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11.侯爵邸にて

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 帰りの馬車の中でも、マクシミリアン様は、ミッシェルに蕩けそうな微笑みを浮かべてくださる。

 マクシミリアン様の手はミッシェルの腰を抱いたまま、微動だにされない。

 アインシュタイン侯爵家の前に着くと、名残惜しそうになかなかつないだ手を放そうとなさらない。

 「中へどうぞ。少し、お茶でもされませんか?」

 思わず、ミッシェルがそういうと、ぱぁっと表情を明るくされたマクシミリアン様。応接室にお通しして、制服から、普段着のドレスに着替えてくる。

 急いで、応接室に戻ると、どういうわけか、父とマクシミリアン様が対峙した格好で座っていらっしゃる。

 「え……と、お父様?」

 「ミッシェル、お帰り。今、マクシミリアン殿と学園のことをいろいろ聞いていたのだよ。男親は、どうしても娘のことが心配で、マクシミリアン殿が将来のことを考えてくださっていて、本当に良かったと思っているよ。これからも、ミッシェルのことをよろしく頼む。」

 「お義父さん、謝を上げてください。私は、ミッシェル嬢のことを本当に心から愛しています。ですが、今は卒業式までは何も動けないのです。どうか、お許しください。」

 「いやいや、そんなことはいいのですよ。娘を幸せにしてくださるというお気持ちさえあれば、親としては、何も言うことがないのです。」

 へ?お義父さん?将来のこと?いったい何の話?

 ミッシェルが加わったので、2敗目のお茶が注がれる。ついでにお茶菓子も、今日はマーリン堂の焼き菓子だ。

 セックスの後って、無性にお腹がすくから、いくつもお皿に取り、バリバリ食べる。

 「コラ。マクシミリアン様の前で、お行儀が悪い。お前はいつまで経っても、色気よりも食い気が先行するのだからな。」

 そんなことないですよー。頬を膨らませていると、マクシミリアン様が笑いながら、

 「そういうところが愛おしいのです。」

 その言葉に思わず、むせこんでしまった。さっきまでのめくるめく快楽を下さった張本人がそれを言う?

 「こんな娘をそこまで思っていてくださり、ありがとうございます。では、今日のところは、仮ということでの認識でかまいませんでしょうか?」

 「はい。それで、よろしくお願いしますが、くれぐれも他言なきように。」

 父もミッシェルとともに、馬車に乗られるところまで、見送る。

 馬車が見えなくなるまで、見送り部屋の中へ入っていく。

 「ねえ、さっき、マクシミリアン様と何のお話していらっしゃったの?」

 「ん?ミッシェルのことさ。」

 「だから、何?」

 「っふ。まだ、言えない。秘密だよ。」

 「えー!教えて、ねぇ、教えて。」

 「だーめ。」

 翌朝、今日は、王太子殿下の馬車が先に到着したので、それで通学することにした。ということは、今日の当番はクリストファー殿下で間違いないのだろう。

 当然、放課後のアレも、殿下になる見込み。殿下のアレは、ちょっとばかし乱暴なのよね。でも、学園人気の半分は殿下にあるぐらいイケメンなのだ。イケメン男子にかわるがわる抱かれるミッシェルは、果報者というわけ。

 だから、別に不満はない。たとえ、お情けであってもありがたく頂戴いたしますというところ。

 王太子殿下の馬車は、すぐに出発されるので、急いで、身支度を整えなければ置いて行かれる?わけではないだろうけど、焦る。

 そして、馬車に乗るとすぐ、ミッシェルの肩にクリストファー殿下は頭を乗せられる。これが、結構重い。クリストファー様は賢いから重いのか?ダニエルもマクシミリアン様も頭を乗せられることがなかったので、わからない。

 くるくるパーの頭でも重いのかどうか、わからないまま、学園に着く。王太子殿下が先に降りられ、ミッシェルが降りようとした時、緊張が走った。何者かがミッシェルの頭をめがけて、植木鉢を落とそうとしたのだ。

 王太子の護衛騎士がいち早く気づき、難を逃れたわけだが、一体誰がこんなことを……。

 その犯人は、すぐに捕まった。

 男爵令嬢リリアーヌ様で、昨日に引き続き、今日もまた嫌がらせをされたようだ。
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