17 / 18
17.謀
しおりを挟む
マクシミリアンが率いる騎士団の野営は、見せかけだけで、実質上の宿は、エスペランサ領の温泉宿に寝泊まりしている。
本気で、フェリシアン王子の演習に付き合う気などハナからない。まして、マクシミリアンを謀殺することを企んでいると知ってからでは、なおさらのことである。
誰がバカバカしくって、そんなものに協力するかってんだ。
マクシミリアンとシャルロットが結婚するまでの慰安のつもりで、エスペランサ領に滞在しているに過ぎない。
だから、夕刻になれば、さっさとエスペランサ領に魔方陣で引き上げるということにしている。
ただし、野営のテントには、かがり火を焚いて、魔物や野生動物に備えている。
今日もそのつもりでいたら、今頃になって、フェリシアンが登場した。「遅い!」って言ってやったよ。そしたらアイツ、真顔になって怒ってやんの。マジで笑える
俺たちは、シャルロットの転移魔法陣のおかげで一瞬で着いたけど、アイツらは1週間もの時間をかけて、行軍してきたものだから、ドロドロになっている。
俺たちは、これから温泉に入って、さっぱりするというのに、アイツらは、せいぜい水浴びでもしろってんだ。それだけでも優越感に浸れるというのに、マクシミリアンの傍には、シャルロット聖女様がいて、足の裏までマッサージしてくれるんだぜ。どうだ、いいだろう?
フッと笑みがこぼれ、「じゃあ、また明日な」と手を振って、別れる。
その姿を見て、フェリシアンは地団駄を踏んで悔しがる。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
マクシミリアンの余裕の態度に、フェリシアンは計画を前倒しにして、今夜襲撃することを決める。
マクシミリアンのテントに投げ文をして、山の中に呼び出し、殺すというもの。うまく仕留めれば、その足で、シャルロット聖女様のテントに忍び込み、そのまま頂戴しようと思っている。あのカタブッツのマクシミリアンのことだから、まだ、聖女様には指1本手出しをしていないはず。
操を奪われた聖女様は、自動的にフェリシアンのモノとなる筋書きで、我ながらうまい考えを思いついたものだと自画自賛する。
呼び出しの刻限は、皆が寝静まった頃にする。
月明かりを頼りに早めに待ち伏せをするために出かけ、手下を周りに多く配置している。
万が一にもしくじった時を考えて、フェリシアンはマスクを着け、変装している。つもり。
しかし、待てど暮らせどマクシミリアンは来ない。それもそのはずで、空っぽのテントに投げ文をしたことにさえ、まだ気づいていない。
「なぜだ?さては、怖気づいたか?」
子供の頃のことしか知らないフェリシアンは、マクシミリアンが怖気づいて、逃げ出したかとほくそ笑む。ざまあみろ!
その時、フェリシアンの立っている背後の藪がガサガサと音がする。ついに来たか!
「待ち構えたぞ!マクシミリアン!どうした?怖気づいているのか?」
フェリシアンは、まるで勝ち誇ったかのように藪に向かって、叫ぶ。
ところが藪の中から出てきたのは、マクシミリアンではなく中型の大きさのライオン?チーター?の類の夜行性の動物だった。
夜行性だから、怪しまれないように火を焚いていなかった配下の者の位置まで、ハッキリと見えているようで、一目散に逃げだした配下目がけて、群れで襲ってきたのだ。
群れるということは、ライオンやチーターではなさそう……何てこと、今はどうでもいい。一刻も早くこの場から立ち去らなければ、食われてしまう恐れがある。
こういう時に火をかざせば、たいていの動物は逃げるのだが、マクシミリアンを暗殺するため、火を焚いていなかった。
人を呪わば穴二つの言葉通り、この山の中で、フェリシアンと配下の全員が、獣にかみ殺されてしまうが、その躯は跡形が残らないほど、綺麗に食われた。
本気で、フェリシアン王子の演習に付き合う気などハナからない。まして、マクシミリアンを謀殺することを企んでいると知ってからでは、なおさらのことである。
誰がバカバカしくって、そんなものに協力するかってんだ。
マクシミリアンとシャルロットが結婚するまでの慰安のつもりで、エスペランサ領に滞在しているに過ぎない。
だから、夕刻になれば、さっさとエスペランサ領に魔方陣で引き上げるということにしている。
ただし、野営のテントには、かがり火を焚いて、魔物や野生動物に備えている。
今日もそのつもりでいたら、今頃になって、フェリシアンが登場した。「遅い!」って言ってやったよ。そしたらアイツ、真顔になって怒ってやんの。マジで笑える
俺たちは、シャルロットの転移魔法陣のおかげで一瞬で着いたけど、アイツらは1週間もの時間をかけて、行軍してきたものだから、ドロドロになっている。
俺たちは、これから温泉に入って、さっぱりするというのに、アイツらは、せいぜい水浴びでもしろってんだ。それだけでも優越感に浸れるというのに、マクシミリアンの傍には、シャルロット聖女様がいて、足の裏までマッサージしてくれるんだぜ。どうだ、いいだろう?
フッと笑みがこぼれ、「じゃあ、また明日な」と手を振って、別れる。
その姿を見て、フェリシアンは地団駄を踏んで悔しがる。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
マクシミリアンの余裕の態度に、フェリシアンは計画を前倒しにして、今夜襲撃することを決める。
マクシミリアンのテントに投げ文をして、山の中に呼び出し、殺すというもの。うまく仕留めれば、その足で、シャルロット聖女様のテントに忍び込み、そのまま頂戴しようと思っている。あのカタブッツのマクシミリアンのことだから、まだ、聖女様には指1本手出しをしていないはず。
操を奪われた聖女様は、自動的にフェリシアンのモノとなる筋書きで、我ながらうまい考えを思いついたものだと自画自賛する。
呼び出しの刻限は、皆が寝静まった頃にする。
月明かりを頼りに早めに待ち伏せをするために出かけ、手下を周りに多く配置している。
万が一にもしくじった時を考えて、フェリシアンはマスクを着け、変装している。つもり。
しかし、待てど暮らせどマクシミリアンは来ない。それもそのはずで、空っぽのテントに投げ文をしたことにさえ、まだ気づいていない。
「なぜだ?さては、怖気づいたか?」
子供の頃のことしか知らないフェリシアンは、マクシミリアンが怖気づいて、逃げ出したかとほくそ笑む。ざまあみろ!
その時、フェリシアンの立っている背後の藪がガサガサと音がする。ついに来たか!
「待ち構えたぞ!マクシミリアン!どうした?怖気づいているのか?」
フェリシアンは、まるで勝ち誇ったかのように藪に向かって、叫ぶ。
ところが藪の中から出てきたのは、マクシミリアンではなく中型の大きさのライオン?チーター?の類の夜行性の動物だった。
夜行性だから、怪しまれないように火を焚いていなかった配下の者の位置まで、ハッキリと見えているようで、一目散に逃げだした配下目がけて、群れで襲ってきたのだ。
群れるということは、ライオンやチーターではなさそう……何てこと、今はどうでもいい。一刻も早くこの場から立ち去らなければ、食われてしまう恐れがある。
こういう時に火をかざせば、たいていの動物は逃げるのだが、マクシミリアンを暗殺するため、火を焚いていなかった。
人を呪わば穴二つの言葉通り、この山の中で、フェリシアンと配下の全員が、獣にかみ殺されてしまうが、その躯は跡形が残らないほど、綺麗に食われた。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。


だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる