転生家族

青の雀

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 若干、コミュ障気味のビクトリアは、あまり人前に出るのが苦手だから極力出たくない。でも、王太子妃の立場上、出ないわけにもいかない。

 レイモンドが生まれてから、視察や慰問と言った類のものに、よく引っ張り出されてしまう。

 今日の公務は、王都にある森での植樹会。森は本来自生しているモノを指すので森とは言わないのだけど、林が正しいはずだけど、過去世では木の多さによって区別しているらしい。

 ビクトリアが到着したとき、1羽のコンドルが飛び立っていった。驚かせてしまったかしら?

 コンドルが飛び立った当たりの茂みの中から丸いものが見つかった。ハハーン。何かの卵のようで、コンドルは巣に持ち帰る途中、あまりの重たさに手放してしまったということか。

 ビクトリアが抱きかかえると、確かにズシリと手ごたえがある重さ。

 それにしても、コンドルの卵でないことはわかる。ラグビーボールぐらいの長丸状の卵。

 今度、未来世に戻る時、御土産が欲しかったものだから、その卵を持ち帰ることにする。

 どうせ孵化しないだろうからというのが、正直な気持ちだった。

 ところが、王城に帰って、自室の窓際の明るいところに植木鉢と一緒に並べておいたら、だんだんとヒビが入っていき、ついには孵化してしまった。

 どうやら龍の赤ちゃんみたいで、子猫ぐらいの大きさをしている。子猫なら黒い毛皮に黒い瞳は、縁起がいいとされているが、龍の赤ちゃんにも通じるものかと観察する。

 にゃーにゃーではなく、キュウ、キュウと鳴くので、キュウちゃんと名付けた。

 キュウちゃんは、なかなか良くできた子で、アンドリューとの夜の営みの時、二人の間に割って入り、アンドリューの邪魔をしてくれるようになった。おかげで抱き潰されることもなくなり、最近は、お股が痛むこともあまりない。

 でも、ビクトリアが欲しいときは、キュウちゃんを自室の籠の中に入れ、部屋にもカギをかけて閨の間に向かう。

 こんなワガママが許されるのも、レイモンドを産んだおかげといえる。そうこうしているうちに、また懐妊した。

 安定期に入るまでは、未来世に帰れない。

 アンドリューもキュウちゃんと向き合おうと努力してくれているようだが、なかなかビクトリア以外の人間に心を開いてくれない。

 だけど、アンドリューとキュウちゃんがわかりあえないと、未来世へは連れて行けない。

 ビクトリアの意志だけでは、時空を行き来できないし、このまま過去世に置いていても、前世のビクトリアでは、キュウちゃんのお世話ができない?

 前世のビクトリアガ拾ったわけではなので、無理ではないかと思っている。実際のところ、記憶は共有しているから、何とも言えないけど。いや、カラダだけ共有していると言った方がいいのかもしれない。

 とにかくキュウちゃんには、アンドリュー様と仲良くしてもらわないと、一緒に元の世界に帰れないということを毎日、言い聞かせるようにした。

 その甲斐あってか、最近は、ようやく少しだけ打ち解けてきたような気がするが、それもビクトリアと一緒にいる時だけ猫を被っているような感じで、なかなか進展しないのでハラハラしている。

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