ワンナイトラブから玉の輿婚へ 結婚してから始まる恋愛

青の雀

文字の大きさ
上 下
22 / 41
オフィスラブ

22.正彦視点3

しおりを挟む
 世田谷正彦30歳、美織と結婚している。

 美織との出会いは、美織が新入社員の頃、美織に一目ぼれしたことから、なんとしても美織を手に入れたくて、あの手この手で、ようやく結婚に、こぎつけたのだが結婚してからもずっと、片思いでいた。

 それがある日、美織がポツリと「寂しい。」と言ったことから、両想いの関係になれた。

 それは、結果として、1泊2日になってしまった遊園地デートをきっかけとして、愛し合う関係になれたと思っていたのに、会社の毒花によって、すべてぶち壊されてしまったこと。

 毒花を懲戒解雇にしたぐらいでは、収まり切れない怒りがある。

 なんとか一命をとりとめてくれたのはいいが、正彦のことはすべて忘れていたことにショックは隠せない。

 あの事件のせいで、俺と美織の関係が会社中に周知されてしまったことはいいこととしても、美織にとっても俺にとっても、仕事がやり辛くなることは確か。いっそのこと、これを機会に寿退社してもらおうかとも、考えたがm美織の記憶が戻ってくることを信じて、それまで待つことにする。

 それに退院予定の日よりも、一日早く退院していたこともショックだった。俺には、一言も言わず……記憶を失っていたせいかもしれないが、やはりショックはショックで、俺の家にも戻ってきてくれなかったことも、ダメージが大きい。

 そえにしても、親父の代で採用になった毒花こと青井百合子。葵は俺に色目を使っていたことなど、今まで一度たりともなかったはずだ。

 俺の秘書の鬼塚麻衣子さんから聞く話によると、社長秘書になりたくて、鬼塚さんに嫌がらせをしていたという。

 秘書としてのスキルが格段に違うことから、どんなに嫌がらせを受けても、一蹴できたと笑っていた。鬼塚さんは、英語のほかにドイツ語とフランス語、中国語、スペイン語がネイティヴレベルで話せるのに対し、毒花は、日本語だけ、というお粗末さで、よく秘書になったという厚顔な女だから。

 まあ、俺に毒花が近づけないように、鬼塚さんがうまくやってくれていたのだと思うから、感謝している。

 退院予定の日、出社していることを鬼塚さんから聞き、美織を社長室に連れてくるように指示を出して、また失敗してしまったようだ。

 鬼塚さんからは。「いつか思い出される日が来るまで、なるべくそっとしておいてあげた方がいいのでは?あまり追い詰めるようなことをしては、思い出せるものも、思い出せなくなってしまうかもしれません。」

 アドバイスをしてもらったが、一刻も早く美織に会いたかったから、焦ってしまった。

 美織は、役員室のフロアに入った途端に、気を失って倒れてしまい、美織を抱き上げて、そのまま家に連れ帰ってきた。

 まだ、病み上がりの美織にとって、負担だったのかもしれない。

 それとも、事件現場があのフロアだったから、潜在意識の中で、トラウマになっているのか、そうだとしたら悪いことをしてしまったようだ。

 社長室ではなく、会議室で待っていてもらっていた方がよかったのかもしれないということが気がかりになっているのも事実。

 今日は、美織が家にいると思えば、なんとなく嬉しい。早めに帰って、寝顔だけでも見たい。

 定時になる前に、会社を出て、目が覚めた時のために花束を買って帰ろう。美織が嬉しそうにする顔を思い浮かべながら、花屋で、「妻にプレゼントしたい。」というと、適当にアレジメントしてくれ、ピンク色のリボンで結んでくれたものを抱えて帰る。

 玄関チャイムは、あえて押さずに、音をたてないように気を遣いながら、ドアを開けるとカレーのいい匂いがしている。

 美織が、料理を作ってくれたのか!嬉しい。久しぶりに愛妻の料理が食べられるなんて、もう体調は良くなったのか?

 だが、台所にも寝室にもどこにも美織の姿はない。

 「え……、美織いないのか……。どこ行ったんだ?昨日といい、今日といい。」

 まさか、ホテル暮らし?記憶がないから、この家を自宅だと認識していないのかもしれない。

 明日、会社に来てくれるかな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

処理中です...