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アナスターシアをお茶会に誘ってから、あの時はたくさん喋れたが、学園では近づくこともままならない状態であった。ジョージは、よりいっそう恋心が募るが、こればかりはどうしようもない。また、母に頼んでお茶会に呼んでもらおうか?
そんな時、偶然、教室移動の際、学園内の廊下ですれ違うことがあったのである。
このチャンスを逃してはいけないとばかりに、ジョージは
「やあ、しばらく!」
アナスターシアは、頬を赤らめ
「その節は、お世話になりました。」
返事をしてもらえたのはいいが、その後、アナスターシアの取り巻きの男子生徒や教職員から質問攻めにあってしまったのだ。まるで、つるし上げのように。
「なぜ?クラスも違う王子様に声をかけられ、アナスターシア嬢が頬を赤らめたのか?彼女に何をした?」
「なにが?『しばらく』か、とくと聞かせてもらいたい。」
「アナスターシア嬢といつ、会ったのだ?」
「オルブライト家と王家との確執を知っているだろう。アナスターシア嬢に近づくな!」
「「「「「え?確執?」」」」」
「ああ、君たち生徒は知らないだろうが、オルブライト家の三女スカーレット嬢と王太子殿下が婚約破棄をされてから、四女ステファニーと第2王子殿下とも仲が悪くなって、婚約解消された経緯があるんだよ。」
「だいたい、生まれる前からの婚約者を男爵令嬢と浮気した挙句、学園内のカフェで罵倒したんだよなぁ、ジョージ殿下の兄上は。あの時は、王家にも学園にも抗議が寄せられ、対応に苦慮したものだ。」
「これ以上、王族がオルブライト家の令嬢に近づくことは、学園として許さない。学園長からきつく申し渡されているのである。とっとと消え失せろ!」
「この件について、学園長に報告することはもちろん、オルブライト公爵様に報告するから、覚悟するがいい。」
ジョージは、ショックだった。それで父上も母上もオルブライト家の令嬢であることを言うと、言い淀んでいたのか?兄上2人のせいで、アナスターシアに近づくことも出来ないとは……、死刑宣告を受けたことよりもつらかったのである。
この前、お茶会で誘いに行ったときは、公爵閣下から何も言われなかったが、今日、声掛けしたことを責められ、最悪、学園から追い出されるかもしれないと暗い気持ちになる。もう、お茶会の誘いを母からしてもらっても、応じてくれないだろう。
ジョージは、帰宅してから、両親に学園の廊下ですれ違いざまにアナスターシアに声掛けしたことを言い、ひょっとしたら、退学になるかもしれないと話した。
「まぁ、王族を退学させるようなことにはならないだろうが、くれぐれもアナスターシア嬢とのことは慎重にな。どこか、留学でもするか?」
「ええ!アナスターシア嬢と同じ空気を吸っていたいです。」
「そこまで……惚れてしまったか。」
「陛下、アナスターシア嬢は、素直でいいお嬢様ですわよ。大人同士の評価より、ずっといい子ですわ。できれば、あの娘を義理でも娘にしたいですわ。」
「うーむ。オルブライトがどう出るかだな?もしもオルブライト家から、学園に抗議があれば留学してもらうことになるぞ。」
「はい。承知いたしました。その時は観念いたします。」
そんな話になっているとは、つゆ知らずアナスターシアは、ジョージに声をかけてもらい嬉しく思っているのだ。なんて、ステキな王子様なのかしら。王妃様も威厳があって立派な方でしたわ。また、お茶会に誘ってもらえないかしらね。楽しみだわ。
父が帰宅してから、執務室に呼ばれ
「ジョージ殿下とは、仲良くしているのかい?」
ふいに、聞かれてびっくりするも、顔を赤らめて、
「はい。今日、学園の廊下ですれ違いざまに声をかけてくださいましたわ。とてもステキな方です。『やぁ、しばらく』って一言だけでしたけど、わたくしのことを覚えていてくださったんだなぁと嬉しくて。」
「そうか、良かったな。」
少し寂しげな表情で微笑まれた。愛娘が年頃になってきたのが複雑なのだろう。
それから、アナスターシアは、2年生に進級した。クラス替えがあったけど、この時も待ち望んだジョージ様とは同じクラスになれなくて、すこしションボリしたのもつかの間、クラス替えで初めて会う男子生徒と新入生の男子生徒からの待ち伏せやプレゼント攻勢に辟易していたのである。
せめて、ジョージ様と同じクラスなら、あの方が守ってくださるのに。
1年ぶりに王妃殿下からお茶会のお誘いがかかり、アナスターシアは、ウキウキしている。また、ジョージ殿下が送迎をしてくださるのだ。
ジョージは緊張しながら、公爵家を訪れている。一年前と同じように応接室で紅茶を飲んでいると、オルブライト公爵閣下が顔を出されて、
文句でも言われるのかとハラハラしていたら
「今日は、娘を頼みます。」
「大丈夫です。お嬢様のことは一命に替えても守り抜きます。」
「あはは、あの娘は世間知らずだからな。そう言ってもらえて安心して娘を任せられるよ。」
笑って、公爵閣下は、部屋を出て行かれる。入れ替わりにアナスターシアが入ってきて、公爵との対面により緊張していた汗が噴き出る。
「まぁ!すごい汗ですわね。よろしければ、湯あみでもなさいます?」
「いや、御父上と挨拶していただけで、緊張してしまったようだ。」
このままでいいというジョージに無理やり、湯あみをさせるアナスターシア。だって、いい男ぶりが半減しちゃうんだもん。
その様子を父オルブライトは、微笑ましく眺めている。第3王子はなかなかに誠実なイイ男だな。このまま順調に愛を育んでくれればいい。
アナスターシアは、王妃様のお茶会に行けなくとも、ジョージ様との二人だけのお茶会でも満足しているのだから、ジョージ様といつでも一緒にいられたらいいのだけど、なんといっても相手は王子様。
そんな時、偶然、教室移動の際、学園内の廊下ですれ違うことがあったのである。
このチャンスを逃してはいけないとばかりに、ジョージは
「やあ、しばらく!」
アナスターシアは、頬を赤らめ
「その節は、お世話になりました。」
返事をしてもらえたのはいいが、その後、アナスターシアの取り巻きの男子生徒や教職員から質問攻めにあってしまったのだ。まるで、つるし上げのように。
「なぜ?クラスも違う王子様に声をかけられ、アナスターシア嬢が頬を赤らめたのか?彼女に何をした?」
「なにが?『しばらく』か、とくと聞かせてもらいたい。」
「アナスターシア嬢といつ、会ったのだ?」
「オルブライト家と王家との確執を知っているだろう。アナスターシア嬢に近づくな!」
「「「「「え?確執?」」」」」
「ああ、君たち生徒は知らないだろうが、オルブライト家の三女スカーレット嬢と王太子殿下が婚約破棄をされてから、四女ステファニーと第2王子殿下とも仲が悪くなって、婚約解消された経緯があるんだよ。」
「だいたい、生まれる前からの婚約者を男爵令嬢と浮気した挙句、学園内のカフェで罵倒したんだよなぁ、ジョージ殿下の兄上は。あの時は、王家にも学園にも抗議が寄せられ、対応に苦慮したものだ。」
「これ以上、王族がオルブライト家の令嬢に近づくことは、学園として許さない。学園長からきつく申し渡されているのである。とっとと消え失せろ!」
「この件について、学園長に報告することはもちろん、オルブライト公爵様に報告するから、覚悟するがいい。」
ジョージは、ショックだった。それで父上も母上もオルブライト家の令嬢であることを言うと、言い淀んでいたのか?兄上2人のせいで、アナスターシアに近づくことも出来ないとは……、死刑宣告を受けたことよりもつらかったのである。
この前、お茶会で誘いに行ったときは、公爵閣下から何も言われなかったが、今日、声掛けしたことを責められ、最悪、学園から追い出されるかもしれないと暗い気持ちになる。もう、お茶会の誘いを母からしてもらっても、応じてくれないだろう。
ジョージは、帰宅してから、両親に学園の廊下ですれ違いざまにアナスターシアに声掛けしたことを言い、ひょっとしたら、退学になるかもしれないと話した。
「まぁ、王族を退学させるようなことにはならないだろうが、くれぐれもアナスターシア嬢とのことは慎重にな。どこか、留学でもするか?」
「ええ!アナスターシア嬢と同じ空気を吸っていたいです。」
「そこまで……惚れてしまったか。」
「陛下、アナスターシア嬢は、素直でいいお嬢様ですわよ。大人同士の評価より、ずっといい子ですわ。できれば、あの娘を義理でも娘にしたいですわ。」
「うーむ。オルブライトがどう出るかだな?もしもオルブライト家から、学園に抗議があれば留学してもらうことになるぞ。」
「はい。承知いたしました。その時は観念いたします。」
そんな話になっているとは、つゆ知らずアナスターシアは、ジョージに声をかけてもらい嬉しく思っているのだ。なんて、ステキな王子様なのかしら。王妃様も威厳があって立派な方でしたわ。また、お茶会に誘ってもらえないかしらね。楽しみだわ。
父が帰宅してから、執務室に呼ばれ
「ジョージ殿下とは、仲良くしているのかい?」
ふいに、聞かれてびっくりするも、顔を赤らめて、
「はい。今日、学園の廊下ですれ違いざまに声をかけてくださいましたわ。とてもステキな方です。『やぁ、しばらく』って一言だけでしたけど、わたくしのことを覚えていてくださったんだなぁと嬉しくて。」
「そうか、良かったな。」
少し寂しげな表情で微笑まれた。愛娘が年頃になってきたのが複雑なのだろう。
それから、アナスターシアは、2年生に進級した。クラス替えがあったけど、この時も待ち望んだジョージ様とは同じクラスになれなくて、すこしションボリしたのもつかの間、クラス替えで初めて会う男子生徒と新入生の男子生徒からの待ち伏せやプレゼント攻勢に辟易していたのである。
せめて、ジョージ様と同じクラスなら、あの方が守ってくださるのに。
1年ぶりに王妃殿下からお茶会のお誘いがかかり、アナスターシアは、ウキウキしている。また、ジョージ殿下が送迎をしてくださるのだ。
ジョージは緊張しながら、公爵家を訪れている。一年前と同じように応接室で紅茶を飲んでいると、オルブライト公爵閣下が顔を出されて、
文句でも言われるのかとハラハラしていたら
「今日は、娘を頼みます。」
「大丈夫です。お嬢様のことは一命に替えても守り抜きます。」
「あはは、あの娘は世間知らずだからな。そう言ってもらえて安心して娘を任せられるよ。」
笑って、公爵閣下は、部屋を出て行かれる。入れ替わりにアナスターシアが入ってきて、公爵との対面により緊張していた汗が噴き出る。
「まぁ!すごい汗ですわね。よろしければ、湯あみでもなさいます?」
「いや、御父上と挨拶していただけで、緊張してしまったようだ。」
このままでいいというジョージに無理やり、湯あみをさせるアナスターシア。だって、いい男ぶりが半減しちゃうんだもん。
その様子を父オルブライトは、微笑ましく眺めている。第3王子はなかなかに誠実なイイ男だな。このまま順調に愛を育んでくれればいい。
アナスターシアは、王妃様のお茶会に行けなくとも、ジョージ様との二人だけのお茶会でも満足しているのだから、ジョージ様といつでも一緒にいられたらいいのだけど、なんといっても相手は王子様。
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