ワンナイトラブから玉の輿婚へ 結婚してから始まる恋愛

青の雀

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乙女ゲームの世界

31.肉体ブティック

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 「いらっしゃいませ~。ようこそ、肉体ブティックへ。」

 美織は50年ぶりに暖簾をくぐる。

 「あら!アナタは確か火傷で……、その後の人生はどうだった?幸せになれた?」

 「ええ。その節は、お世話になりました。女神さま、相変わらずお綺麗ですね。」

 「まあ、イヤだわ。美織ちゃんたら、本当のことを言って。ふふふ。それで、そちらの肩が旦那様?」

 「そうです。主人の正彦です。」

 「美織、ここは?」

 三途の川の手前にあるブティックは、事故死したり、殺されたり、若くして不治の病にかかったものが、もう一度他人のカラダを着て、リアルタイムで一発逆転の人生を送ることができる「肉体ブティック」である。

 そういった魂は、何の落ち度もないから、普通、すんなり三途の川を渡っていけるが、そういった者たちまで天国で受け入れると、天国が満員御礼になってしまうから、神様直営で、六文銭だけで、新しい人生をやり直してもらうことを目的として、できたブティックなのである。

 「前に、火傷したときに、この女神さまに命を助けていただいたのよ。正彦からもお礼を言ってね。」

 「ああ、それはどうもありがとうございました。それで、美織のカラダにはシミひとつなくきれいな肌のままでしたのですか?」

 「そうよ。美織ちゃんのカラダを治したのは、わたくしよ。」

 「それで、もう一度生き返って、美織としての人生をやり直すことにしたのよ。」

 「……すまない。俺が余計なことを言い、美織を怒らせたせいだな。あのままファーストクラスに乗っていれば、けがで済んだかもしれないというのに。」

 「残念ながら、あの飛行機は、乗客乗員とも全員死亡が確認されたわ。ただ、赤い国で、まだ魂が彷徨っていて、こちらまでたどり着けていないだけなの。美織ちゃんは、一度、ここへ来ているので、すんなり戻って来られたけどね。」

 「それで、もう私はこのまま三途の川を渡って、死んでもいいと思っていますが?何故また、ここへ来てしまったのかしら?」

 「アナタたち、生前、今度生まれ変わってもまた夫婦になろうね。って約束していたでしょ?だからよ。」

 「はあ?もう、いいです。私は正彦と一緒になれて、十分、幸せでした。だからもう……。」

 「そう言わないで。次は、アナタたちが死ぬ直前、お孫さんに買ってあげたゲームを覚えている?」

 「あ、はい。」

 「ラブパラダイスよ。その世界に転生させてあげるわ。」

 「は?いや、いいです。あのエッチな乙女ゲームですか?」

 「あら、美織ちゃん、よくわかったわね。そう、アナタたち夫婦に、まさにうってつけのゲームよ。とにかく、1日中イチャイチャしていたら、いいゲームなので、その世界はどうかしらね?と思ったのよ。それにアナタたち、まだヤり足りていないでしょ?」

 「そ、そんなことありません。私は、もう十分すぎるほど、正彦に抱かれました。」

 「な、何を言っている!?」

 「でも、旦那さんは、もっと、もっと、美織ちゃんを抱きたいと思っているのに、カラダがいうことを聞かなくなって……。」

 女神さまが、そこまで言われると、二人とも顔を真っ赤にして、言い淀む。

 「今度の世界での設定は、二人は同い年にしてあげるわ。だから15年は早く、エッチできるってものよ。次の世界の成人年齢は15歳だから、15歳からヤれば、ヤり残した感がなくなるほどできるわよ?」

 「え……でも、コンドームはあるのですか?」

 「次の世界は、魔法が使えるので、避妊魔法をすれば、バンバンできて、子供はできない。それとも、チートスキルを上げた方がいいかしら?コンドームは前世世界のものを買えるチートスキル。……ま、どちらか好きな方を選べばいいわ。」

 「あの……乙女ゲームって、したことが何¥いのですけど、たいていヒロインとヒロインの邪魔をする悪役令嬢がいるのではないですか?」

 「よく知っているわね。さすが、美織ちゃん。美織ちゃんが悪役令嬢で、旦那さんが筆頭攻略対象になるわよ。」

 「えー。それでは、私が断罪され、婚約破棄されるのでは?」

 「それをさせないようにするのが、旦那さんの役目なのよ。もし、断罪するような旦那さんであれば、さっさと別れちゃって、来世は、もっとイイ男と出会えるように、わたくしが工面してあげるわよ。どう?これで満足いった?」

 美織は静かにうなずく。だが、正彦は大慌てで、

 「あの……、ヒロインをどうやって見分ければいいのでしょうか?」

 「そんなこと、アナタの孫なのだから、顔を見たらすぐにわかるでしょうが!要するに、ヒロインに攻略されて、浮気すれば、美織ちゃんは永久にアナタの元から去り、浮気を我慢できたら、美織ちゃんを好きにできるというわけよ。わかった?」
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