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第1章

10.人さらい2 ざまあ

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 アレクサンダーは、ジェニファーと侍女だけで散策にいかせたことを後悔している。

 「俺も一緒に行けばよかった。そすすれば、誘拐されることなどなかったであろう。」

 とにかく執務を途中にして、街へ降りる支度をする。

 王都にいるすべての騎士団1個隊に連絡が行き、聖女様探索に全力を注ぐように命令が下る。

 露天商の権利を持つ地名主を割り出し、あの黒いテントの持ち主を探る。

 露天商の権利は、商業ギルドとは、別に各町の有力者、つまるところ町の地回りが担当していて、商業ギルドの管内ではない。

 今の事件が片付いたら、地周りの権利を取り上げ、商業ギルドへ1本化しようと思う。

 それで少しでも治安が良くなるようにと提案するつもりでいる。

 地回りも人さらいの片棒を担がされたとあっては、面目丸つぶれで、騎士団のほかに、地回りの親分も、独自の聖女様探索網を繰り広げることになったのだ。

 「今回の件で、儂らの縄張りが荒らされ、王国から目を付けられるようになったのは、すべてブラックテントのせいだ。奴らを騎士団より早く見つけ出し、血祭りにあげようぜ!」

 「おー!」



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 さかのぼること、露天商街で買い食いをしながら、お茶を飲めるところを探している二人、突如、腕を引っ張られ、ブラックテントに引きずれこまれた直後、ジェニファーは何が何やら、サッパリわかっていない。

 中には、二人の男がいた。

 セシールは、いち早く悲鳴を上げたものの、その後は恐怖で声も出ない状態に陥ってしまう。
 
 両手を後ろ手に縛られ、船に乗せられる。

 「ほぅ。これは 二人とも、とびきりの上玉じゃねえか!高く売れるぞ。その前に例の場所まで連れて行き、たっぷり味見と洒落込もうぜ。お前は、どっちの娘がいい?」

 「俺はどっちも、欲しいな。でも最初にいただくのなら、その綺麗な方がいい。そんな綺麗な娘、滅多にお目にかからないからな。」

 「それなら、後でじゃんけんして、誰が最初に綺麗な姉ちゃんを抱くか決めようぜ。」

 「おう、いいとも。」

 悪党二人組は、船をこぎながら、妙に上機嫌で鼻歌まで歌っている。

 とても、聖女様誘拐犯だとも思えない程、のんきな鼻歌を

 「まあ!船まで乗せていただけるなんて!ついでを言えば、喉がカラカラで、どこかでお茶を頂けないかしら?」

 この一言で、悪党どもの鼻歌は、ピタリと止む。

 「この綺麗な姉ちゃん、頭がおかしいのかもしれないぜ?」

 「俺も今、そう思った。」

 「だったら、手を解いてくださらない?逃げないわ。」

 「本当に?」

 「ええ。両手がふさがっていたら、お茶が飲めないもの。」
 
 「何か飲ませたら、俺たちの言うことは何でも聞くか?」

 「はい。」

 それを信じたかどうか、わからないが二人の悪党は、ジェニファーとセシールの両手を自由にしてくれた。

 「では、まず肩を揉んでくれ。」

 「はい。」

 ジェニファーは悪党Aの後ろから肩を揉み扱く。その姿を見ていた悪党Bもセシールに命じて、肩を揉ませる。

 「おおー!美人に肩を揉んでもらう日が来るとは、思ってもみなかったことだ。なんて、幸せなんだろう。」

 二人は、うっとりとしながら、うつらうつらし始める。

 ジェニファーは、運河の中に手を浸け、得意の水魔法で船の進行方向を来た道に引き換えさせるようにする。

 しばらく船が進むと近衛の船と合流することができ、無事にジェニファーとセシールは救出されました。

 悪党どもは、眠ったまま王城の地下牢に放り込まれ、懺悔の日々を送ることになり、牢番からある提案をされる。

 「地回りの親分がおめえたち二人を血眼になって探している。おめえたちは、今、ここで、地回りに引き渡されるのがいいか、このまま断頭台へ行くのがいいか、どちらかを選べ。」

 どちらにしても、死ぬ運命に変わりがない。地回りの親分に引き渡されたら、半殺しの目に遭い、その後、手足をバラバラにされて、死ぬ運命、さぞかし痛いだろう。

 断頭台は、痛いのは、一瞬のことで、後は、死ぬだけだから、断頭台の方が断然楽に死ねる。

 「ほう。地周りに引き渡されたいか!なかなか殊勝だな。」

 「「いや、違います!断頭台がいいです!」」

 必死に訴えかけるも、牢番に意地悪をされて、地回りに引き渡されることになったことは、言うまでもないこと。
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