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第1章 幼少期
4.二十六歳 シモン・セシル 実父
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シモン・セシル、公爵家の当主だ。妻エリザベスとは、王立学園でともに学び、卒業と同時に結婚した。長男アーノルドが7歳、長女ビクトリアが5歳、そして来月出産予定の子供がいる。子供は2人でいいと思っていたが、ビクトリアがかわいくてしょうがなくなって、もう一人作ることにした。
娘ビクトリアが5歳になった。いつもは聞き分けの良い娘が王子のお妃選考会が行われる日に限って、駄々をこね行きたがらない。仕方なく欠席させることにしたが、セシル公爵家の長女が行かなければ、選考会は始まらない。
次の選考会には、ビクトリアは参加してくれるのだろうか?さりげなく、聞いたところ
「絶対、行きたくございません!」
「わたくし、王子様の婚約者になりたくございません。婚約者候補になるぐらいなら、ほかになりたいものがございます。そのために、一生懸命、勉強しているのでございます。」
なりたいもの?それが何かは、とうとう聞けずじまいであったが、人生の目標を持つことは悪いことではない。ビクトリアは、美人だ。妻の美しさを受け継いでいる。いや、親ばかかもしれないが、妻以上の美しさとかわいらしさの二つを受け継いでいる。
将来、王子に嫁にやるより、もっといいところから、例えば大国の王族からなどから縁談が来るかもしれない。だから、選考会など、無理して行く必要などないのだ。
ビクトリアは、3歳の誕生日の朝から、突如として人格が変わったように思える。それまでは、けっこうわがままで、気に入らないことがあると泣き叫ぶところがあったのに、初めての女の子ということもあり、私も妻も甘やかしすぎたのかもしれないが、誰からに注意されたわけでもないのに、突然、人格が変わってしまった。
おとなしく真面目で礼儀正しくなった。悪いような性格に変わったわけではないので、喜ばしい変化だった。家庭教師も自ら進んでつけてほしいと言われたのには、驚いた。
妹ビクトリアに家庭教師をつけたことから、兄アーノルドにも当然つけなければならなくなったのは、うれしい誤算だった。アーノルドには、そろそろと思っていたのだ。
教会の司祭から、聞いた話なのだが、どうやらビクトリアには聖女の資質があるらしい。
教会に急病人や、けが人が運ばれてきたとき、ビクトリアが密かに治療しているらしい。ビクトリアが手をかざすと、病人やけが人のカラダが金色の光に包まれて、あっという間に呼吸が安定し、ほとんど完治したみたいになるらしい。
司祭は、最初、目を疑ったが、それが続くとわかると、わざと病人やけが人を置いて、部屋を離れ、物陰から様子をうかがうと、ビクトリアが慈愛に満ちたまなざしを向けて、手をかざすらしい。
聖女になれば、国王より権威がある。これは、大国との縁談がより現実的なものになってきたではないか。やはり、王子の婚約者候補から、外してもらうほうが得策だ。
ビクトリアのなりたいものが、聖女かどうかは、わからないが、夜中に図書室へ行き、密かに勉強していることも知っている。これも偶然だが、調べ物をしようと書庫へ入ったら、明かりが見えて、そこにビクトリアがいた。積み上げられた書物の数から、そうとう、集中して読破していることがうかがえた。
その時は、そのまま調べ物をせず、書斎に戻った。しかし、次の夜もその次の夜もビクトリアは図書室にいた。朝になって、図書室に行き、ビクトリアが読んでいただろうと思われる書物を探したら、政治・経済から、薬草、美術、芸術、植物、歴史書、外国語、マナー、医学、魔法書まで多岐にわたり、読破していることが判明した。
ビクトリアの家庭教師からの報告によると、ビクトリアは家庭教師が舌を巻くほどの博識家で、もう何も教えることがないというほどの知識量を持っているらしい。
こうなれば、将来が楽しみだ。陰ながらビクトリアのなりたいもののため、バックアップをするぞ、と心に誓った。
もうすぐ、妻に3人目の子供が生まれる。ビクトリア似の賢い子なら、楽しみだ。
娘ビクトリアが5歳になった。いつもは聞き分けの良い娘が王子のお妃選考会が行われる日に限って、駄々をこね行きたがらない。仕方なく欠席させることにしたが、セシル公爵家の長女が行かなければ、選考会は始まらない。
次の選考会には、ビクトリアは参加してくれるのだろうか?さりげなく、聞いたところ
「絶対、行きたくございません!」
「わたくし、王子様の婚約者になりたくございません。婚約者候補になるぐらいなら、ほかになりたいものがございます。そのために、一生懸命、勉強しているのでございます。」
なりたいもの?それが何かは、とうとう聞けずじまいであったが、人生の目標を持つことは悪いことではない。ビクトリアは、美人だ。妻の美しさを受け継いでいる。いや、親ばかかもしれないが、妻以上の美しさとかわいらしさの二つを受け継いでいる。
将来、王子に嫁にやるより、もっといいところから、例えば大国の王族からなどから縁談が来るかもしれない。だから、選考会など、無理して行く必要などないのだ。
ビクトリアは、3歳の誕生日の朝から、突如として人格が変わったように思える。それまでは、けっこうわがままで、気に入らないことがあると泣き叫ぶところがあったのに、初めての女の子ということもあり、私も妻も甘やかしすぎたのかもしれないが、誰からに注意されたわけでもないのに、突然、人格が変わってしまった。
おとなしく真面目で礼儀正しくなった。悪いような性格に変わったわけではないので、喜ばしい変化だった。家庭教師も自ら進んでつけてほしいと言われたのには、驚いた。
妹ビクトリアに家庭教師をつけたことから、兄アーノルドにも当然つけなければならなくなったのは、うれしい誤算だった。アーノルドには、そろそろと思っていたのだ。
教会の司祭から、聞いた話なのだが、どうやらビクトリアには聖女の資質があるらしい。
教会に急病人や、けが人が運ばれてきたとき、ビクトリアが密かに治療しているらしい。ビクトリアが手をかざすと、病人やけが人のカラダが金色の光に包まれて、あっという間に呼吸が安定し、ほとんど完治したみたいになるらしい。
司祭は、最初、目を疑ったが、それが続くとわかると、わざと病人やけが人を置いて、部屋を離れ、物陰から様子をうかがうと、ビクトリアが慈愛に満ちたまなざしを向けて、手をかざすらしい。
聖女になれば、国王より権威がある。これは、大国との縁談がより現実的なものになってきたではないか。やはり、王子の婚約者候補から、外してもらうほうが得策だ。
ビクトリアのなりたいものが、聖女かどうかは、わからないが、夜中に図書室へ行き、密かに勉強していることも知っている。これも偶然だが、調べ物をしようと書庫へ入ったら、明かりが見えて、そこにビクトリアがいた。積み上げられた書物の数から、そうとう、集中して読破していることがうかがえた。
その時は、そのまま調べ物をせず、書斎に戻った。しかし、次の夜もその次の夜もビクトリアは図書室にいた。朝になって、図書室に行き、ビクトリアが読んでいただろうと思われる書物を探したら、政治・経済から、薬草、美術、芸術、植物、歴史書、外国語、マナー、医学、魔法書まで多岐にわたり、読破していることが判明した。
ビクトリアの家庭教師からの報告によると、ビクトリアは家庭教師が舌を巻くほどの博識家で、もう何も教えることがないというほどの知識量を持っているらしい。
こうなれば、将来が楽しみだ。陰ながらビクトリアのなりたいもののため、バックアップをするぞ、と心に誓った。
もうすぐ、妻に3人目の子供が生まれる。ビクトリア似の賢い子なら、楽しみだ。
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