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オフィスラブ
2.辞令
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午後からは、会議で、月に1回部長とともに、役員会議に出る。原価計算の説明は、美織にしかできない。
部長は、ただ目蔵判を押しているに過ぎない。だから美織の手柄を自分の手柄としていては、説明ができない。それで、美織がいつも呼ばれる。
失礼します。総務部の女子社員がお茶出しをしてくれるので、美織もそれを手伝う。
なぜだか、さっきから視線を感じるような?いつもの定例会議であるから、美織が原価計算を説明するのは、当然の風潮になっているのに、おかしい?
お茶を淹れ終わり、美織は部長の隣の席に座る。
司会役の総務部長が挨拶して、開会すると、
「今月の原価計算を説明、申し上げます。……(省略)……、前年比同期11パーセント増し……。」
発表が済むと、美織は一礼して、部屋を出て行こうとしたら、一人の役員が手を挙げる。
「無責任じゃないかなぁ。経理部長、なぜ一介の社員に発表させるのだ?その社員が管理職ならまだしも、一介の平社員でしか役員会で発表ができないというのは、明らかに職務怠慢をしているということですね。」
部長は、青ざめガタガタ震えている。
美織は残るべきかどうしようか迷っている。
「僭越ながら、代わって申し上げますと、部長からご指導いただいて、原価計算しておりますので、ただ部長はお忙しく原価計算だけを見ていらっしゃるわけではございませんし、いつも私がここで発表させていただいております。ご不満があるのでしたら、来月から、もう来ません。失礼します。」
あー、なんか嫌な奴、まっすぐ経理部へ戻らず、休憩室でお茶を飲んでからにしようと思う。
コーヒーを飲んで、落ち着いてから、経理部に戻ると、役員室から呼び出しがかかっていて、今までどこにいた?と課長から叱責される。
休憩していたとは言えず、「朝からお腹の調子が悪くトイレに籠っていました。」と嘘を吐く。
「ああ、それなら仕方ないね。大丈夫なら、もう一度行ってくれないか?」
「一人の役員の方が、私が発表したら、部長の職務怠慢だとおっしゃって。それで先に出てきたのですよ。後は、部長がいくらでも言えると思います。」
「いや……、それがそうでもない。」
「だいたい、私だって、会議資料として配られているものを、ただ読み上げているだけですからね!数字が読めるか読めないか、だけの話だと思いますけど?」
「うーん。でも、部長がお困りのようだから、少しだけでも行ってもらえないか?」
「だったら、課長が行かれたら、どうですか?」
「いやいや、私は原価計算のことなど触ったこともないからさ。」
「たぶん、原価計算の話ではないと思いますよ?」
「え……!」
「一介の平社員でしか発表ができないのか、ということが論点になっているはずです。管理職が行かないと、あの役員は納得しないと思います。」
「でも……。」
「だったら、無視しましょう。誰が行ったところで、怒られるのですもの。あ、またお腹が……。」
トイレに行くふりをして、その話を終わらせる。
結局、課長は無視するような度胸はなく、渋々役員会議室へ赴く。
総務の女の子から聞いた話では、会議は途中で紛糾して、収拾がつかなくなり、終了したのは、午後9時を回っていたとか……?
お疲れ様です。
いつもなら長くても2時間以内に終わるのに、どうしちゃったんでしょうね。会議に出なくてよかったと、つくづく思う。
次の日、出勤するとざわざわロビーが騒がしい。
何事と思っていると、同期入社の薬師川芳江がいつの間にか、側まで来て
「おめでとう。美織。」
「え?なんのこと?」
「アンタまだ見ていないの?いいから、こっちに来なさいよ。」
腕を引っ張られ、壁際の人だかりのところまで、連れてこられる。
「ほら、これよ。アンタの名前がかいてあるでしょ?」
なんか辞令らしきものが視えるけど……?
部長は、ただ目蔵判を押しているに過ぎない。だから美織の手柄を自分の手柄としていては、説明ができない。それで、美織がいつも呼ばれる。
失礼します。総務部の女子社員がお茶出しをしてくれるので、美織もそれを手伝う。
なぜだか、さっきから視線を感じるような?いつもの定例会議であるから、美織が原価計算を説明するのは、当然の風潮になっているのに、おかしい?
お茶を淹れ終わり、美織は部長の隣の席に座る。
司会役の総務部長が挨拶して、開会すると、
「今月の原価計算を説明、申し上げます。……(省略)……、前年比同期11パーセント増し……。」
発表が済むと、美織は一礼して、部屋を出て行こうとしたら、一人の役員が手を挙げる。
「無責任じゃないかなぁ。経理部長、なぜ一介の社員に発表させるのだ?その社員が管理職ならまだしも、一介の平社員でしか役員会で発表ができないというのは、明らかに職務怠慢をしているということですね。」
部長は、青ざめガタガタ震えている。
美織は残るべきかどうしようか迷っている。
「僭越ながら、代わって申し上げますと、部長からご指導いただいて、原価計算しておりますので、ただ部長はお忙しく原価計算だけを見ていらっしゃるわけではございませんし、いつも私がここで発表させていただいております。ご不満があるのでしたら、来月から、もう来ません。失礼します。」
あー、なんか嫌な奴、まっすぐ経理部へ戻らず、休憩室でお茶を飲んでからにしようと思う。
コーヒーを飲んで、落ち着いてから、経理部に戻ると、役員室から呼び出しがかかっていて、今までどこにいた?と課長から叱責される。
休憩していたとは言えず、「朝からお腹の調子が悪くトイレに籠っていました。」と嘘を吐く。
「ああ、それなら仕方ないね。大丈夫なら、もう一度行ってくれないか?」
「一人の役員の方が、私が発表したら、部長の職務怠慢だとおっしゃって。それで先に出てきたのですよ。後は、部長がいくらでも言えると思います。」
「いや……、それがそうでもない。」
「だいたい、私だって、会議資料として配られているものを、ただ読み上げているだけですからね!数字が読めるか読めないか、だけの話だと思いますけど?」
「うーん。でも、部長がお困りのようだから、少しだけでも行ってもらえないか?」
「だったら、課長が行かれたら、どうですか?」
「いやいや、私は原価計算のことなど触ったこともないからさ。」
「たぶん、原価計算の話ではないと思いますよ?」
「え……!」
「一介の平社員でしか発表ができないのか、ということが論点になっているはずです。管理職が行かないと、あの役員は納得しないと思います。」
「でも……。」
「だったら、無視しましょう。誰が行ったところで、怒られるのですもの。あ、またお腹が……。」
トイレに行くふりをして、その話を終わらせる。
結局、課長は無視するような度胸はなく、渋々役員会議室へ赴く。
総務の女の子から聞いた話では、会議は途中で紛糾して、収拾がつかなくなり、終了したのは、午後9時を回っていたとか……?
お疲れ様です。
いつもなら長くても2時間以内に終わるのに、どうしちゃったんでしょうね。会議に出なくてよかったと、つくづく思う。
次の日、出勤するとざわざわロビーが騒がしい。
何事と思っていると、同期入社の薬師川芳江がいつの間にか、側まで来て
「おめでとう。美織。」
「え?なんのこと?」
「アンタまだ見ていないの?いいから、こっちに来なさいよ。」
腕を引っ張られ、壁際の人だかりのところまで、連れてこられる。
「ほら、これよ。アンタの名前がかいてあるでしょ?」
なんか辞令らしきものが視えるけど……?
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