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夢の中(過去世)では、9か月が過ぎても現世では、1秒にも満たない時間。あれほど深く愛し合った記憶があるのに、この曲が終われば、また他人の関係になるのかと思うと正直、寂しい。
ただの公爵令嬢と王子殿下とは、身分の隔たりがある。そんなことを考えていると、あっという間に1曲が終わってしまう。礼をして、去ろうとするビクトリアをアンドリュー殿下は離さない。
「もう1曲、お願いしたい」
結局、ファーストダンスから3曲も踊ってしまった。もう、普段からカラダを動かしていないツケがこんな形で回ってくるとは、やはり前世の夢は夢でしかなかったことに痛感する。
もう、喉はカラカラで足取りもおぼつかないが、なぜか前世の夢のようにアンドリュー殿下はずっとそばにいてくださる。
そのせいで、かどうかわからないけど、エドワードから睨めつけられてしまって、エドワードが悪いのよ。令嬢をほったらかしにして、恋人とイチャつくものだから。
今更、護衛の任をしようたって遅いのだから。
それにアンドリュー殿下は、まるで夢の中の前世の夫のように、ピッタリとビクトリアに寄り添ってくれている。
他の令嬢が寄り付こうにも寄せつけない威圧感で、周囲を蹴散らかしているのを見ると、この男性は、やはり天性の王子様なのだと実感する。
前世では、それなりにつり合いがとれていたのかもしれないが、今世ではとても無理だと思う。
そんなビクトリアの思考を読んでいるかのような視線に、思わずたじろいでしまうが、さらに驚くべき行動を見せてくれる。
なんと!周囲に人がいるにも関わらず、ビクトリアの前で跪いて、ビクトリアのドレスの裾に口づけしながらプロポーズの言葉を口にされたのだ。
これには、周囲の貴族や令嬢が、さざ波のように動揺していることが見て取れる。
「ビクトリア嬢、貴女に一目ぼれをしてしまいました。どうか私の妻になってほしい」
「はい、喜んで」
としか返事ができない。本来なら、こういうプロポーズを即答することは貴族令嬢のマナー違反になり、父公爵の許しを待たなければならない。
昨日まで二人で熱い夜を過ごしてきた間柄には、時間など無意味なもので関係がない。
「では、これよりエスメラルダ家にご挨拶に伺おう」
エスコートされ、馬車に乗り込む二人の姿に周囲はポカンと口を開け、見送るのみ。あまりの急展開に、ついていけない。
それをふくれっ面しながらも、護衛しているエドワードは、何というべきか、すっかり残念な人に成り下がってしまっている。
エドワードの見た目は決して悪くはない。だが、アンドリュー殿下を前にすると、どうしても小者感しか出てこない。実際、小者なのだから。
馬車はエスメラルダ家の前庭を滑り込むようにして、止まった。すでに玄関前には、先触れがしてあったのか、両親と使用人一同がかしこまって整列し、頭を下げている様子が見える。
「アンドリュー王子殿下、ようこそ、おいでくださいました」
エスメラルダ公爵が深々と頭を下げると、使用人一同も揃って、頭を下げ臣下の礼を取った。
「令嬢を私の妃に迎え入れたい。今後は、義理の父になるのだから、かしこまらなくてよい」
「ですが、ビクトリアは、まだ16歳で学園に通っておりますが……」
「問題ない」
ただの公爵令嬢と王子殿下とは、身分の隔たりがある。そんなことを考えていると、あっという間に1曲が終わってしまう。礼をして、去ろうとするビクトリアをアンドリュー殿下は離さない。
「もう1曲、お願いしたい」
結局、ファーストダンスから3曲も踊ってしまった。もう、普段からカラダを動かしていないツケがこんな形で回ってくるとは、やはり前世の夢は夢でしかなかったことに痛感する。
もう、喉はカラカラで足取りもおぼつかないが、なぜか前世の夢のようにアンドリュー殿下はずっとそばにいてくださる。
そのせいで、かどうかわからないけど、エドワードから睨めつけられてしまって、エドワードが悪いのよ。令嬢をほったらかしにして、恋人とイチャつくものだから。
今更、護衛の任をしようたって遅いのだから。
それにアンドリュー殿下は、まるで夢の中の前世の夫のように、ピッタリとビクトリアに寄り添ってくれている。
他の令嬢が寄り付こうにも寄せつけない威圧感で、周囲を蹴散らかしているのを見ると、この男性は、やはり天性の王子様なのだと実感する。
前世では、それなりにつり合いがとれていたのかもしれないが、今世ではとても無理だと思う。
そんなビクトリアの思考を読んでいるかのような視線に、思わずたじろいでしまうが、さらに驚くべき行動を見せてくれる。
なんと!周囲に人がいるにも関わらず、ビクトリアの前で跪いて、ビクトリアのドレスの裾に口づけしながらプロポーズの言葉を口にされたのだ。
これには、周囲の貴族や令嬢が、さざ波のように動揺していることが見て取れる。
「ビクトリア嬢、貴女に一目ぼれをしてしまいました。どうか私の妻になってほしい」
「はい、喜んで」
としか返事ができない。本来なら、こういうプロポーズを即答することは貴族令嬢のマナー違反になり、父公爵の許しを待たなければならない。
昨日まで二人で熱い夜を過ごしてきた間柄には、時間など無意味なもので関係がない。
「では、これよりエスメラルダ家にご挨拶に伺おう」
エスコートされ、馬車に乗り込む二人の姿に周囲はポカンと口を開け、見送るのみ。あまりの急展開に、ついていけない。
それをふくれっ面しながらも、護衛しているエドワードは、何というべきか、すっかり残念な人に成り下がってしまっている。
エドワードの見た目は決して悪くはない。だが、アンドリュー殿下を前にすると、どうしても小者感しか出てこない。実際、小者なのだから。
馬車はエスメラルダ家の前庭を滑り込むようにして、止まった。すでに玄関前には、先触れがしてあったのか、両親と使用人一同がかしこまって整列し、頭を下げている様子が見える。
「アンドリュー王子殿下、ようこそ、おいでくださいました」
エスメラルダ公爵が深々と頭を下げると、使用人一同も揃って、頭を下げ臣下の礼を取った。
「令嬢を私の妃に迎え入れたい。今後は、義理の父になるのだから、かしこまらなくてよい」
「ですが、ビクトリアは、まだ16歳で学園に通っておりますが……」
「問題ない」
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