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オフィスラブ
27.元カレ
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結婚前に住んでいたマンションを引き払ったことで、もう帰る場所は、社長のマンションしかないという覚悟ができてから強くなれたような気がしてくる。
地に足が付いたというか、安定感がある。
銀行の預金口座の名義変更など、やらなければならないことはたくさんある。
午後3時ぎりぎりに行くと、イヤな顔をされるので、なるべく早く行くようにして化粧して、着替えて出かける。
電車での移動にちょっと緊張する。改札を出て、ロータリーの一番端にある横断歩道から渡った正面にある銀行へ入る。
番号札を摂り、週刊誌を何気にぺらぺらとめくると、「三角関係の果ての泥沼!」
目元に黒いラインがある青井百合子の写真が出ているではないか!
なにこれ?新聞沙汰になったような事件だったの?青井百合子と社長がまるで、男女関係があったかのような書き方に無性に腹が立つ。
単なる横恋慕だったと聞かされているから、帰りにこの週刊誌を買って帰ろうと思い、銀行での手続きは終わる。
都市銀行と地方銀行と信用金庫に口座を持っていたので、それぞれ回って、すべて名義変更をしたのだが、中には、テラーからジロリとみられ、感じが悪いったらありゃしない。
最後の名義変更が終わり、後は帰るだけとなり、コンビニを探して週刊誌を買いまくるつもりでいると、不意に
「美織?」
振り返ると、学生時代の彼氏がそこにいた。
「雑賀?」
「ああ、やっぱり美織だったんだ。ずいぶん綺麗になったから、人違いかもと思ったぐらいだよ。」
雑賀とは、同じ大学で、学部は違ったけど、同郷の仲良しの同級生からの紹介で知り合い付き合い始めた。卒業と同時に別れて、もうかれこれ5年以上は会っていない。
懐かしいというよりは、今は会いたくない人に会ってしまったという気持ちが大きい。
それなのに、雑賀は、学生時代のノリで、馴れ馴れしく美織に近づいてきて、手を握ろうとしてくるから、握らせまいと、後ろ手で組む。
「元気してる?美織、確か会計士の資格合格したんだよな。今、どこの監査法人にいるの?今晩、空いている?よかったら飲みながら、仕事の話、聞かせてよ。」
「私、結婚したの。だから今は仕事をしていないのよ。」
「へー。旦那さん、独占欲が強いんだね。今時、結婚したからと言って、会計士の資格を持つ嫁さんを家に閉じ込めたいなんて、男いる?でも、まあ、人妻だと知り余計そそられるな。旦那さんだけで、寂しかったら、いつでも相手してやるよ。これ、俺の名刺。」
雑賀企画という聞いたこともない会社の代表取締役
まじまじと名刺を見ていると、
「というのは、冗談さ。起業したはいいけど会計士を探している。俺、理系だから、そっち方面苦手なんだよな。じゃ、気が向いたら連絡してくれ。」
そういって、くるりと背を向けたので、安心しきって、駅の方へ歩き出すと、後ろから急に抱きしめられた。
「やっぱり美織しかいないんだよな。相変わらず、柔らかな肌だな。」
服の上から、道の真ん中だというのに、触られる。
「やめてください!助けて!」
「いいじゃないか?知らない仲でも、ないのだし。」
「やめて!助けて!誰か!」
大きな背中が現れ、美織と雑賀の間に立ってくれる。
「な、なんだ、お前?」
「私の妻に何か御用ですか?」
「え……、美織……、玉川さんの御主人でしたか?それは、失礼いたしました。私は、玉川さんの大学時代の友人で、少し悪ふざけが過ぎたようで、すみません。つい、懐かしくて、学生時代のノリでやってしまいました。ごめんなさい。これから商用があるので、これにて失礼します。」
雑賀は、それだけを言い残し、あたふたと帰っていく。近くのコインパーキングに車を置いていたようで、車の中から手を振り、頭を下げて走り去っていくのを見送る。
地に足が付いたというか、安定感がある。
銀行の預金口座の名義変更など、やらなければならないことはたくさんある。
午後3時ぎりぎりに行くと、イヤな顔をされるので、なるべく早く行くようにして化粧して、着替えて出かける。
電車での移動にちょっと緊張する。改札を出て、ロータリーの一番端にある横断歩道から渡った正面にある銀行へ入る。
番号札を摂り、週刊誌を何気にぺらぺらとめくると、「三角関係の果ての泥沼!」
目元に黒いラインがある青井百合子の写真が出ているではないか!
なにこれ?新聞沙汰になったような事件だったの?青井百合子と社長がまるで、男女関係があったかのような書き方に無性に腹が立つ。
単なる横恋慕だったと聞かされているから、帰りにこの週刊誌を買って帰ろうと思い、銀行での手続きは終わる。
都市銀行と地方銀行と信用金庫に口座を持っていたので、それぞれ回って、すべて名義変更をしたのだが、中には、テラーからジロリとみられ、感じが悪いったらありゃしない。
最後の名義変更が終わり、後は帰るだけとなり、コンビニを探して週刊誌を買いまくるつもりでいると、不意に
「美織?」
振り返ると、学生時代の彼氏がそこにいた。
「雑賀?」
「ああ、やっぱり美織だったんだ。ずいぶん綺麗になったから、人違いかもと思ったぐらいだよ。」
雑賀とは、同じ大学で、学部は違ったけど、同郷の仲良しの同級生からの紹介で知り合い付き合い始めた。卒業と同時に別れて、もうかれこれ5年以上は会っていない。
懐かしいというよりは、今は会いたくない人に会ってしまったという気持ちが大きい。
それなのに、雑賀は、学生時代のノリで、馴れ馴れしく美織に近づいてきて、手を握ろうとしてくるから、握らせまいと、後ろ手で組む。
「元気してる?美織、確か会計士の資格合格したんだよな。今、どこの監査法人にいるの?今晩、空いている?よかったら飲みながら、仕事の話、聞かせてよ。」
「私、結婚したの。だから今は仕事をしていないのよ。」
「へー。旦那さん、独占欲が強いんだね。今時、結婚したからと言って、会計士の資格を持つ嫁さんを家に閉じ込めたいなんて、男いる?でも、まあ、人妻だと知り余計そそられるな。旦那さんだけで、寂しかったら、いつでも相手してやるよ。これ、俺の名刺。」
雑賀企画という聞いたこともない会社の代表取締役
まじまじと名刺を見ていると、
「というのは、冗談さ。起業したはいいけど会計士を探している。俺、理系だから、そっち方面苦手なんだよな。じゃ、気が向いたら連絡してくれ。」
そういって、くるりと背を向けたので、安心しきって、駅の方へ歩き出すと、後ろから急に抱きしめられた。
「やっぱり美織しかいないんだよな。相変わらず、柔らかな肌だな。」
服の上から、道の真ん中だというのに、触られる。
「やめてください!助けて!」
「いいじゃないか?知らない仲でも、ないのだし。」
「やめて!助けて!誰か!」
大きな背中が現れ、美織と雑賀の間に立ってくれる。
「な、なんだ、お前?」
「私の妻に何か御用ですか?」
「え……、美織……、玉川さんの御主人でしたか?それは、失礼いたしました。私は、玉川さんの大学時代の友人で、少し悪ふざけが過ぎたようで、すみません。つい、懐かしくて、学生時代のノリでやってしまいました。ごめんなさい。これから商用があるので、これにて失礼します。」
雑賀は、それだけを言い残し、あたふたと帰っていく。近くのコインパーキングに車を置いていたようで、車の中から手を振り、頭を下げて走り去っていくのを見送る。
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