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16.侯爵邸にて

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 その日の帰りがけに、マクシミリアン様から、1対のリングを見せられる。指輪にしては、ずいぶんと大きな輪に、驚いていると、ひとつはマクシミリアン様自身の根元に嵌められ、もう一つは、ミッシェルの花弁の中心部に埋め込まられたのだ。

 「これは?」

 「魔道具さ。ミッシェルの身の安全を守ってくれるお守りみたいなもの。だから勝手に外しちゃダメだよ。」

 「わかったわ。マクシミリアン様も、浮気なんてしないでね。」

 「このリングを嵌めたら、浮気ができないということを証明しているようなもので、リングの力で、ミッシェルは俺以外の男と交わうことができない。俺は、ミッシェル以外の女性を抱くことすらできないという誓いのリングなのだよ。そのために1対になっているのさ。」

 「嬉しいわ。マクシミリアン様、もうこれで完全にマクシミリアン様だけの女になれたのですね。」

 「ああ、そうだとも。」

 「ねぇ、もう1回いい?リングの効果を知りたくて。」

 というのは、冗談で、目の前で、リングを嵌められるところを見てしまい、また欲情してしまったのだ。

 「ミッシェルは、欲張り屋さんだね、可愛いよ。愛している。」

 服を着たまま、下半身だけをあらわにされ、腰を打ち付けられている。確かにbefore,afterでリングを嵌めた方が格段に感じやすくなっている。いやいやもともとスキモノなだけだろうけど、マクシミリアン様のリングとミッシェルのリングがぶつかり合う音が興奮をそそる。

 「あっ。あっ。良すぎる!イクー。」

 「俺もだ。もう我慢ができない!イク。」

 その後、マクシミリアン様が、何度目かの清浄魔法をかけてくださり、綺麗になってから玄関を出る。

 馬車で帰れば、1分足らずだけど、今日は、なんだか歩きたい気分。

 あれだけマクシミリアン様とやっても、リング効果なのか、あまり下半身に違和感はない。

 ウキウキとした気分で歩いて帰ると、玄関前にダニエルが待っていた。

 え?なんで?ここに?

 「会いたかった。ミッシェル。中に入ってもいいか?ちょっと見ない間に綺麗になったね。」

 元婚約者の登場に驚きは隠せないものの、ダニエルとは幼馴染の関係なので、疑いもせずに侯爵邸の中に入れてしまう。

 一応、応接室に通し、用件は何なのかを聞くことにする。

 「俺との婚約がダメになってから、ずいぶん後悔したのだよ。でも、ミッシェルが幸せになったって、人伝に聞いて、一言おめでとうが言いたくて、来てしまったのだよ。」

 「そう。ありがとう。」

 「今、幸せかい?」

 「ええ。とっても。」

 「良かったな。」

 ミッシェルは、今が幸せすぎて、ダニエルに会ったら、恨み言を言ってやろうと思っていたことをすべて、忘れてしまっている。

 「ミッシェルの部屋に入ってもいいか?」

 一応、男性だから断るべきなのかもしれないけど、今までさんざん積み木をして、遊んできた仲なので、何も思わなく警戒心を緩め、部屋に引き入れた途端、ダニエルはオオカミに変貌する。

 ナイフを片手に、「服を脱げよ。」と脅してきたのだ。

 ミッシェルには、結界が張ってあるから、たぶん、これ以上近寄れないはずだとわかっていても、やっぱりコワイ。

 恐る恐る服を脱ぎだすと、ダニエルの目の前に飛び込んできたのは、ミッシェルのカラダにある無数のキスマークに一瞬たじろぐ。

 ああ、これね。さっきマクシミリアン様が念入りにマーキングしたっておっしゃっていたわね。

 ほとんど戦意喪失しているところに、ミッシェルのカラダに障ろうとダニエルが手を伸ばすが、ビシっと結界に阻まれてしまう。

 「はぁ?なんなんだよ?これは、いったい?」

 「結界よ。マクシミリアン様がわたくしのカラダに張ってくださっているのよ。」

 どうしても、諦めきれないダニエルは、触ることがかなわないのなら、せめて見てやろうと、ミッシェルに花弁を開くように、指で開いて見せてくれと言う。

 もう、脅しというより、懇願に近い。

 仕方なく、言うとおりにすると、そこにはシャルパンティエ家の紋章入りのリングが嵌められていて、敗北を悟った。

 騎士団に自首するダニエルの後姿がわびしい。
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