7 / 41
オフィスラブ
7.挨拶1
しおりを挟む
なんだかんだ言って、社長と結婚することになっちゃった。というべきか、もうすでに入籍を済ませてしまったのだから、今更後悔しても仕方がない。
ブーケトスを今までバカにしていたけど、本当に効果があるとは思っていなかったのよ。
別に疑っていたというわけでないけど、日曜日の昼間に受け取り、月曜日の夕方に婚姻届を出した方、これってめちゃくちゃ早くないですか?
契約結婚ってのは、少し悲しいけど、社長とのアレの愛称はバッチリで一生添いたげたいと思っている。
二つも欲張ってはダメだとわかっている。
大企業の御曹司で、お金持ちで、イケメンで、私をとろけさせてくれる人と一夜ではなく、社長が飽きるまでだけど、それでもいい。
社長に比べたら、大学時代の彼氏なんて、目じゃない!大学生の彼氏は自分だけが気持ちよくなりたい人で、いつもセックスは苦痛でしかなかったのに、社長に抱かれると、とても気持ちがよく、初めて快感を得られたのよ。
だから、社長とのセックスは好き。たとえセフレでもよかったのに、お嫁さんにしてくれるだけで、ありがたい。
それなのに、社長のことを「正彦さん」なんて、恐れ多くて、言えない。でも、これも仕事のうちだと割り切って、新幹線の中で、思いっきり舌を噛みながらも練習している。
社長は、きっとモテるのに、なんで私を選んでくれたのかしら?社長は都合がいい女とおっしゃっていたけど、それだけ?
まあ、いいわ。女優になった気分で、しばらく奥様のフリをして差し上げますわよ。
名古屋を通り過ぎ、あっという間に京都駅に着く。
家への手土産として、美織もツルヤの羊羹「観世京」と「柚餅」を買う。
美織の実家まで、タクシーではなく地下鉄で行くことになった。
京都は道が狭いうえに混雑しているので、公共交通機関を使った方が移動は楽だし、安い。
「地下鉄なら5分で行けるよ。」
その言葉に嘘はなかったが、運行の間隔が長い。
だから待ち時間の間にタクシーを利用すれば、そっちの方が早いと思うような気がする。
「まあ、いいじゃない?京都市の財政悪化を救済する意味でもね。」
美織の実家は、四条烏丸を1本西の通りを上がったところにある。上がるというには北へ行くこと。北には京都御所があるから。反対に下がるという言い方もあるが、これは南へ行くことを下がるという。
その通りは、特定の商売をしている会社や店舗が建ち並んでいることろで、美織の家もその商売をしている。
具体的には、室町通が呉服商、夷川通が家具屋街、二条通が薬種問屋、寺町通が電気街などである。
「お父ちゃーん、帰ってきたで。」
「いや、お嬢さんや!また、別嬪さんにならはって。」
「はい、これお土産、みんなで食べて。」
「おおきに。」
美織は、勝手知ったる我が家のせいか、玄関から、ズンズン奥へ入っていく。
それにしても、美織の言葉が可愛い。郷に入れば、郷に従え。で完ぺきな京都弁を話している。
離れだろうか?お茶室にも見える狭い空間内に押し込められる。
「ここやったら、誰にもわからへん。しばらくここで、辛抱しててや。」
「?」
そのまま、社長を置き去りにして、美織は消える。
「え?辛抱って言ったよな……?」
焼く30分で、美織は戻ってきたのだが、見事な振り袖姿になっている。
「ごめんな。待った?おべべは着られるんやけど、髪をアップすんのに時間がかかってしもた。」
社長は、正座していたので、痺れて、もう立てないところまで、来ている。
「なんや~。胡坐かいててくれたらよかったのに。」
しばらく、お茶室で一服したのち、両親が待つ応接間へ行く。
「初めまして、私は世田谷正彦と申します。クリスタル化粧品という会社の社長をしております。美織さんとは、仕事を通して、知り合いました。誠実な仕事ぶりに感銘を受け、お付き合いさせていただくようになりました。」
美織の両親は権威に弱い。
「おお!美織がいつもお世話になっております。」
「お嬢さんとの結婚をどうか、お許しください。」
「どうぞ、娘をよろしく頼みます。で、結婚式はいつ頃になりそうですか?娘に着物一式を作ってやりたいのです。」
「いらんで。着物なんか着る機会あらへん。」
「こら。そんなこと言うもんやあらへん。」
「世田谷さん、イヤ正彦さん。今夜はウチへ泊って行ってください。昔は、住み込みの奉公人がたんとおりましたけど、今はご時世で、全員通いですから、部屋はなんぼでも余っております。」
「ありがたいお言葉ですが、明日、また仕事がありますので。」
「そうですか?ほな、残念やけど、またいつでも遊びに来てください。」
ブーケトスを今までバカにしていたけど、本当に効果があるとは思っていなかったのよ。
別に疑っていたというわけでないけど、日曜日の昼間に受け取り、月曜日の夕方に婚姻届を出した方、これってめちゃくちゃ早くないですか?
契約結婚ってのは、少し悲しいけど、社長とのアレの愛称はバッチリで一生添いたげたいと思っている。
二つも欲張ってはダメだとわかっている。
大企業の御曹司で、お金持ちで、イケメンで、私をとろけさせてくれる人と一夜ではなく、社長が飽きるまでだけど、それでもいい。
社長に比べたら、大学時代の彼氏なんて、目じゃない!大学生の彼氏は自分だけが気持ちよくなりたい人で、いつもセックスは苦痛でしかなかったのに、社長に抱かれると、とても気持ちがよく、初めて快感を得られたのよ。
だから、社長とのセックスは好き。たとえセフレでもよかったのに、お嫁さんにしてくれるだけで、ありがたい。
それなのに、社長のことを「正彦さん」なんて、恐れ多くて、言えない。でも、これも仕事のうちだと割り切って、新幹線の中で、思いっきり舌を噛みながらも練習している。
社長は、きっとモテるのに、なんで私を選んでくれたのかしら?社長は都合がいい女とおっしゃっていたけど、それだけ?
まあ、いいわ。女優になった気分で、しばらく奥様のフリをして差し上げますわよ。
名古屋を通り過ぎ、あっという間に京都駅に着く。
家への手土産として、美織もツルヤの羊羹「観世京」と「柚餅」を買う。
美織の実家まで、タクシーではなく地下鉄で行くことになった。
京都は道が狭いうえに混雑しているので、公共交通機関を使った方が移動は楽だし、安い。
「地下鉄なら5分で行けるよ。」
その言葉に嘘はなかったが、運行の間隔が長い。
だから待ち時間の間にタクシーを利用すれば、そっちの方が早いと思うような気がする。
「まあ、いいじゃない?京都市の財政悪化を救済する意味でもね。」
美織の実家は、四条烏丸を1本西の通りを上がったところにある。上がるというには北へ行くこと。北には京都御所があるから。反対に下がるという言い方もあるが、これは南へ行くことを下がるという。
その通りは、特定の商売をしている会社や店舗が建ち並んでいることろで、美織の家もその商売をしている。
具体的には、室町通が呉服商、夷川通が家具屋街、二条通が薬種問屋、寺町通が電気街などである。
「お父ちゃーん、帰ってきたで。」
「いや、お嬢さんや!また、別嬪さんにならはって。」
「はい、これお土産、みんなで食べて。」
「おおきに。」
美織は、勝手知ったる我が家のせいか、玄関から、ズンズン奥へ入っていく。
それにしても、美織の言葉が可愛い。郷に入れば、郷に従え。で完ぺきな京都弁を話している。
離れだろうか?お茶室にも見える狭い空間内に押し込められる。
「ここやったら、誰にもわからへん。しばらくここで、辛抱しててや。」
「?」
そのまま、社長を置き去りにして、美織は消える。
「え?辛抱って言ったよな……?」
焼く30分で、美織は戻ってきたのだが、見事な振り袖姿になっている。
「ごめんな。待った?おべべは着られるんやけど、髪をアップすんのに時間がかかってしもた。」
社長は、正座していたので、痺れて、もう立てないところまで、来ている。
「なんや~。胡坐かいててくれたらよかったのに。」
しばらく、お茶室で一服したのち、両親が待つ応接間へ行く。
「初めまして、私は世田谷正彦と申します。クリスタル化粧品という会社の社長をしております。美織さんとは、仕事を通して、知り合いました。誠実な仕事ぶりに感銘を受け、お付き合いさせていただくようになりました。」
美織の両親は権威に弱い。
「おお!美織がいつもお世話になっております。」
「お嬢さんとの結婚をどうか、お許しください。」
「どうぞ、娘をよろしく頼みます。で、結婚式はいつ頃になりそうですか?娘に着物一式を作ってやりたいのです。」
「いらんで。着物なんか着る機会あらへん。」
「こら。そんなこと言うもんやあらへん。」
「世田谷さん、イヤ正彦さん。今夜はウチへ泊って行ってください。昔は、住み込みの奉公人がたんとおりましたけど、今はご時世で、全員通いですから、部屋はなんぼでも余っております。」
「ありがたいお言葉ですが、明日、また仕事がありますので。」
「そうですか?ほな、残念やけど、またいつでも遊びに来てください。」
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
なし崩しの夜
春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。
さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。
彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。
信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。
つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。
そんな目で見ないで。
春密まつり
恋愛
職場の廊下で呼び止められ、無口な後輩の司に告白をされた真子。
勢いのまま承諾するが、口数の少ない彼との距離がなかなか縮まらない。
そのくせ、キスをする時は情熱的だった。
司の知らない一面を知ることによって惹かれ始め、身体を重ねるが、司の熱のこもった視線に真子は混乱し、怖くなった。
それから身体を重ねることを拒否し続けるが――。
▼2019年2月発行のオリジナルTL小説のWEB再録です。
▼全8話の短編連載
▼Rシーンが含まれる話には「*」マークをつけています。
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
無表情いとこの隠れた欲望
春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。
小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。
緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。
それから雪哉の態度が変わり――。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
雨音。―私を避けていた義弟が突然、部屋にやってきました―
入海月子
恋愛
雨で引きこもっていた瑞希の部屋に、突然、義弟の伶がやってきた。
伶のことが好きだった瑞希だが、高校のときから彼に避けられるようになって、それがつらくて家を出たのに、今になって、なぜ?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる