男爵令嬢にはめられ、転落死したはずの公爵令嬢は、なぜか後釜ライバル公爵令嬢に憑依して復讐する

青の雀

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 アナベルは馬車が転落したので、もう助からないと観念したのであるが、気が付けば自室のベッドに横たわり、どこも痛いところがない。

 しかし、ジオノ公爵家ではなかった。ひょっとしたら、わたくしだけ助けられて…修道院に連れてこられたのか?でもどう見ても修道院のお部屋だとは、とても思えない。豪華な部屋だった。

 「え?ここは、どこです?」

 「お嬢様、気が付かれましたか?」

 「あなたは、誰ですか?今何時ですか?」

 「いやですわ。お嬢様のお名前は、ロザリー・オクレール、公爵家の次女で今は学園の2年生で、つい先ごろアナベル・ジオノ様が王太子殿下と婚約破棄されて、お亡くなりになったばかりでございます。それで、後任の婚約者様がロザリー様ということになりました。」

 「ああ、そうでしたね。」

 わたくしは、ライバル公爵令嬢に転生してしまったのか?それにしては時系列的に合点がいかないところがある。ひょっとしたら、ロザリー嬢のカラダに憑依してしまったのかもしれない。

今度は、またあのバカ王太子の相手と腹黒リリアーヌと対峙しなければならないのかと思うと、どうしようもなく気が重い。

 前世のロザリーは、確かおとなしい性格だったように思う。リリアーヌを虐めないように、今度はおとなしいロザリーを後釜に据えたのか。

 早速、王城へ向かい王太子殿下を見つけた。リリアーヌとイチャイチャしていたのでわざとそこで挨拶をした。

 「はじめまして、リリアーヌ様、わたくしが王太子殿下の新しい婚約者でロザリーと申します。以後お見知りおきを。」優雅にカーテシーであいさつしてやった。

 「ああロザリー嬢か、ロザリー嬢は控えめでおとなしい性格だからリリアーヌを虐めなどはしない。安心して仲良くしろ。」

 「え…あの、エヴァリスト様、私、上位貴族の方は苦手ですの。」

 「まぁ、よほど怖い目に合われたのかしら。王太子殿下もご心配されるはずですわ。」

 「かわいそうに。」と目頭をハンカチで抑えると。それを見て、王太子殿下が気を使ってくれる。ロザリーに、王太子殿下が自らのハンカチを差し出してくれる。
 「ロザリー嬢は心優しいのだな。そう気に病むことはない。」

 「そろそろ私は執務に戻る、リリアーヌ、ロザリー嬢から側妃の心得などを教えてもらうように。」

 「え!私、正妃になるんじゃないの?」

 「男爵令嬢では、正妃になれないんだ。それに正妃になるには、お妃教育が大変難しく、リリアーヌには無理だ。ロザリー嬢は、正妃教育が済んでいるので問題ない。」

 そう言って、王太子殿下は席を外した。

 「いっとくけど、あんたなんかアナベルと同じように修道院送りにしてやるからさ。正妃の座は、私のものよ。」

 「え?それではやはりアナベル様は、冤罪で修道院送りになられたのでございますか?お気の毒ですわね。たまたま、王太子殿下の婚約者に選ばれたばかりに。好きでもない殿方と婚約させられて、冤罪をかぶせられ殺されるだなんて。」

 「はぁ?アンタ何言ってるのよ!それじゃ私がアナベルを嵌めたみたいでしょうが!私はエヴァリストの寵愛を受けているのよ!アンタなんかいつでも陥れてやるわ!」

「ついでに言っとくけどね。アナベルは普通の事故死じゃないのよ。御者に金を握らせて頼んで、アナベルだけを亡き者にしようとしたら、あの御者操縦を誤って、自分も馬車ごと転落しちゃったのよ。バカみたい。おかげで口封じの手間が省けたわ。」

 「まぁ、ずいぶんコワイのですね。」

 「だから、私を怒らせたら、アンタもアナベルのようにしてやるわよ。」

 「お手柔らかに。お願いいたしますわ。」

 ロザリー(アナベル)は、ショックだった。自分は修道院送りだけでもショックだったのに、さらにリリアーヌに追い打ちをかけるように殺されるところだったのだ。

 魔道具で今の会話はすべて、録音しているから、後で使い道を考えよう。

 命は命でないと償えない。ここは、リリアーヌにも同じ目に遭ってもらおう。と考えていたら、急にリリアーヌが芝居じみたことを始めて驚いていたが、すぐさまこれを利用してやろうと思いつく。

 「ひどいっ!私の身分が低いからって、どうしてそんなこと言うんですか!それにたたくなんて…!私に暴力をふるっていいと思っていらっしゃるんですね!」

 急に、大声を張り出した。そう前世も、これでやられたんだわ。
 わたくしは、リリアーヌの横っ面を力任せに思い切り、ぶっ叩いた。手が痛い。
 キョトンとするリリアーヌ。まさか反撃されるとは、思わなかったのだ。

 「まあ!リリアーヌさん、大丈夫ですか?早く医務室へ行きましょうね。」

 「ふざけんじゃないわと!何するのよ!」相当キレている。ざまあみろ。

 「まあ、せっかくお友達になれたと思ったのに、やっぱりあなた様は王太子殿下の婚約者になったわたくしが憎いのですね。」

 ウソ泣きでポロポロ涙を流す。周りにいた貴族たちは、ロザリーに同情的だ。

 「いくら王太子殿下の愛人とはいえ、ロザリー嬢に辛く当たるのは違うだろ。」
 「何様のつもりだ。」
 「ロザリー様は、王妃になるお方、愛人をのさぼらせてはいけませんわ。」

 「私はほっぺたを叩かれたのよ。」

 「それは、リリアーヌ様の頬に虫が止まっていて、追い払おうとしただけですわ。」

 この言い分に、皆同意した。王太子殿下も含めて。アナベルの時は、そんなこと言わなかったからだ。

 ロザリーは、すぐさま動いた。あの魔道具の録音をジオノ公爵と国王陛下に聞かせたのである。ジオノ公爵に対して、娘であると名乗りはできなかったが、元・父は、ひどくやつれていて見ていられないほどだった。娘が男爵令嬢ごときに嵌められ、殺されそうになって、死んだのだから、怒り心頭で今にも仇討ちをしそうだったから、必死になって止めていたら

 「アナベルか?」

 小声で聞かれ、思わず頷いたわ。

 「わたくしが、きっちり始末をつけますから、お父様は動かないでくださいませ。」

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