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第1章

6.聖女様

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 儀礼的なものだから、とアレクサンダーに説明を受け、手を繋いだまま水晶玉に手をかざす。

 「「??」」

 水晶玉は突如キラキラと輝きだしたかと思うと、まばゆいばかりの黄金の光を放つ。

 ジェニファーはビックリして、思わず目を閉じてしまったほどに眩しい。

 瞼の裏側が正常に戻ったことを確認してから、恐る恐る目を開けると、司祭様はじめ国王陛下までが抱き合って喜んでいらっしゃるご様子に、目をパチクリさせている。

 「アレクサンダーでかした!素晴らしい嫁をジャガードから連れてきたのぉ。今宵は、祝いの宴をしよう。」

 へ?今日は、もうヘトヘトなのに……。

 「父上、せっかくのお気遣いですが、私もジェニファーも疲れております。パーティへの出席はご遠慮したいのですが……。」

 「何を言う。建国以来、はじめての聖女様の出現なのだぞ。何もしないというわけにもいかないだろう?明日の朝には、バルコニーに出て、広く国民に公布を発する。その時に結婚の報告と聖女様のお披露目をしたいと考えておる。」

 さっきから気になっている「聖女様」のキーワード、聞きたいけど、聞くのがコワイような気もする。いったい、誰のことを言っているのかしら。

 「おお、そうじゃ。結婚を機にアレクサンダーを王太子の地位にする。これから、立太子の礼の儀式を執り行うので、必ず出席いたせ。」

 「そんな……父上、あまりにもめちゃくちゃです。」

 「何を言うか?そもそも、お前が6日前に好きな女性がいるからこれから口説き落としてくる。と言って飛び出したのではないか?儂や国家の重鎮は、ここで何日も寝ずの番をしていたのだぞ。それぐらい些末なことで、いちいち苦情を言っていたら、聖女様に愛想を尽かされるぞ。」

 アレクサンダー様は、結婚式用の礼服を脱がされ、新たな礼服に着替えさせられる。ジェニファーは、まだウエディングドレスのままだ。

 いい加減、お風呂かお茶でも欲しいところだが、言えない。

 引き続き、大聖堂の中でグッタリしている。

 ブレンディ家から連れてきた侍女も、どこまですればいいかわからず戸惑っている。

 せめて、お茶ぐらいはいいはずよね?それというのも、ジェニファーが聖女様認定されたことで、聖女様にお茶をお淹れしてもいいかわからず、誰も教えてくれないから、おろおろしている。

 そうこうしている間に、本当にウエディングドレスのコルセットが苦しくなってくる。

 ジェニファーは、よたよたと立ち上がり、出口を探す。

 「どこへ行かれますか?」

 「お花を摘みに。」

 「ああ、それでしたら、こちらでございます。」

 トイレを案内されたけど、トイレに用はない。

 「実は、着替えたいのです。」

 「それでは、お付きの侍女の方を探してまいります。」

 すぐにセシールが来てくれて、助かった。

 「お嬢様、大丈夫でございますか?顔色も優れないご様子で、聖女様になられたとお聞きして、とても心配しておりました。」

 「へ?誰が聖女様ですって?」

 「あら、お嬢様のことですわよ。」

 「あまりにも眩しかったので、目を瞑っておりましたの。アレクサンダー様は立太子の礼のため、どこかに行かれたまま戻ってこられないし、今夜、パーティがあるみたいなんだけど、どうしていいか勝手がわからず……、とにかくこのウエディングドレスを脱ぎたいのよ。手伝ってくれる?」

 「はい。もちろんです。お嬢様、いえ聖女様。」

 馬車の荷物を一部ほどき、ドレスの着替えを手伝ってくれる。

 ついでに、テーブルセットを出し、手際よくお茶を淹れてくれたので、これでやっとひと心地が付いたというもの。

 気が付けば、陽が西に傾き、真っ赤に染まった空を見上げる。

 「もう、こんな時間になって。父上や兄上は、もう王都にお帰りかしらね。」

 「旦那様もブライアン様も、ずいぶん泣いておられましたね。でも、お嬢様が聖女様になられたことをお知りになれば、きっと驚かれるでしょうね。」
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