある。頂いた金貨で毛織物を大量に仕入れ、ジャガード国で、売りさばいてやろうか?
試しに金貨1枚で絨毯を買ってみて、それに浮遊魔法と風魔法を二重にかけると、絨毯がふわりと舞い上がる。
信者様や露天商にいた買い物客は、それを見て「空飛ぶ絨毯だ!」と歓声を上げる。
ジェニファーの頭上で、ジェニファーは右腕を高く揚げ、グルグルと縁を描くように動かすと、絨毯も大きく回っている。
司祭様は思わず、「金貨1枚で空飛ぶ絨毯に乗せてあげるよ!」
大人は無理だろうが、子供のように軽い体重であれば、乗せてあげられるだろうけど、子供から料金を取ることは憚られる。
そういう意味で、司祭様は金の亡者か?と疑いたくなる。
そこへ小さな女の子が来て、ジェニファーに一輪の花を差し出してくる。
「いいわよ。」
ジェニファーは、絨毯を地べたに下ろし、小さな女の子を乗せてあげる。すると、その女の子の兄弟だろうか、お兄ちゃんらしき男の子が自分も、という顔をしている。
「お兄ちゃんがいたのね。どうぞ。」
兄妹二人を乗せた絨毯は、空高く舞い上がる。この時、ジェニファーは、遠目の魔法で、あたりに障害物がないかを確かめながら、地上から操作をしている。
信者様も、買い物客も、ジェニファー御一行様も、すべての人が絨毯の行方を見守るため、上を向いている。
一通り、回って、絨毯が地上に帰ってきたときには、金貨1枚を手にした人だかりが行列を生していた。
デブのオジサンがやけに目立つ。デブは、無理だって……、落ちても知らないわよ。
その夜のアレクサンダーからのリクエストが、空飛ぶ絨毯の上で、と言われたことは間違いないこと。
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