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剣持美鈴は、大病院グループ剣聖会の跡取り娘なのだが、自身は医療の道に進まず、経営の道に進むため、アメリカに留学してMBAを取得する。
お金持ちで、美人で、頭が良くて、世間の羨望も反感も一身に集める美鈴にも好きな男性がいた。
相手に思いを伝えることもなく、その初恋相手は、中学の時に両親を事故で亡くし、そのまま進学せずに卒業してしまった。
名前は、谷口正憲君で、とても頭のいい子だった。目がとても澄んでいて、今でいうところのイケメンな顔立ちをしていたと思う。
以来、一度も顔を合わせることもなく、現在に至っているが、美鈴はアメリカへ渡ってから、大学院の同級生と同棲経験があり、処女ではない。
時折、初恋相手のことが頭を過ぎることはあるけど、もう記憶の片隅に追いやられていて、思い出すことはほとんどなかったのに、突然、美鈴の記憶から手が伸び出してくるような感覚に捉われ、その後、懸命に谷口君を探すことになろうとは、夢にも思ってもみなかったこと。
そのきっかけとなったのは、ある日、一通の往復はがきが舞い込んだことから始まる。それは、大学の同窓会のことで、会場は都内のホテルで会ったが、美鈴の自宅からは小一時間かかる場所に建てられた別館で行われるというもの。
この本館なら徒歩5分で行けるところなのに、なんでわざわざ遠方のホテルにしたのだろうと、疑問や不満はあったが、久しぶりにみんなと逢える喜びが勝ってしまって、不覚考えずに出席のところに〇をつけ、投函する。
美鈴の住まいは、いわゆる豪華タワーマンションで、東京の夜景が一望できる。そこを親元から離れ、一人暮らしをしていて、今まで不自由を感じた生活は送っていなかった。お金はあるし、通勤は、会社の運転手付きの車が毎朝、迎えに来る。お手伝いさんを雇い、週に3回掃除をしてもらっている。
料理は自炊だが、元々家事に抵抗がない美鈴は息抜きで料理もしている。
ブランド物、高級品や金目のものは、実家に置きっぱなしにしていて、たまにパーティなどで必要があれば、取りに帰るから、わざわざセキュリティが高いマンションに住む必要もないが、近頃は家政婦さんでも窃盗を働く人がいると聞いているので、信用できる紹介所からの派遣でも、やはり用心するに越したことはないだろう。
ほとんどこのタワーマンションは、寝に帰るだけ、時々、趣味程度の料理を作るから、まあこれで十分だと思っている。
美鈴は、幼いころから何不自由なく暮らしてきて、そのうえ、MBAを取得してから、就職しても早々に出世コースに乗り、運よくCEOになれたものだから、美人だけど、鼻持ちならないイヤな女になってしまっている。
もうこればかりは、自分の意思は関係なく周りから、そのような態度を求められた結果の集大成の様になってしまったので、今更これを訂正する気はない。
それで大学の同級生に今の美鈴を自慢してやろうと、意地悪根性が芽生え、出席に〇を付けたのだ。
「私は、こんないい年収を貰って、こんないいところに暮らしているのよ」と自慢するために。
でも、そんな思惑は開始10分間で打ち砕かれてしまう。
男の子たちは、年相応にそれなりに出世していたけど、女の子は完全にオバサン化していて、話す内容も子供の自慢と旦那の不満と姑さんの悪口ばかりで、正直、美鈴の自慢話に耳を傾けてくれる人は誰もいない。
それに不満や悪口を言っている割には、嬉々として嬉しそうに話していることが癪に障る。
その笑顔から、美鈴よりは100倍も幸せよ。と言っているのが窺えるからだ。
たまらなくなり、お手洗いに立つ。その洗面所で悔し涙を洗い流す。私だって、楽して、この地位に就いたわけではない。イヤな客相手に愛想笑いをして掴んだ仕事も両手で数えきれないぐらいある。それなのに……、結婚したい!でも、実家に言えば、今でも山ほどの縁談が来るけど、そんなお仕着せでは、同級生のような笑顔にはなれない。そえrはわかっている。
お金持ちで、美人で、頭が良くて、世間の羨望も反感も一身に集める美鈴にも好きな男性がいた。
相手に思いを伝えることもなく、その初恋相手は、中学の時に両親を事故で亡くし、そのまま進学せずに卒業してしまった。
名前は、谷口正憲君で、とても頭のいい子だった。目がとても澄んでいて、今でいうところのイケメンな顔立ちをしていたと思う。
以来、一度も顔を合わせることもなく、現在に至っているが、美鈴はアメリカへ渡ってから、大学院の同級生と同棲経験があり、処女ではない。
時折、初恋相手のことが頭を過ぎることはあるけど、もう記憶の片隅に追いやられていて、思い出すことはほとんどなかったのに、突然、美鈴の記憶から手が伸び出してくるような感覚に捉われ、その後、懸命に谷口君を探すことになろうとは、夢にも思ってもみなかったこと。
そのきっかけとなったのは、ある日、一通の往復はがきが舞い込んだことから始まる。それは、大学の同窓会のことで、会場は都内のホテルで会ったが、美鈴の自宅からは小一時間かかる場所に建てられた別館で行われるというもの。
この本館なら徒歩5分で行けるところなのに、なんでわざわざ遠方のホテルにしたのだろうと、疑問や不満はあったが、久しぶりにみんなと逢える喜びが勝ってしまって、不覚考えずに出席のところに〇をつけ、投函する。
美鈴の住まいは、いわゆる豪華タワーマンションで、東京の夜景が一望できる。そこを親元から離れ、一人暮らしをしていて、今まで不自由を感じた生活は送っていなかった。お金はあるし、通勤は、会社の運転手付きの車が毎朝、迎えに来る。お手伝いさんを雇い、週に3回掃除をしてもらっている。
料理は自炊だが、元々家事に抵抗がない美鈴は息抜きで料理もしている。
ブランド物、高級品や金目のものは、実家に置きっぱなしにしていて、たまにパーティなどで必要があれば、取りに帰るから、わざわざセキュリティが高いマンションに住む必要もないが、近頃は家政婦さんでも窃盗を働く人がいると聞いているので、信用できる紹介所からの派遣でも、やはり用心するに越したことはないだろう。
ほとんどこのタワーマンションは、寝に帰るだけ、時々、趣味程度の料理を作るから、まあこれで十分だと思っている。
美鈴は、幼いころから何不自由なく暮らしてきて、そのうえ、MBAを取得してから、就職しても早々に出世コースに乗り、運よくCEOになれたものだから、美人だけど、鼻持ちならないイヤな女になってしまっている。
もうこればかりは、自分の意思は関係なく周りから、そのような態度を求められた結果の集大成の様になってしまったので、今更これを訂正する気はない。
それで大学の同級生に今の美鈴を自慢してやろうと、意地悪根性が芽生え、出席に〇を付けたのだ。
「私は、こんないい年収を貰って、こんないいところに暮らしているのよ」と自慢するために。
でも、そんな思惑は開始10分間で打ち砕かれてしまう。
男の子たちは、年相応にそれなりに出世していたけど、女の子は完全にオバサン化していて、話す内容も子供の自慢と旦那の不満と姑さんの悪口ばかりで、正直、美鈴の自慢話に耳を傾けてくれる人は誰もいない。
それに不満や悪口を言っている割には、嬉々として嬉しそうに話していることが癪に障る。
その笑顔から、美鈴よりは100倍も幸せよ。と言っているのが窺えるからだ。
たまらなくなり、お手洗いに立つ。その洗面所で悔し涙を洗い流す。私だって、楽して、この地位に就いたわけではない。イヤな客相手に愛想笑いをして掴んだ仕事も両手で数えきれないぐらいある。それなのに……、結婚したい!でも、実家に言えば、今でも山ほどの縁談が来るけど、そんなお仕着せでは、同級生のような笑顔にはなれない。そえrはわかっている。
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