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第1章
4.ざまあ
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いよいよ結婚式当日の朝になる。
ジェニファーの学園のお友達も着飾り、花嫁控え室に来て、大盛り上がりに盛り上がっている。
「今日のスカーレットがどんな顔をするかが、見ものね。楽しみだわ。」
「あのね。アーノルドについて、よからぬ噂を耳にしていたから、心配していたのよ。」
「へー。どんな?」
「それがね。わたくしのお友達のお友達がアーノルドに妊娠させられたって噂。その子が産んだのは男の子だったらしくて、今も領地に引っ込んだままだそうよ。だから今日来るの。本当は、ものすごく心配していたのだけど、相手がアーノルドでなくて、よかったわ。」
「どこまでクズ男なのかしら。あのクズ、見た目だけはいいから女の子はみんな騙されちゃうのよね?」
ジェニファーとは、政略結婚とでもいうべきか、幼い頃に家が向かい側だったから、なんとなく親同士が決めたもので、でも年頃になると、毎日のように「愛している。」と言ってくれていたのに、あれは口先だけのデタラメだったのかもしれない。
愛って、なんだろう?でも、間違いなく言えることは、ジェニファーはアーノルドを愛していたわけではなく、ただ親同士が決めた相手と結婚しようとしていたことだけは確かなこと。そういう意味では、生まれて初めて、好きになり愛する人と呼べる存在は、もうアレクサンダー様しかいない。
だから、愛する人と今日、結婚式を挙げられて、幸せを実感する。
こう思えたのも、スカーレットのおかげかもしれない。
スカーレットは、ジェニファーの婚約者を奪い勝ち誇った気分でいるだろうけど、果たして、アーノルドのことを本気で愛しているのだろうか?それが疑問だ。愛する人と結婚できる幸せは、たぶんスカーレットには、永遠にやってこないと思う。
そうこうしているうちに、ファンファーレが鳴り響き、婚約披露宴が開幕したことを知らせる合図だ。
「んじゃ、そろそろ行くね。」
ジェニファーの友人や、各国の要人は、そそくさと自分の指定席へ戻る。
父上も兄上も、ニヤニヤしながら最後尾の末席に鎮座する。バラード側の席は、空いたままになって、スカーレットとアーノルドの親族席は、そもそもない。
だから両家は、ステージ前で二人が登場するのを今や遅しと待ち構えている。
再び、ファンファーレが鳴り響き、続いてアナウンスがされる。
「カスバートソン公爵家ご令嬢スカーレット様ご入場、続きまして、オビンソン家ご令息アーノルド様ご入場。」
二人は、真ん中に作られたステージに上がり、本日、ここで婚約したことを皆様に発表いたしますと。挨拶をするが、両家の親族以外からは、嘲笑が漏れるばかり、スカーレットが思っていた反応と違うことに戸惑いは隠せない。
アーノルドもある程度の混乱はあると予想していたが、まさか大爆笑されるとは、思ってもみなかったこと、両家の親族も所在なさげにしている。公爵家が雇ったサクラだけが拍手をして盛り立てようとするも、他の招待客から、怒号が飛び交い、ごみや石を投げられる始末に、困惑を隠せない。
「ブレンディ!ブレンディ侯爵はおるか?」
怒ったカスバートソン公爵が、怒りに任せて、父を呼んでいる。
「はいはい。当然、おりましてございます。本日は、我が娘の結婚式の披露宴でございますから、カスバートソン公爵様ともあろうお方が娘の結婚式にご臨席を賜るなど、身に余る光栄でございますな。はて?何やら、違うご様子。そういえば、そこのオビンソン家の当主が、1週間前に我が家へ来て、娘との婚約破棄をしたいと申し出てこられましたな。そればかりか、今日の結婚式に乱入したいと仰せでしたが……、このことでございましたか?」
「うぬぬ……、貴様、よくもこの儂に恥をかかせてくれたな!」
「はて?何のことでしょうか?婚約者がいる男性に、粉をかけてくる女性に育てられたのは、どこのどなたのことでしょうか?そのような下賤の女がするようなこと、よもや公爵令嬢がされるなどとは、親御さんの躾がなっていないと言われても致し方がないことでは、ございませんか?」
「言わせておけば……!」
その時、領民のうちの誰かが「帰れ!」と叫んだことが皮切りになり、
まるでシュプレヒコールのごとく、「帰れ」コールが蔓延していく。
「「「「「「「「「「「帰れ。帰れ。帰れ。帰れ。帰れ、帰れ。」」」」」」」」」」」
スカーレットは、「お父様、なんとかしてよ!ウチは公爵家なのだから、公爵家は王様の次に偉いのでしょう!」
「いや、ここの招待客は、他国の要人もいるから下手なことをすれば外交問題に発展しかねない。辛抱するのだ。だいたい、スカーレットがその男が欲しいというから、こういうことになったのだ。そんな格下の男なんぞに惚れおって。」
「惚れてなんかいないわよ!ただ、ジェニファーから奪いたかっただけなんですもの。だって、ジェニファーはいつも幸せそうにして、余裕があるような顔をしていたから、それに 腹が立って、ちょっかいを出したら、あっという間に深い関係になってしまったの。」
「バカ!でも、今更、キズモノになったことをこんな大勢の前で晒してしまったのだから、とにかく婚約は認める。今日は、帰るぞ!」
ジェニファーの学園のお友達も着飾り、花嫁控え室に来て、大盛り上がりに盛り上がっている。
「今日のスカーレットがどんな顔をするかが、見ものね。楽しみだわ。」
「あのね。アーノルドについて、よからぬ噂を耳にしていたから、心配していたのよ。」
「へー。どんな?」
「それがね。わたくしのお友達のお友達がアーノルドに妊娠させられたって噂。その子が産んだのは男の子だったらしくて、今も領地に引っ込んだままだそうよ。だから今日来るの。本当は、ものすごく心配していたのだけど、相手がアーノルドでなくて、よかったわ。」
「どこまでクズ男なのかしら。あのクズ、見た目だけはいいから女の子はみんな騙されちゃうのよね?」
ジェニファーとは、政略結婚とでもいうべきか、幼い頃に家が向かい側だったから、なんとなく親同士が決めたもので、でも年頃になると、毎日のように「愛している。」と言ってくれていたのに、あれは口先だけのデタラメだったのかもしれない。
愛って、なんだろう?でも、間違いなく言えることは、ジェニファーはアーノルドを愛していたわけではなく、ただ親同士が決めた相手と結婚しようとしていたことだけは確かなこと。そういう意味では、生まれて初めて、好きになり愛する人と呼べる存在は、もうアレクサンダー様しかいない。
だから、愛する人と今日、結婚式を挙げられて、幸せを実感する。
こう思えたのも、スカーレットのおかげかもしれない。
スカーレットは、ジェニファーの婚約者を奪い勝ち誇った気分でいるだろうけど、果たして、アーノルドのことを本気で愛しているのだろうか?それが疑問だ。愛する人と結婚できる幸せは、たぶんスカーレットには、永遠にやってこないと思う。
そうこうしているうちに、ファンファーレが鳴り響き、婚約披露宴が開幕したことを知らせる合図だ。
「んじゃ、そろそろ行くね。」
ジェニファーの友人や、各国の要人は、そそくさと自分の指定席へ戻る。
父上も兄上も、ニヤニヤしながら最後尾の末席に鎮座する。バラード側の席は、空いたままになって、スカーレットとアーノルドの親族席は、そもそもない。
だから両家は、ステージ前で二人が登場するのを今や遅しと待ち構えている。
再び、ファンファーレが鳴り響き、続いてアナウンスがされる。
「カスバートソン公爵家ご令嬢スカーレット様ご入場、続きまして、オビンソン家ご令息アーノルド様ご入場。」
二人は、真ん中に作られたステージに上がり、本日、ここで婚約したことを皆様に発表いたしますと。挨拶をするが、両家の親族以外からは、嘲笑が漏れるばかり、スカーレットが思っていた反応と違うことに戸惑いは隠せない。
アーノルドもある程度の混乱はあると予想していたが、まさか大爆笑されるとは、思ってもみなかったこと、両家の親族も所在なさげにしている。公爵家が雇ったサクラだけが拍手をして盛り立てようとするも、他の招待客から、怒号が飛び交い、ごみや石を投げられる始末に、困惑を隠せない。
「ブレンディ!ブレンディ侯爵はおるか?」
怒ったカスバートソン公爵が、怒りに任せて、父を呼んでいる。
「はいはい。当然、おりましてございます。本日は、我が娘の結婚式の披露宴でございますから、カスバートソン公爵様ともあろうお方が娘の結婚式にご臨席を賜るなど、身に余る光栄でございますな。はて?何やら、違うご様子。そういえば、そこのオビンソン家の当主が、1週間前に我が家へ来て、娘との婚約破棄をしたいと申し出てこられましたな。そればかりか、今日の結婚式に乱入したいと仰せでしたが……、このことでございましたか?」
「うぬぬ……、貴様、よくもこの儂に恥をかかせてくれたな!」
「はて?何のことでしょうか?婚約者がいる男性に、粉をかけてくる女性に育てられたのは、どこのどなたのことでしょうか?そのような下賤の女がするようなこと、よもや公爵令嬢がされるなどとは、親御さんの躾がなっていないと言われても致し方がないことでは、ございませんか?」
「言わせておけば……!」
その時、領民のうちの誰かが「帰れ!」と叫んだことが皮切りになり、
まるでシュプレヒコールのごとく、「帰れ」コールが蔓延していく。
「「「「「「「「「「「帰れ。帰れ。帰れ。帰れ。帰れ、帰れ。」」」」」」」」」」」
スカーレットは、「お父様、なんとかしてよ!ウチは公爵家なのだから、公爵家は王様の次に偉いのでしょう!」
「いや、ここの招待客は、他国の要人もいるから下手なことをすれば外交問題に発展しかねない。辛抱するのだ。だいたい、スカーレットがその男が欲しいというから、こういうことになったのだ。そんな格下の男なんぞに惚れおって。」
「惚れてなんかいないわよ!ただ、ジェニファーから奪いたかっただけなんですもの。だって、ジェニファーはいつも幸せそうにして、余裕があるような顔をしていたから、それに 腹が立って、ちょっかいを出したら、あっという間に深い関係になってしまったの。」
「バカ!でも、今更、キズモノになったことをこんな大勢の前で晒してしまったのだから、とにかく婚約は認める。今日は、帰るぞ!」
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