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待ち合わせの場所に5分前に着いたが、それらしき人物はいない。周りは若いカップルばかりで、30代の男性などいないようだ。
あれ?早かったのかな?それとも、やっぱり騙された?AIなんて信用するのではなかった。
待ち合わせ時間まで後5分なのに、なんだかとてもみじめで悲しくなってくる。AIでマッチングされてからというもの、別に期待はしていないと言いながらもエステに行って、ヘアアレンジを習うなど、できることは全部やってきたつもりなのに、ドタキャンするなら、せめて連絡くらいよこせよ。
婚活パーティで、若い子たちが「いい条件のオトコを獲得するためには、若いうちでないとできない」と言っていた言葉が甦る。
やっぱりね。もう30歳過ぎでは、普通に出会いなんてないのだと諦めてしまう。
いつまで待っても来ない相手を待ち続けるほどヒマ人ではない。
さっさと帰ろうと思い、スマホの画面を閉じて、駅の方へ向かおうとしたところ、不意に後ろから声がかかった。
今まで待っていた柱の隣にいた男性からで、ビックリするも、この人も待ち合わせ相手が来なくて、ナンパ目的で声をかけられたものだとばかり思って、思わず身構える。
「すいません。さっき、隣に立っていたものなんですが……、ひょっとして美鈴さんですか?」
「へ?……はい、美鈴です」
「あ、やっぱり、写真よりもずっとお綺麗な方だったので、違ったら失礼かと思って、声をかけそびれていましたが、声をかけて、よかったです」
「え……と?」
「あっ!申し遅れました。医師の徳永正憲です。はじめまして」
徳永さんは、言いながら名刺を差し出してきた。
その名刺には「東都医科大学附属病院 医師 徳永正憲」とあった。
「OLの美鈴です。苗字は勘弁してください」
「ああ、いいですよ。いろいろ事情がありますもんね。お待たせしてしまって、すみませんでした」
「あ、いいえ。こちらこそ、正憲さんが近くにいらっしゃるのに、全然気づけなかった私にも責任がありますので」
フルネームを出したら、実家が大病院だということがバレてしまう。
「とにかく、どこかで座りましょうか?今日の映画まで、まだ時間がありますので」
「はい。ありがとうございます」
美鈴は、さっきまでのみじめな気分が吹き飛んでしまう。
適当に入ったカフェで、ミックスジュースを注文する。徳永医師は、コーヒーと無難なオーダーである。
「徳永先生のご専門は、何ですか?研究医ですか?それとも臨床医でしょうか?」
「美鈴さんは、医者のことにお詳しいようですが、私は、研究医を目指しています。大学へは奨学金でいったものですから、本当は臨床医をして稼がないといけないのですが……ね」
「へー。優秀なんですね。」
「いや、それほどでも」
その時になぜかデジャヴを感じてしまった。アレ、徳永先生を知っているような気がする?気のせいか?父の病院に研修医として来ていた?でも、あまり研修医の先生とは合わないようにしていたから、違うかもしれない。
研修医は、私が跡取り娘だとわかった途端、異常なまでの媚を売ってくるので、苦手なのだ。
でも、確かにどこかで会ったような気がする。モヤモヤした気持ちのままで、映画館に着くと、すでに指定席を予約していてくださっていた。お医者さんて、こういうところがスマートなんだけど、どうして、まだ独身でいらっしゃるのかしら?
徳永先生は、とても涼しい目をしていらっしゃって……、そこでハっと気づく。初恋の相手と同じ目をしていたからデジャヴを感じてしまったのだと。
AIグッジョブね。こんなことまでアンケートに書いた記憶がないのに、まさに美鈴好みの相手を選んでくれるなんて、嬉しくなってくる。
映画の後は、食事で、他愛ない話をする。さっき観た映画の話や感想など、それから普段は何をしているとか……とりとめもない話をしているが、とても楽しい気分になった。これなら、また会ってもいいかな?と思えたので、帰宅してから、AIに返事をしといた。
あれ?早かったのかな?それとも、やっぱり騙された?AIなんて信用するのではなかった。
待ち合わせ時間まで後5分なのに、なんだかとてもみじめで悲しくなってくる。AIでマッチングされてからというもの、別に期待はしていないと言いながらもエステに行って、ヘアアレンジを習うなど、できることは全部やってきたつもりなのに、ドタキャンするなら、せめて連絡くらいよこせよ。
婚活パーティで、若い子たちが「いい条件のオトコを獲得するためには、若いうちでないとできない」と言っていた言葉が甦る。
やっぱりね。もう30歳過ぎでは、普通に出会いなんてないのだと諦めてしまう。
いつまで待っても来ない相手を待ち続けるほどヒマ人ではない。
さっさと帰ろうと思い、スマホの画面を閉じて、駅の方へ向かおうとしたところ、不意に後ろから声がかかった。
今まで待っていた柱の隣にいた男性からで、ビックリするも、この人も待ち合わせ相手が来なくて、ナンパ目的で声をかけられたものだとばかり思って、思わず身構える。
「すいません。さっき、隣に立っていたものなんですが……、ひょっとして美鈴さんですか?」
「へ?……はい、美鈴です」
「あ、やっぱり、写真よりもずっとお綺麗な方だったので、違ったら失礼かと思って、声をかけそびれていましたが、声をかけて、よかったです」
「え……と?」
「あっ!申し遅れました。医師の徳永正憲です。はじめまして」
徳永さんは、言いながら名刺を差し出してきた。
その名刺には「東都医科大学附属病院 医師 徳永正憲」とあった。
「OLの美鈴です。苗字は勘弁してください」
「ああ、いいですよ。いろいろ事情がありますもんね。お待たせしてしまって、すみませんでした」
「あ、いいえ。こちらこそ、正憲さんが近くにいらっしゃるのに、全然気づけなかった私にも責任がありますので」
フルネームを出したら、実家が大病院だということがバレてしまう。
「とにかく、どこかで座りましょうか?今日の映画まで、まだ時間がありますので」
「はい。ありがとうございます」
美鈴は、さっきまでのみじめな気分が吹き飛んでしまう。
適当に入ったカフェで、ミックスジュースを注文する。徳永医師は、コーヒーと無難なオーダーである。
「徳永先生のご専門は、何ですか?研究医ですか?それとも臨床医でしょうか?」
「美鈴さんは、医者のことにお詳しいようですが、私は、研究医を目指しています。大学へは奨学金でいったものですから、本当は臨床医をして稼がないといけないのですが……ね」
「へー。優秀なんですね。」
「いや、それほどでも」
その時になぜかデジャヴを感じてしまった。アレ、徳永先生を知っているような気がする?気のせいか?父の病院に研修医として来ていた?でも、あまり研修医の先生とは合わないようにしていたから、違うかもしれない。
研修医は、私が跡取り娘だとわかった途端、異常なまでの媚を売ってくるので、苦手なのだ。
でも、確かにどこかで会ったような気がする。モヤモヤした気持ちのままで、映画館に着くと、すでに指定席を予約していてくださっていた。お医者さんて、こういうところがスマートなんだけど、どうして、まだ独身でいらっしゃるのかしら?
徳永先生は、とても涼しい目をしていらっしゃって……、そこでハっと気づく。初恋の相手と同じ目をしていたからデジャヴを感じてしまったのだと。
AIグッジョブね。こんなことまでアンケートに書いた記憶がないのに、まさに美鈴好みの相手を選んでくれるなんて、嬉しくなってくる。
映画の後は、食事で、他愛ない話をする。さっき観た映画の話や感想など、それから普段は何をしているとか……とりとめもない話をしているが、とても楽しい気分になった。これなら、また会ってもいいかな?と思えたので、帰宅してから、AIに返事をしといた。
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