ワンナイトラブから玉の輿婚へ 結婚してから始まる恋愛

青の雀

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オフィスラブ

10.配転

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 結局、その日は一日カリカリして仕事にならなかった。

 とりあえず、村上と松川、それと人事部の松川の同期を島流し決定事項として、社長に伝える。

 だいたい、人事部が社員の個人情報を社内に流出するって、どういうこと?コンプライアンス規定に引っかかるということも知らないの?

 社長とは、ベッドの中だけの関係だけど?いっそのこと、社長と結婚したと公表しちゃった方が、話が早いけど、枕営業で経理部長になったと思われるのは、いかにも癪だから。

 給湯室の近くを通りかかると、大きな声の笑い声が聞こえてくる。

 「多摩川部長、アラサーだから見え張って、結婚していないのに、結婚したって、言っているだけじゃない?」

 「えー!うっそ。でもありうるかも?」

 「でもでも、あの結婚指輪。カルティエだったよ。二つで60万円じゃくだらない代物よ。ちなみに1個売りはしていないから、見栄だけで60万もの大枚払うと思う?」

 「部長の給料なら、楽勝よ。」

 「それとも、あんな行き遅れと結婚するんだから、相手は相当なジジィかもしれないよ。だから結婚式にも呼ばれなかったんだ後私は踏んでいる。」

 「きゃはは。そうかもしれないね。ハゲかデブか?女はクリスマスまでっていうものね。あんな風になる前に彼氏をちゃんと捕まえとかないとね。」

 そうか、経理部員の部下から美織はそういう目で見られていたと思うと悔しい。

 女がアラサーになるまで独身でいくら仕事ができても評価が低いということを実感する。

 となると、村上が毎日、誘ってくるのは、ひょっとすればボランティアだったのかもしれない。

 社長じゃないけど、本当、こういう一介の平社員は全部リストラしてもいいって言う気になるわ。

 でも、組織に兵隊は必要不可欠。いわゆる人手の価値しかなくても数がいる。

 今や、AIが普及しているので、アイツら全員まとめてリストラにするか、美容部員として、店頭に立たせて、AIに仕事をしてもらった方がいい。

 でも、そんなことしたら男性社員から不満が出るだろうな。

 男性社員は、女子社員特に、新入社員の中から自分の嫁さん候補を見つけるのに必死になっているから。

 結局、結婚願望がある人から売れていくのよ。こういうものは。結婚したいというオーラが男を引き寄せているとしか思えない。頭とお股が緩んでいるような娘から先に売れていくので。

 提示が迫ってくると、松川の同期入社らしき娘が経理部に姿wお現して、部長に面会したいと言ってきた。

 空いている会議室にその娘を招き入れ、対面に座ると。いきなり、

 「すみませんでした!!同期の心やすさから、つい松川さんに多摩川部長の個人データを教えてしまいました。人事部長から大目玉を食らい、明日から花丸デパートで美容部員として働くことになりました。」

 {あら、おめでとう。アナタにお似合いの仕事ね。}

 「それで?」

 「部長に一言謝りたくて、部長から人事部の風上にも置けない奴だと叱責されまして……。本当にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。」

 「そうね。確かに迷惑はしたわ。コンプライアンスにも違反しているしね。でも、クビにならなくて、よかったわよね。じきに松川さんにも、そちらに行ってもらうことになると思うわ。アナタが今度は先輩になるのだから、きちんと教えてあげてね。」

 クビという言葉を使うと、その娘はドキリとした表情をしたので、おそらく人事部長はクビカードをちらつかせながら、美容部員への配転を促したのだろうと思う。

 若い娘が一人暮らししていて、明日から出社しなくていいということは、死刑宣告と同じ意味がある。

 家賃や水光費を払っていけない。毎日かかる食費もバカにならない。

 それをクビではなく、全く違う仕事とはいえ、配転で、お給料は上がるか下がるかわからないけど、一応出て、ボーナスももらえるとなると、少々イヤな仕事でも目をつぶってやろうという気になる。

 それにやれば、案外向いている人もいるから、そこは本人次第というところ。
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