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リチャードは、盗賊が盗んだ品物を国外で売りさばけないように港を封鎖する。また陸続きのところは国境警備隊を配備し、厳重に国外から出られないように高い塀を設けることにしたのだ。
留守居宅と見せかけた家には、屈強な腕自慢のオトコばかりをそろえ、その周りの家に協力してもらい、見張り所を作る。
庭師に化けた騎士は木の上に弓、剣を隠しておく。メイド長は、女装した騎士スカートの中には、長剣と短剣を隠し持つ。
そして待つこと2週間、ようやく最初の網に引っかかったかと思えば、次から次へと罠にかかっていく。
盗賊は、知能が低いみたい。
それで取りこぼすこともなく、みんな捕まえて、獄門台に送った。
ロミオメールは収まるどころか、かえって煽りを受けたみたいだが、そのうち収まることに期待する。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
ロアンヌは、出産間近を迎えていて、お腹もだいぶ下がってきている。
「今度は早く出てこなくてもいいからね」
毎日、お腹に語り掛けている。主治医も毎日、来てくれるから今のところ心配はない。はずなんだけど、なぜか、嫌な予感がする。
それが何かはわからない。
ある日、リチャードのところにもたらされた情報によって、その不安が何かを知ることになるが、緘口令が敷かれ、ロアンヌは知らないままにいたのだ。
その情報は、クレメンタイン家の事故現場の川上付近で、頭から血を流した若い男性の目撃情報があったとのこと。
「それはいつのことだ?」
「正確にはわからないですが、最近ではなかったという程度の情報で……」
なぜ、川下でなく川上かは、わからないが、ロバートである可能性は十分にある。
「見つけ次第、殺せ。ただしロアンヌには絶対、秘密厳守だ」
「はっ!」
「それで、証拠になるものを持ってきてくれ」
数日後、その若い男性の躯は秘かに王城に運ばれ、リチャードは検分に立ち会うことになる。
確かに額の上の方にキズ痕はあったが、どうみてもロバートの顔ではない。
「誰だ。こいつ?」
その男は、山に住む木こりで、1年ほど前に誤って川に落ち、頭にけがをしたという。ホっとするような?ガッカリするような?でも、暗殺してしまったので、事故死ということで処理することにした。
まったくロバートの奴め、生きているなら逃げていないで、さっさと出てこい!
引き続き、部下にロバートの行方を探させることに余念がない。
それからというものクレメンタインの事故現場でけがをしたと思われる若い男性狩りが行われたが、いずれも別人であることがわかる。
これは、ひょっとすれば、ひょっとするかも?しれない。これだけ探してもいないということは、すでに事故現場を離れて、どこかに隠れているに違いない。
ロバート探索網をどんどん広げるにつれ、もはや若い男性狩りの状態になっていく。突然、自分の恋人や夫が憲兵隊に連れ去られ、帰らぬ姿になることに不安を感じた若い女性たちが立ち上がり騒ぎになる。その騒ぎは王都にまで波及し、ついにロアンヌの知るところとなってしまったのだ。
「なんですって!ロバート様のご遺体が発見されていないとは、まことのことなのでしょうか?それで……若い男性を片っ端から捕まえて、少しでも怪しいと感じたら殺しているとは……どういうことか、ハッキリ説明してくださいませ!」
「いや、それは違うのだ。わざと殺しているわけではない。たまたま、事故で亡くなっている者がほとんどなのだ。皆、必死にロバートの行方を案じ、探しているのだ。それだけは信じてくれ」
「それならば、あのお手紙はやはりロバート様からのお手紙だったということでしょうか……、ロバート様、どうかわたくしをお許しくださいませ」
「もういい!ロアンヌが気に病むから黙っていたのだ。他意はない」
リチャードは内心舌打ちをしている。早くロバートを始末しなければ、でないとロアンヌが持たない。
ロバートからのロミオメールが来てから、ロクなことはない。治安は悪化するし、民衆の心は離れていく。イソフラボンはクーデターを起こしそうになるが未然に防げたから良いようなもの。
そうこうしているうちに、ロアンヌの2度目の出産の日を迎える。今度も、また男の子の誕生で、第2王子はフランシスコと名付けられる。
第2王子の出産を無事終えたことに対するご褒美として、ロアンヌは、しばらくの間、実家に帰ることを赦されるようになった。今のところ、盗賊騒ぎも一段落したということもあるが、しばらくカラダを休めるためと、それからもう一つの意味として、実家に帰ったロアンヌを目当てにロバートが近づいてくる可能性があったから、そこを捕まえれば、一石二鳥になると踏んだ。
王都のタウンハウスの方ではなく、ロアンヌが選んだのは領地。クロイセン領地に向けて、馬車は動き出す。この前、領地へ行ったときは、新婚旅行で、ウイリアムとリチャードと3人で行ったのだが、今回のお里帰りは、ロアンヌ一人だけの行幸となり、少々寂しさを感じるものの、領地の空気を吸った途端、そんな考えは吹き飛んでしまう。
「やっぱり、クロイセンの空気は、美味しいわ」
留守居宅と見せかけた家には、屈強な腕自慢のオトコばかりをそろえ、その周りの家に協力してもらい、見張り所を作る。
庭師に化けた騎士は木の上に弓、剣を隠しておく。メイド長は、女装した騎士スカートの中には、長剣と短剣を隠し持つ。
そして待つこと2週間、ようやく最初の網に引っかかったかと思えば、次から次へと罠にかかっていく。
盗賊は、知能が低いみたい。
それで取りこぼすこともなく、みんな捕まえて、獄門台に送った。
ロミオメールは収まるどころか、かえって煽りを受けたみたいだが、そのうち収まることに期待する。
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ロアンヌは、出産間近を迎えていて、お腹もだいぶ下がってきている。
「今度は早く出てこなくてもいいからね」
毎日、お腹に語り掛けている。主治医も毎日、来てくれるから今のところ心配はない。はずなんだけど、なぜか、嫌な予感がする。
それが何かはわからない。
ある日、リチャードのところにもたらされた情報によって、その不安が何かを知ることになるが、緘口令が敷かれ、ロアンヌは知らないままにいたのだ。
その情報は、クレメンタイン家の事故現場の川上付近で、頭から血を流した若い男性の目撃情報があったとのこと。
「それはいつのことだ?」
「正確にはわからないですが、最近ではなかったという程度の情報で……」
なぜ、川下でなく川上かは、わからないが、ロバートである可能性は十分にある。
「見つけ次第、殺せ。ただしロアンヌには絶対、秘密厳守だ」
「はっ!」
「それで、証拠になるものを持ってきてくれ」
数日後、その若い男性の躯は秘かに王城に運ばれ、リチャードは検分に立ち会うことになる。
確かに額の上の方にキズ痕はあったが、どうみてもロバートの顔ではない。
「誰だ。こいつ?」
その男は、山に住む木こりで、1年ほど前に誤って川に落ち、頭にけがをしたという。ホっとするような?ガッカリするような?でも、暗殺してしまったので、事故死ということで処理することにした。
まったくロバートの奴め、生きているなら逃げていないで、さっさと出てこい!
引き続き、部下にロバートの行方を探させることに余念がない。
それからというものクレメンタインの事故現場でけがをしたと思われる若い男性狩りが行われたが、いずれも別人であることがわかる。
これは、ひょっとすれば、ひょっとするかも?しれない。これだけ探してもいないということは、すでに事故現場を離れて、どこかに隠れているに違いない。
ロバート探索網をどんどん広げるにつれ、もはや若い男性狩りの状態になっていく。突然、自分の恋人や夫が憲兵隊に連れ去られ、帰らぬ姿になることに不安を感じた若い女性たちが立ち上がり騒ぎになる。その騒ぎは王都にまで波及し、ついにロアンヌの知るところとなってしまったのだ。
「なんですって!ロバート様のご遺体が発見されていないとは、まことのことなのでしょうか?それで……若い男性を片っ端から捕まえて、少しでも怪しいと感じたら殺しているとは……どういうことか、ハッキリ説明してくださいませ!」
「いや、それは違うのだ。わざと殺しているわけではない。たまたま、事故で亡くなっている者がほとんどなのだ。皆、必死にロバートの行方を案じ、探しているのだ。それだけは信じてくれ」
「それならば、あのお手紙はやはりロバート様からのお手紙だったということでしょうか……、ロバート様、どうかわたくしをお許しくださいませ」
「もういい!ロアンヌが気に病むから黙っていたのだ。他意はない」
リチャードは内心舌打ちをしている。早くロバートを始末しなければ、でないとロアンヌが持たない。
ロバートからのロミオメールが来てから、ロクなことはない。治安は悪化するし、民衆の心は離れていく。イソフラボンはクーデターを起こしそうになるが未然に防げたから良いようなもの。
そうこうしているうちに、ロアンヌの2度目の出産の日を迎える。今度も、また男の子の誕生で、第2王子はフランシスコと名付けられる。
第2王子の出産を無事終えたことに対するご褒美として、ロアンヌは、しばらくの間、実家に帰ることを赦されるようになった。今のところ、盗賊騒ぎも一段落したということもあるが、しばらくカラダを休めるためと、それからもう一つの意味として、実家に帰ったロアンヌを目当てにロバートが近づいてくる可能性があったから、そこを捕まえれば、一石二鳥になると踏んだ。
王都のタウンハウスの方ではなく、ロアンヌが選んだのは領地。クロイセン領地に向けて、馬車は動き出す。この前、領地へ行ったときは、新婚旅行で、ウイリアムとリチャードと3人で行ったのだが、今回のお里帰りは、ロアンヌ一人だけの行幸となり、少々寂しさを感じるものの、領地の空気を吸った途端、そんな考えは吹き飛んでしまう。
「やっぱり、クロイセンの空気は、美味しいわ」
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