10 / 27
10.
しおりを挟む
伝書鳩を追跡した結果、ユーラシア方面でプツリと姿が見えなくなってしまう。てっきりオセアニアに向かっていると思われていたが、予期せぬユーラシアで、混乱してしまう。
「どうなっているのだ?」
カトリーヌは、行商に行っている最中だが、調べによるとここ一年の間、オセアニアを一歩も出ていないという。
これは操作をかく乱するために、わざとユーラシアに向かったのではないかという憶測が飛び交う。
それでは、最初から手紙を受け取る気がないのでユーラシアから送ったとでもいうのか?でも、誰がどうやって、オセアニアにいることを隠すために、ユーラシアから送ったというのか?
共犯者がいるのか?はたまた第三の人物がいて、それが真犯人というのかわからない。
犯人に一番近いと思われていたカトリーヌの線が消えかかっている。
カトリーヌが疑われるようにし向けている節も無きにしも非ず、というところか。
でも、それならいったい誰が何のために?という最初の疑問が起こる。
たまたま、ロアンヌのことを「ロロ」という愛称で呼んでいたことを知っている誰かの仕業であることは間違いない。
今のところ、モントリオール家の関係者かロバートの関係者のいずれかだと思われるが、操作の網をもっと広げるべきか思案している。
せっかくの楽しい新婚旅行も気分的に台無しだが、ロアンヌには、そのことを言わず平静を保っている。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
その夜、ロアンヌは、夢を見た。
夢の中では、まだロバートが在りし日の姿で、ロアンヌに愛を囁いている。
「ロロ、ほらほらこっちだよ。早く早く来て」
「待って。ロビー(ロバートの愛称)」
どこかのお花畑に来ているみたいな風景。でも、行ったことがない場所だと思った。
「愛しているよロロ。いつまでも、ずっといつまでも。だからいつでも、僕のところへ戻っておいで」
「え?」
これは夢だとわかっていても、思わずロアンヌは、夢の中で立ち止まってしまう。このフレーズ……「いつでも戻っておいで」って、あのロミオメールと同じではないの!?
「アナタ、誰?」
「なに、言っているんだよ?婚約者の顔も忘れてしまったのかい?それとも、俺を裏切って、王子に寝返ったことで、俺のことを忘れたとでも言いたいのか!この売女が!裏切り者!」
「違うわっ!わたくしは、ロビーを裏切ったことなどないわっ!」
「リチャードと寝て、その子まで産んだお前が何を言い訳する気だ。お前は俺のモノだ。俺の女だ。それをリチャードにカラダを開きやがって……っははん。貴様は娼婦と同じことをしたのだぞ?娼婦なら跪いて、俺を慰めてみろよ」
「許して……そんなつもりではなかったの。ただ、ロビーが死んだと聞かされて、学園を卒業したら、どこかに妾奉公に行くか……修道院に入るかの選択を迫られて、だから仕方がなかったのよ。本当よ。それに、殿下のところも最初は、側室として王室に入るということだったから承知したのよ」
「は!?リチャードは前から、ロアンヌのことを狙っていたのさ。俺が死んだことをいいことにして、ロアンヌを俺から掠め取ろうとしたのさ。それも単なる性欲処理としてだと!?ふざけるな!」
「違うのよ。殿下がわたくしを側室にとおっしゃったことには訳があって、殿下の婚約者だったクリスティーヌ様が学園でわたくしにさんざんな嫌がらせをしてきて、それがどんどんエスカレートしていき、命まで狙われそうになってしまったのよ。それで王室の一員になれば、敬語が突くので安全だと言われて……だから、修道院へ行くよりはマシかもしれないと思って、それで……」
「ロアンヌ、いくら公爵令嬢だとしても、世間知らずもいいところだな。クリスティーヌとリチャードは、学園に入る頃には、もう男と女の関係にあったよ。クリスティーヌの感度が悪いとリチャードがよくこぼしていた。だから、クリスティーヌに嫌がらせを受けたのだとどうして気づかなかったんだ?」
「え……、うそ、そんな……」
「仮にも、リチャードは王太子だぞ。あまたの女と関係があっても、みんな黙っているぞ。それこそ、女とはヤりたい放題、より取り見取りのご身分だ。それをわざわざロアンヌに目を付けた理由は、ロアンヌのカラダ目的だったということさ。でもさ、子供を産んだロアンヌにもう利用価値はないと思っているよ。だから、俺のところに戻っておいでと言っているんじゃないか」
言われてみれば、つじつまが合っているような、会っていないような?夢の中のことだから、こんなに激しく言い合っても、どこかスッキリしない気分ではある。
ロバートの言うとおり、捨てられるのかもしれない。だから、今頃になって、新婚旅行といいだされたのかもしれない。どんどん思考が悪い方向へ行ってしまう。
ウイリアムを連れてきたのも、ひょっとしたら殿下は、もう他の女性に目が映ってしまっていて、クロイセン家にウイリアムを押し付ける気で、新婚旅行に連れてきたのかもしれない。
「どうなっているのだ?」
カトリーヌは、行商に行っている最中だが、調べによるとここ一年の間、オセアニアを一歩も出ていないという。
これは操作をかく乱するために、わざとユーラシアに向かったのではないかという憶測が飛び交う。
それでは、最初から手紙を受け取る気がないのでユーラシアから送ったとでもいうのか?でも、誰がどうやって、オセアニアにいることを隠すために、ユーラシアから送ったというのか?
共犯者がいるのか?はたまた第三の人物がいて、それが真犯人というのかわからない。
犯人に一番近いと思われていたカトリーヌの線が消えかかっている。
カトリーヌが疑われるようにし向けている節も無きにしも非ず、というところか。
でも、それならいったい誰が何のために?という最初の疑問が起こる。
たまたま、ロアンヌのことを「ロロ」という愛称で呼んでいたことを知っている誰かの仕業であることは間違いない。
今のところ、モントリオール家の関係者かロバートの関係者のいずれかだと思われるが、操作の網をもっと広げるべきか思案している。
せっかくの楽しい新婚旅行も気分的に台無しだが、ロアンヌには、そのことを言わず平静を保っている。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
その夜、ロアンヌは、夢を見た。
夢の中では、まだロバートが在りし日の姿で、ロアンヌに愛を囁いている。
「ロロ、ほらほらこっちだよ。早く早く来て」
「待って。ロビー(ロバートの愛称)」
どこかのお花畑に来ているみたいな風景。でも、行ったことがない場所だと思った。
「愛しているよロロ。いつまでも、ずっといつまでも。だからいつでも、僕のところへ戻っておいで」
「え?」
これは夢だとわかっていても、思わずロアンヌは、夢の中で立ち止まってしまう。このフレーズ……「いつでも戻っておいで」って、あのロミオメールと同じではないの!?
「アナタ、誰?」
「なに、言っているんだよ?婚約者の顔も忘れてしまったのかい?それとも、俺を裏切って、王子に寝返ったことで、俺のことを忘れたとでも言いたいのか!この売女が!裏切り者!」
「違うわっ!わたくしは、ロビーを裏切ったことなどないわっ!」
「リチャードと寝て、その子まで産んだお前が何を言い訳する気だ。お前は俺のモノだ。俺の女だ。それをリチャードにカラダを開きやがって……っははん。貴様は娼婦と同じことをしたのだぞ?娼婦なら跪いて、俺を慰めてみろよ」
「許して……そんなつもりではなかったの。ただ、ロビーが死んだと聞かされて、学園を卒業したら、どこかに妾奉公に行くか……修道院に入るかの選択を迫られて、だから仕方がなかったのよ。本当よ。それに、殿下のところも最初は、側室として王室に入るということだったから承知したのよ」
「は!?リチャードは前から、ロアンヌのことを狙っていたのさ。俺が死んだことをいいことにして、ロアンヌを俺から掠め取ろうとしたのさ。それも単なる性欲処理としてだと!?ふざけるな!」
「違うのよ。殿下がわたくしを側室にとおっしゃったことには訳があって、殿下の婚約者だったクリスティーヌ様が学園でわたくしにさんざんな嫌がらせをしてきて、それがどんどんエスカレートしていき、命まで狙われそうになってしまったのよ。それで王室の一員になれば、敬語が突くので安全だと言われて……だから、修道院へ行くよりはマシかもしれないと思って、それで……」
「ロアンヌ、いくら公爵令嬢だとしても、世間知らずもいいところだな。クリスティーヌとリチャードは、学園に入る頃には、もう男と女の関係にあったよ。クリスティーヌの感度が悪いとリチャードがよくこぼしていた。だから、クリスティーヌに嫌がらせを受けたのだとどうして気づかなかったんだ?」
「え……、うそ、そんな……」
「仮にも、リチャードは王太子だぞ。あまたの女と関係があっても、みんな黙っているぞ。それこそ、女とはヤりたい放題、より取り見取りのご身分だ。それをわざわざロアンヌに目を付けた理由は、ロアンヌのカラダ目的だったということさ。でもさ、子供を産んだロアンヌにもう利用価値はないと思っているよ。だから、俺のところに戻っておいでと言っているんじゃないか」
言われてみれば、つじつまが合っているような、会っていないような?夢の中のことだから、こんなに激しく言い合っても、どこかスッキリしない気分ではある。
ロバートの言うとおり、捨てられるのかもしれない。だから、今頃になって、新婚旅行といいだされたのかもしれない。どんどん思考が悪い方向へ行ってしまう。
ウイリアムを連れてきたのも、ひょっとしたら殿下は、もう他の女性に目が映ってしまっていて、クロイセン家にウイリアムを押し付ける気で、新婚旅行に連れてきたのかもしれない。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
戦いから帰ってきた騎士なら、愛人を持ってもいいとでも?
新野乃花(大舟)
恋愛
健気に、一途に、戦いに向かった騎士であるトリガーの事を待ち続けていたフローラル。彼女はトリガーの婚約者として、この上ないほどの思いを抱きながらその帰りを願っていた。そしてそんなある日の事、戦いを終えたトリガーはフローラルのもとに帰還する。その時、その隣に親密そうな関係の一人の女性を伴って…。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
(完)愛人を作るのは当たり前でしょう?僕は家庭を壊したいわけじゃない。
青空一夏
恋愛
私は、デラックス公爵の次男だ。隣国の王家の血筋もこの国の王家の血筋も、入ったサラブレッドだ。
今は豪商の娘と結婚し、とても大事にされていた。
妻がめでたく懐妊したので、私は妻に言った。
「夜伽女を3人でいいから、用意してくれ!」妻は驚いて言った。「離婚したいのですね・・・・・・わかりました・・・」
え? なぜ、そうなる? そんな重い話じゃないよね?
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
(完結)戦死したはずの愛しい婚約者が妻子を連れて戻って来ました。
青空一夏
恋愛
私は侯爵家の嫡男と婚約していた。でもこれは私が望んだことではなく、彼の方からの猛アタックだった。それでも私は彼と一緒にいるうちに彼を深く愛するようになった。
彼は戦地に赴きそこで戦死の通知が届き・・・・・・
これは死んだはずの婚約者が妻子を連れて戻って来たというお話。記憶喪失もの。ざまぁ、異世界中世ヨーロッパ風、ところどころ現代的表現ありのゆるふわ設定物語です。
おそらく5話程度のショートショートになる予定です。→すみません、短編に変更。5話で終われなさそうです。
魔女と呼ばれ処刑された聖女は、死に戻り悪女となる
青の雀
恋愛
この世の幸せをすべて独り占めしていたかのようなアンジェリーヌ・マキャベリ公爵令嬢。美人で頭脳明晰、気立てが良く愛くるしさも武器として備え持っていた。
その上、家族仲もよく、婚約者の王太子殿下にも愛され、結婚式を間近となっていたのだ。
しかし、魅了魔法を操る聖女様を名乗る魔女リリアーヌが現れてから、アンジェリーヌの生活は一変してしまう。
家族も婚約者も友人も、アンジェリーヌの美しさもすべて奪われてしまう。
魔女は、大勢の人から愛されるアンジェリーヌのことが羨ましくて仕方がなかったことから、アンジェリーヌを目の敵にして、何もかも奪ったうえで、辱めを与え、生きる気力さえも奪ってしまう。
さらに、こともあろうに、聖女様に覚醒しかけたアンジェリーヌを「魔女」の汚名を着せ、断頭台に送る。
物語は、アンジェリーヌの処刑場面からスタートし、時間が巻き戻り改装場面を入れながら、2度目の人生を自由に闊歩させたいと願っています。
リリアーヌと対峙できるだけの悪女になり、家族、国家、民衆に対して壮大なざまあをしていく話にしたいと思っています。
R15は残酷胸糞表現のための保険
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる