星の数ほど出会いはあるが、一番星はアナタだけ。鈍感令嬢の一途な恋物語

青の雀

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 それから瞬く間に月日は流れ、3年生になりました。今年初めてジョージ様と同じクラスになりました。嬉しい。アナスターシアの警備の都合上、王子と同じクラスのほうが何かと便利であると父オルブライト公爵が学園に掛け合って実現したのである。

 同じクラスになったからと言って、素知らぬ態度は相変わらずで二人が密かに付き合っていることなど誰も知る由がない。

 アナスターシアの机の上には、やはり新入生から、そして今度同じクラスになった男子生徒からのプレゼントが山のように置かれている。

 同じクラスと言っても、ジョージ様のところは、いつも女子生徒の人だかりができていて、近寄れないが、アナスターシアのところは、男子生徒と教職員が親衛隊よろしくガッチリ固めていてくれている。

 一つの教室に、ふたつの人だかりができている状態で、ひとつはジョージアを中心とする女子生徒の集まりと、もう一つはアナスターシアを中心とする男子生徒の集まりである。

 待ち伏せされることはあっても、襲われることはない。事前にかげが始末してくれるからである。アナスターシアに対しての誹謗中傷もめっきり鳴りを潜めた。これは、どういうふうに始末しているのかわからないが、とにかく平穏な学園生活を迎えることができたので良かった。

 ある日の昼下がり、いつもの取り巻きの男子生徒と教職員でカフェにて、お茶していたところ、ひとりの公爵令嬢がアナスターシアに面会を求めてきたのである。

 「わたくしにご用とは、なんでございましょうか?」

 「わたくし、エレノア・マンダリンと申します。実は、第3王子様のジョージ様と婚約の話が来ているのですが、ご存知でございますか?」

 ジョージがエレノア様と婚約!? アナスターシアは内心動揺するが、平然と

 「いいえ、存じ上げませんが、それとわたくしがどういう関係があると思われていらっしゃるのでしょうか?」

 「いえ、オルブライトの令嬢がいつまでも婚約者がいらっしゃらないのは、ジョージ様とのことがおありなのかと思いまして。」

 「無礼であるぞ!王家とオルブライト家の確執をなんと心得ている!」

 教職員が口をはさんでくれた。

 「いえ、決してそのような、それではアナスターシア様は、ジョージ様のことは何とも思っていらっしゃらないのですね。安心しました。これで心置きなく婚約ができますわ。」

 言うだけ言って、エレノア嬢はさっさとカフェを出て行ったのである。

 残されたアナスターシアは、小首をかしげるばかり。エレノア嬢は何を言いたかったのか?

 男子生徒や教職員は、「なんて無礼な女だ。」

「アナスターシア嬢がジョージ殿下と関係などあるはずなかろう。」

 憤慨しているのだ。

 やっぱり、同じクラスはまずかった?わたくし達二人の気持ちは決まっているので、何があろうともジョージ様を信じるだけ。

 しばらくすると学園内で、ジョージ殿下とエレノア・マンダリン嬢が婚約したという噂でもちきりになるが、ジョージ殿下が素知らぬ顔をされているので、アナスターシアは何も聞かない。

 相変わらず、週に一度のお茶会はある。王妃殿下のお茶会にも時々呼んでもらっているが、だれも婚約話のことを仰らないから、アナスターシアは耳にふたをしている。

 そうすると学園内で、明らかに異変が起きてきたのであった。それは、アナスターシアは見聞きしていないが、女子生徒の反感をエレノア嬢が一心に買ってしまったようで、ことごとくエレノア嬢につっかかる女子生徒が増えてきたのだ。相当酷い嫌がらせを受けている様子で、でも本当にジョージ様の婚約者であれば、王家のかげが守るはずなのだが、かげが暗躍している風ではない。

 とうとう、エレノア嬢は、階段から落ちてしまわれて帰らぬ人となりました。
 犯人は、すぐ捕まった。男爵令嬢だったらしく、ジョージ様に思いを寄せていたのだが、エレノア嬢が「自分がジョージ様の婚約者だ。」と言っていることに腹を立て、手に掛けてしまったそうです。

 階段の実行犯は、男爵令嬢であったが、嫌がらせをしていた生徒は、まだ捕まっていない。王子様の婚約者になるって、命懸けね。みんなそうまでして玉の輿に乗りたいのかしらね。

 エレノア嬢が亡くなり、明らかになったことはと言えば、エレノア嬢は、ジョージ様と婚約していなかったということ。マンダリン公爵が王家にねじ込んで婚約させようとしていたことは事実であるが、王家は上の兄が二人独身なのに、婚約はできないと突っぱねていたそうです。

 やっぱり、ジョージ様に何も聞かなくて、良かった。もしも聞いていたらあさましい女だと思われていたかもしれない。

 次のお茶会の時もジョージ様は、素知らぬ顔をしてわが家へ来られた。いつもの変装をして、

「ビックリさせてしまって、ごめんね。」

 そう言って、アナスターシアの頭にキスを落とす。

 「昔から、王族が学園に通っていると、ああいうことがしょっちゅうあるんだよ。でもアナスターシア嬢が騒ぎ立てなくて、安心したよ。もしアナスターシアが、何か聞いてこられたら、って思ってドキドキした。母上もこの前のお茶会でアナスターシアが何も言わないから、肝が据わった娘だって。王族と結婚する器だって、言ってたよ。」

 え?結婚?嬉しいけど、嬉しい。わたくしに務まるのかしら?時期が来たら、結婚できるのかしら?

 期待と不安で、アナスターシアは、そっと目を瞑る。
 待ち構えたように、ジョージが唇を重ねる。
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