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第1章

11.初夜1

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 ジェニファーは、嫁いできて、3日目の夜、ついに初夜を迎えることになったのだ。

 本当は、もう少し遅くてもいいと辛抱できるとアレクサンダーは、思っていたようだが、今日の誘拐騒ぎで、そうもいかなくなってしまったのだ。

 王太子妃の「はじめて」を悪党なんかに奪われたくない。

 ジェニファーも同じ気持ちでいたから、という理由。

 だけど、ジェニファーは、いざとなれば、セシールを連れて飛ぶ準備はしていたのだけど、やはり、一度は、アレクサンダー様に抱かれたいというのも本音。

 結婚したら、皆が経験していることなのに、3日目なんて、遅いぐらいのこと。それに昨夜、母から閨の心得を聞かされたばかりだから、今、抱かれなくて、いつ抱かれるの?という気持ちがある。

 母からの教えは、どんなに恥ずかしくても、いやがってはいけません。すべてをアレクサンダー様にお任せするのです。

 今日は、夕食を摂らず、念入りにお風呂に入り磨かれている。

 夫婦の寝室には、セシールが香油を焚いてくれて、いいニオイがするのだけど、同時に艶めかしいような色気を感じさせてくれるニオイがする。

 たぶん気のせいだと思うようにする。だって、今から始まることに心臓がドキドキしすぎて、爆発しそうになるのだもの。

 緊張しすぎたために喉がカラカラになり、お茶を飲みたいけど行為の最中に尿意を催しでもしたら困るから、我慢する。

 ジェニファーがスケスケのネグリジェで、ベッドに腰掛け待っていると扉がガチャリと開く音がする。

 いよいよだと思い、ジェニファーは目を閉じる。

 でも、アレクサンダーが近寄ってくる気配はしない。

 「ジェニファー、少しここへ来て話さないか?」

 なんだ期待していたかと思われた?なんか、恥ずかしい。アレクサンダーの方を見ると何やら飲んでいる。

 よっしゃ、あれを呑もう。もう緊張で喉がカラカラだもの。我慢できない。

 ジェニファーは、アレクサンダーの向かいの席ではなく、隣の席を詰めてもらう形で、無理やりそこに座る。

 だって、向かい側に座れば、スケスケネグリジェだから、丸見えになっちゃうもの。

 でも、真横に座ったら、さらにアレクサンダーは目を泳がせ、顔を赤らめていることがわかる。

 どうして?

 真横になった分だけ、距離が近くなり、余計、ジェニファーの全裸が……いや素肌がモロ見えになっていることに、ジェニファーは気づいていない。

 そして、たださえ一人がけ?の狭い椅子にお尻から突っ込んでこられ、もう肌と肌が密着している状態だというのに、ジェニファーは、そのことにさえ気づいていないのだ。

 「どこまで煽れば気が済むんだ!」

 突如、怒鳴られ、ジェニファーはポカンとしている。

 「っもう!これから二人の将来のことについて、大事な話をしようとしているのに、これでは我慢できなくなるではないか!」

 「大事な話って、何?私にも殿下と同じものを飲ませて下さい。」

 言うや否やグラスに勝手に注ぎ、飲み干す。それは、アルコールで40度ぐらいある強めの酒。

 いくら昼間屋台で買い食いしたとはいえ、夜のとばりがすっかり落ち切った今は深夜、空きっ腹に呷るように飲んだ酒は胃へ直行し、粘膜から一気に吸収される。

 「ふー。なんだか、いい気持ち。ふー。ふわふわしている。」

 「ダメだ。もっと大切な二人の話をしようと思っていたのに……、君はもう酔っぱらってしまったのか?」

 アレクサンダーは深いため息を吐き、ジェニファーをお姫様抱っこをして、ベッドまで運び、おでこにチュっとキスを落とし、部屋から出て行こうとする。

 「今日は、ゆっくりおやすみ。また、明日にしよう。」

 寝かせたはずのジェニファーがムックリ起き上がり、

 「アレクサンダー、イヤ行かないで。今すぐ抱いて。」

 ジェニファーは、はしたないと思いつつも、とてもヴァージンな乙女が口にはできないようなことを、つい口走ってしまう。
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