30 / 41
オフィスラブ
30.夫婦喧嘩
しおりを挟む
正彦と美織の夫婦は、あれから50年が経ち、金婚式を息子夫婦が海外旅行のプレゼントをしてくれて、若い頃は、さんざん行ったが、子供が生まれるまでの頃で、子供が生まれてからは、子育てと仕事の両立で、けっこう遊びに行く暇もなく、二人で汗を流したものだ。
もちろん、夫婦生活は、息子が独立して家を出る日まで、お盛んで、家を出てからも実際には続くのだが、回数が毎日3回から1日1回、3日に1回、1週間に1回とだんだん年齢と共に減っていく。
金婚式の頃には、もうほとんど夫婦の営みはしていない。当然と言えば、当然だけど、それでも、外国人並みにしょっちゅうチュッチュッしていることは変わりがない。
ただ、この頃の口癖は、「今度生まれ変わっても、また夫婦になろうね。」が合言葉のように頻繁に囁かれることになったというぐらい。
50年間も仲良しでいられる夫婦というのは、貴重で希少、ロイヤルカップル並みだということは間違いない。
それで海外旅行に出かける前日、孫娘の頼みで、乙女ゲームなるものを買ってやることにしたのだ。
恋愛ゲームの一種のようなものだが、無論、この老夫婦にとっては無縁のもので、孫娘の頼みを嬉しそうに聞く好々爺のごときになっている。
孫娘は、老夫婦をATM代わりにしているだけでも、若い女の子と一緒にいることは、華やいでいて、楽しい。
「ラブパラダイス」なんて、乙女ゲームを買わされているのだけど、名前からして、エッチな雰囲気満載、嫁入り前の若い娘がこんなもので遊んで大丈夫かしら。と美織は心配するが、正彦は、「美織も若い時は、相当にエロかったよ。」の一言で、生まれて初めての夫婦げんかに発展する。
「それって、どういう意味ですか!」
「いやいや、俺は、そういう美織が好きだったのだから、しょうがないだろ?」
「ちょっと待ってくださいよ。正彦が私をさんざん開発したから、そうなっただけですよ。それを最初からエロイなんて、許さない!」
「そういう美織が、ものすごく魅力的だってことさ。」
若ければ、この後イチャイチャして、夫婦喧嘩はお開きとなるのだが、もう美織は77歳、正彦は80歳で、そんな体力はどこにもない。
そのまま搭乗ゲートまで行く。昨日から、二人とも冷戦状態で、一言も口をきいていない。
息子夫婦は、懸命に宥めるも、二人とも眼も合わせないまま、出国ゲートに並ぶ。当の孫娘は、自分が買ってもらった乙女ゲームが原因なのに、我関せずの態度であっけらかんとしている。
息子夫婦が奮発してくれたおかげで、ファーストクラスに乗れたのだが、美織は怒って、エコノミーに座る。
食事やサービスは、客室乗務員が気を利かせてくれて、ファーストクラスと同様のものを受け取ることができた。
ただ、エコノミーは座席と座席との間隔が狭いので、十分に休めない。
こんなのだったら、短気は損気なので、せめてビジネスクラスの方へ移れば、よかったと後悔するも、癪なので、エコノミーに居座る美織。
ちょうど食事が終わり、ウトウトとしかけた時、機体に大きな衝撃を受け、急にシートベルト着用のランプが点き、機内は騒然とする。
映画もまだ途中だというのに、途中で切れ、客室乗務員が慌ただしく行き来し始める。
機長の説明では、赤い国の上空で、爆撃されたらしい。このまま撃墜されて、地上に落下するか、胴体着率を試みるかもしれないので、シートベルトをしっかり締め、頭を低くして、備えてくれと言うアナウンスが流れてくる。
その時、客室乗務員の制止を振り切って、美織を探しに正彦が来てくれたけど、こればかりは、正彦でもどうしようもできないこと。
「美織。俺が悪かった。死ぬときは一緒だよ。だから、せめてファーストクラスに来てくれないか?」
ファーストクラスは、伊達に値段が高くサービスが良いだけではない。何かあった時に、助かる可能性が高い。
反対にエコノミーは、エンジンから近く、爆撃された場合、爆発して、炎上するのは、エコノミークラスの方から、と相場が決まっている。
これは、飛行機にのみならず、電車でも新幹線でも自由車よりは指定席、指定席よりはグリーン車の方が安全で、何かあれば、グリーン車の乗客から先に助け出されるというもの。
命にお金が関係しているということなど、会ってはならないことだが、現実では、それが当然のようにまかり通っている。
もちろん、夫婦生活は、息子が独立して家を出る日まで、お盛んで、家を出てからも実際には続くのだが、回数が毎日3回から1日1回、3日に1回、1週間に1回とだんだん年齢と共に減っていく。
金婚式の頃には、もうほとんど夫婦の営みはしていない。当然と言えば、当然だけど、それでも、外国人並みにしょっちゅうチュッチュッしていることは変わりがない。
ただ、この頃の口癖は、「今度生まれ変わっても、また夫婦になろうね。」が合言葉のように頻繁に囁かれることになったというぐらい。
50年間も仲良しでいられる夫婦というのは、貴重で希少、ロイヤルカップル並みだということは間違いない。
それで海外旅行に出かける前日、孫娘の頼みで、乙女ゲームなるものを買ってやることにしたのだ。
恋愛ゲームの一種のようなものだが、無論、この老夫婦にとっては無縁のもので、孫娘の頼みを嬉しそうに聞く好々爺のごときになっている。
孫娘は、老夫婦をATM代わりにしているだけでも、若い女の子と一緒にいることは、華やいでいて、楽しい。
「ラブパラダイス」なんて、乙女ゲームを買わされているのだけど、名前からして、エッチな雰囲気満載、嫁入り前の若い娘がこんなもので遊んで大丈夫かしら。と美織は心配するが、正彦は、「美織も若い時は、相当にエロかったよ。」の一言で、生まれて初めての夫婦げんかに発展する。
「それって、どういう意味ですか!」
「いやいや、俺は、そういう美織が好きだったのだから、しょうがないだろ?」
「ちょっと待ってくださいよ。正彦が私をさんざん開発したから、そうなっただけですよ。それを最初からエロイなんて、許さない!」
「そういう美織が、ものすごく魅力的だってことさ。」
若ければ、この後イチャイチャして、夫婦喧嘩はお開きとなるのだが、もう美織は77歳、正彦は80歳で、そんな体力はどこにもない。
そのまま搭乗ゲートまで行く。昨日から、二人とも冷戦状態で、一言も口をきいていない。
息子夫婦は、懸命に宥めるも、二人とも眼も合わせないまま、出国ゲートに並ぶ。当の孫娘は、自分が買ってもらった乙女ゲームが原因なのに、我関せずの態度であっけらかんとしている。
息子夫婦が奮発してくれたおかげで、ファーストクラスに乗れたのだが、美織は怒って、エコノミーに座る。
食事やサービスは、客室乗務員が気を利かせてくれて、ファーストクラスと同様のものを受け取ることができた。
ただ、エコノミーは座席と座席との間隔が狭いので、十分に休めない。
こんなのだったら、短気は損気なので、せめてビジネスクラスの方へ移れば、よかったと後悔するも、癪なので、エコノミーに居座る美織。
ちょうど食事が終わり、ウトウトとしかけた時、機体に大きな衝撃を受け、急にシートベルト着用のランプが点き、機内は騒然とする。
映画もまだ途中だというのに、途中で切れ、客室乗務員が慌ただしく行き来し始める。
機長の説明では、赤い国の上空で、爆撃されたらしい。このまま撃墜されて、地上に落下するか、胴体着率を試みるかもしれないので、シートベルトをしっかり締め、頭を低くして、備えてくれと言うアナウンスが流れてくる。
その時、客室乗務員の制止を振り切って、美織を探しに正彦が来てくれたけど、こればかりは、正彦でもどうしようもできないこと。
「美織。俺が悪かった。死ぬときは一緒だよ。だから、せめてファーストクラスに来てくれないか?」
ファーストクラスは、伊達に値段が高くサービスが良いだけではない。何かあった時に、助かる可能性が高い。
反対にエコノミーは、エンジンから近く、爆撃された場合、爆発して、炎上するのは、エコノミークラスの方から、と相場が決まっている。
これは、飛行機にのみならず、電車でも新幹線でも自由車よりは指定席、指定席よりはグリーン車の方が安全で、何かあれば、グリーン車の乗客から先に助け出されるというもの。
命にお金が関係しているということなど、会ってはならないことだが、現実では、それが当然のようにまかり通っている。
1
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】




ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる