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13.同期
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翌朝、目覚めると、まだ下腹のあたりが痛む。
あれから車でしか移動していなかったせいか、歩き方も少し変になっている。恥ずかしいけど、何かが挟まっている感がある。
知らず知らずのうちに、内またになってしまっていて、歩き方が不自然なのだ。
弟が起きてくるなり、小夜香の顔を見て、
「小夜香姉さん、なんかきれいになったね。お義兄さんとなんかあった?」
一瞬、ドキリとする。
「別に?早く顔洗ってらっしゃい。」
弟は、首をひねりながら、洗面所へ行く。
小夜香はコーヒーを沸かしながら、朝食を作っていく。昨夜の晩御飯は、外食だったので、今朝は、トーストにする。スクランブルエッグに、フランクフルトソーセージを添え、ニンジン、ブロッコリーの温野菜とプチトマトを盛り付ける。
ヨウスケも起きてくるなり、
「おはよう。小夜香、なんだか今朝は一段ときれいになったね。」
弟と同じことを言われ、確かに今朝、お化粧ノリがよかったような気がする。
「あ!やっぱり、お義兄さんも、そう思う?今日の小夜香姉さんは、綺麗だよね。」
「ま、元がいいからだろうな。」
弟もヨウスケも、なんだか嬉しそうにしている。
会社に着いて、更衣室で着替えるときも、他の女子社員からジロジロ見られる。
なに?
営業部に着くと、もうヨウスケは仕事に取り掛かっている。
「おはようございます。」
一礼して、自分の席に向かう。それから定時までの間に、営業部のみんながぞろぞろと出勤してくる。
小夜香の勤める会社、とりわけ営業部では、朝のお茶出しはしない。お茶が飲みたければ、それぞれ、自販機で買うか、休憩室で飲む決まりになっている。契約書類やパソコンを濡らしてはいけないという理由で、禁止されているのだ。
ただし、蓋ができるペットボトルは、持ち込みを許可されている。
お昼休み、社食へ行こうとしていると、営業部員から、次々に声をかけられてしまう。
「サヨちゃん、これからお昼?急にきれいになったね?何かいいことあった?」
「サヨちゃん、今夜、俺とデートしてくれない?」
「うるさいっ!サヨちゃんは、俺が誘う。スポンサーさんから、ペアエステ券もらったのだけど、サヨちゃん行かない?」
「お断りします。」
「ほれ、見ろ。バカ。」
喧嘩をしている間に、こっそり抜け出し、社食でお弁当を広げる。
すると、いつの間にか、同期の鈴江が並んで食事している。別に話は何もしていないのに、彼氏然とした態度をしているのだ。ちょっとムカつくけど、今日は、やけに他の男子社員の視線をうるさく感じてしまうから、虫除けには、ちょうどいいかもしれない。
食べ終わり、お弁当箱を洗い、洗面所に行き歯磨きをする。お化粧直しをして、休憩室に戻ろうとすると、同期の野田尚美から、腕を引っ張られる。
「ちょっとぉ、小夜香、アンタ鈴江と付き合ってるの?」
「は?何、言っているのよ。そんなわけないでしょ?」
「だって、さっき社食で一緒にご飯食べてたじゃない?」
「あれは、勝手に鈴江が私の横に座っただけよ。」
「それに、昨日だって、帰りがけに鈴江と何やら親しそうに話し込んでいたし。」
え?あの時を見られていたの?そういえば、ヨウスケも似たようなことを言っていたっけ?
「親しげなんて、とんでもない。しつこくて、うんざりしていただけよ。ただの世間話なのに。」
「そう。なら、いいけど。アイツ同期の中では、自分がイケメンだとか、出世コースに乗れるのは俺だけだとか、言っているからさ。けっこう、同期の中でも鈴江を狙っている娘が多いのよ?」
「え?誰?誰?」
「そんなことより、思わせぶりな態度はやめた方がいいよ。」
「えー!そんなこと、していないよ。」
「アンタは入社した時から、どこか、普通の娘と違ってた。それが魅力的に思う奴もいるってことよ。」
「はー?なにそれ?入社してから、今日に至るまでの私の苦労なんか知りもしないで、勝手なことほざいてろ!」
「苦労って、なによ?」
「学生時代から住んでいたマンションを追い出されたのよ。まぁ、今は弟と一緒に暮らしているから、生活は成り立っているのだけどね。」
「ええ!アンタ、ホームレスOLだったの!」
「しーっ。声が大きい。」
「あ、ごめん、ごめん。それは、大変だったね。わかったわ。同期の娘には、ちゃんと私が説明しといたげる。でも、鈴江のことはこれ以上、近寄らせては、ダメよ。いいね?それにしても、最近?というか?今日は、やけに色っぽくなったわね?」
「お化粧を変えただけよ
。」
「そう?今度、そのお化粧方法を教えて。じゃ、時間だから行くね。」
手を振って、尚美と別れ、営業部に戻る。
ちらちらと食堂にいた時からの視線が、またもやうるさい。
なんでだろう?朝から、健一郎に指摘されるし、更衣室でも、そして、さっきのナンパ騒ぎに、食堂、そして仕事場でも?
小夜香は、自分のどこが変わったのか、まったく理解していない。ヨウスケが綺麗だと言っても、いつものことで気にしていないから、カウントされない。
あれから車でしか移動していなかったせいか、歩き方も少し変になっている。恥ずかしいけど、何かが挟まっている感がある。
知らず知らずのうちに、内またになってしまっていて、歩き方が不自然なのだ。
弟が起きてくるなり、小夜香の顔を見て、
「小夜香姉さん、なんかきれいになったね。お義兄さんとなんかあった?」
一瞬、ドキリとする。
「別に?早く顔洗ってらっしゃい。」
弟は、首をひねりながら、洗面所へ行く。
小夜香はコーヒーを沸かしながら、朝食を作っていく。昨夜の晩御飯は、外食だったので、今朝は、トーストにする。スクランブルエッグに、フランクフルトソーセージを添え、ニンジン、ブロッコリーの温野菜とプチトマトを盛り付ける。
ヨウスケも起きてくるなり、
「おはよう。小夜香、なんだか今朝は一段ときれいになったね。」
弟と同じことを言われ、確かに今朝、お化粧ノリがよかったような気がする。
「あ!やっぱり、お義兄さんも、そう思う?今日の小夜香姉さんは、綺麗だよね。」
「ま、元がいいからだろうな。」
弟もヨウスケも、なんだか嬉しそうにしている。
会社に着いて、更衣室で着替えるときも、他の女子社員からジロジロ見られる。
なに?
営業部に着くと、もうヨウスケは仕事に取り掛かっている。
「おはようございます。」
一礼して、自分の席に向かう。それから定時までの間に、営業部のみんながぞろぞろと出勤してくる。
小夜香の勤める会社、とりわけ営業部では、朝のお茶出しはしない。お茶が飲みたければ、それぞれ、自販機で買うか、休憩室で飲む決まりになっている。契約書類やパソコンを濡らしてはいけないという理由で、禁止されているのだ。
ただし、蓋ができるペットボトルは、持ち込みを許可されている。
お昼休み、社食へ行こうとしていると、営業部員から、次々に声をかけられてしまう。
「サヨちゃん、これからお昼?急にきれいになったね?何かいいことあった?」
「サヨちゃん、今夜、俺とデートしてくれない?」
「うるさいっ!サヨちゃんは、俺が誘う。スポンサーさんから、ペアエステ券もらったのだけど、サヨちゃん行かない?」
「お断りします。」
「ほれ、見ろ。バカ。」
喧嘩をしている間に、こっそり抜け出し、社食でお弁当を広げる。
すると、いつの間にか、同期の鈴江が並んで食事している。別に話は何もしていないのに、彼氏然とした態度をしているのだ。ちょっとムカつくけど、今日は、やけに他の男子社員の視線をうるさく感じてしまうから、虫除けには、ちょうどいいかもしれない。
食べ終わり、お弁当箱を洗い、洗面所に行き歯磨きをする。お化粧直しをして、休憩室に戻ろうとすると、同期の野田尚美から、腕を引っ張られる。
「ちょっとぉ、小夜香、アンタ鈴江と付き合ってるの?」
「は?何、言っているのよ。そんなわけないでしょ?」
「だって、さっき社食で一緒にご飯食べてたじゃない?」
「あれは、勝手に鈴江が私の横に座っただけよ。」
「それに、昨日だって、帰りがけに鈴江と何やら親しそうに話し込んでいたし。」
え?あの時を見られていたの?そういえば、ヨウスケも似たようなことを言っていたっけ?
「親しげなんて、とんでもない。しつこくて、うんざりしていただけよ。ただの世間話なのに。」
「そう。なら、いいけど。アイツ同期の中では、自分がイケメンだとか、出世コースに乗れるのは俺だけだとか、言っているからさ。けっこう、同期の中でも鈴江を狙っている娘が多いのよ?」
「え?誰?誰?」
「そんなことより、思わせぶりな態度はやめた方がいいよ。」
「えー!そんなこと、していないよ。」
「アンタは入社した時から、どこか、普通の娘と違ってた。それが魅力的に思う奴もいるってことよ。」
「はー?なにそれ?入社してから、今日に至るまでの私の苦労なんか知りもしないで、勝手なことほざいてろ!」
「苦労って、なによ?」
「学生時代から住んでいたマンションを追い出されたのよ。まぁ、今は弟と一緒に暮らしているから、生活は成り立っているのだけどね。」
「ええ!アンタ、ホームレスOLだったの!」
「しーっ。声が大きい。」
「あ、ごめん、ごめん。それは、大変だったね。わかったわ。同期の娘には、ちゃんと私が説明しといたげる。でも、鈴江のことはこれ以上、近寄らせては、ダメよ。いいね?それにしても、最近?というか?今日は、やけに色っぽくなったわね?」
「お化粧を変えただけよ
。」
「そう?今度、そのお化粧方法を教えて。じゃ、時間だから行くね。」
手を振って、尚美と別れ、営業部に戻る。
ちらちらと食堂にいた時からの視線が、またもやうるさい。
なんでだろう?朝から、健一郎に指摘されるし、更衣室でも、そして、さっきのナンパ騒ぎに、食堂、そして仕事場でも?
小夜香は、自分のどこが変わったのか、まったく理解していない。ヨウスケが綺麗だと言っても、いつものことで気にしていないから、カウントされない。
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