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番外編:レオナルド
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バブーの背中は、乗り心地がいい。馬に比べて早いが、風よけの魔法を施してくれているので、快適そのものなのだが、レオナルドに早馬で連絡してきた騎士や1個師団は、バブーの本気の速さについて行けず、悲鳴を上げている。
「レオナルド様、今、しばらくお待ちを!」
「よい。先に戻っている。お前たちは、後からゆるりと来い」
馬はつぶれ、代わりの馬を手配しようにもできない。人間が走って追いかけることなど到底かなわないから、早馬の騎士に怒りを八つ当たりするばかり。
すっかり日も暮れて、騎士団を撒いた頃を見計らって、バブーとレオナルドは一足先に転移魔法を使い、王都のセレナーデ家に到着する。
バブーを休ませ、家令に王家から、立太子の儀式が行われる予定があることを告げ、早々に部屋に閉じこもる。
実は、レオナルドにはセントルイスに残してきた令嬢がいる。婚約はしていないが、幼いころからのいわば幼馴染で、いずれ時が来れば嫁にしたいと考えていた娘なのだ。
まだプラトニックな関係だが、レオナルドがバルセロナに留学すると決めた時、泣いて縋ってこられ、正直「可愛い」と思った。
その娘はジェーン・リスボン伯爵令嬢。伯爵令嬢が王族とは結婚できないしきたりはあるが、レオナルドはレオンハルトの庶子のような扱いだとばかり思っていたので、気にも留めていなかったが、ここにきて立太子とは……。
いやはや困った。
将来、セントルイスがバルセロナを手に入れるためには、レオナルドが王太子になることは好ましいことだが、ジェーンのことはどうなる?
なんとなく気が付けば、ゲートをくぐりセントルイスの城に来ていた。そして、両親の寝室をノックしようとしたら、中から喘ぎ声が聞こえてくる。
息子を全部バルセロナに送っちまったから、もうおっ始めているとは……、レオナルドだってまだジェーンと手を繋いだだけで、キスもしていないというのに。
記憶はないが、物心ついた時から両親は、異常と思えるほど仲が良かった。いつも一緒で、どこかしらカラダの一部が繋がったままだったように思う。
レオナルドが熱を出して、寝込んでいるとき、夜中にふと目が覚めると両親が素っ裸のままで抱き合っていたこともあった。
その時は、何も思わなかったが、今から思えば、息子が熱を出している夜まで、二人は睦あっていたということだと知り、恥ずかしいやら、なんやら複雑な気分でいたことを覚えている。
おかげで閨教育を受けずとも、早くそのことを知って良かったのかもしれない。
いったんは廊下を引き返したが、やっぱりまだモヤモヤ感がとれない。それでお邪魔虫だとわかりつつも、両親の寝室をノックしてみた。
急に無言になり、その後、どこか慌てたような音がすると、父が扉を開いてくれた。
「どうした?レオナルド、入っていいよ」
「母上は?」
「ああ……今、風呂に入っている。構わないから、もう入りなさい」
レオナルドは、モジモジしながら
「実は、好きな令嬢がいます。それなのに、立太子なんてすれば、彼女はどうなるかが気になって……王都へは今しがたバブーと共に戻ってきました。騎士団を撒くような形になったけど、バブーに乗って帰った方がはるかに速いので」
「そうか。その好きな令嬢とは?」
「はい。ジェーン・リスボン伯爵令嬢です」
「ああ。リスボン伯爵のところの一人娘だったか……、よく城へ遊びに来ていたね。レオナルドはその娘のことが好きなんだね?わかった。一度、リスボン殿に聞いてみて婚約できるようなら、婚約を結べるようにするよ」
「え!いいのですか?」
「もちろんレオナルドの片思いに終わるかもしれないけど、それは覚悟しとけばいいよ」
「伯爵家とは婚儀を結べないと伺いましたが……」
「うん。昔はそうだった。そんなものもし誰かが反対したなら、レディ・ジェーンをどこかの高位貴族の養女にしてしまえばいいだけのことさ。心配いらない」
「父上、ありがとうございますっ!」
レオナルドは、そのままスキップしたいぐらい小躍りしたいぐらいの気持ちになって、ゲートをくぐっていった。
風呂場に逃げ込んだバレンシアは、その話をそっと聞いていた。早いものね。もうレオナルドに好きな娘ができていたなんて。
そしてレオンハルトとの初体験は17歳だったことを思い出して、一人赤面していた。
怖くて。痛くて。の思い出しかない。
「レオナルド様、今、しばらくお待ちを!」
「よい。先に戻っている。お前たちは、後からゆるりと来い」
馬はつぶれ、代わりの馬を手配しようにもできない。人間が走って追いかけることなど到底かなわないから、早馬の騎士に怒りを八つ当たりするばかり。
すっかり日も暮れて、騎士団を撒いた頃を見計らって、バブーとレオナルドは一足先に転移魔法を使い、王都のセレナーデ家に到着する。
バブーを休ませ、家令に王家から、立太子の儀式が行われる予定があることを告げ、早々に部屋に閉じこもる。
実は、レオナルドにはセントルイスに残してきた令嬢がいる。婚約はしていないが、幼いころからのいわば幼馴染で、いずれ時が来れば嫁にしたいと考えていた娘なのだ。
まだプラトニックな関係だが、レオナルドがバルセロナに留学すると決めた時、泣いて縋ってこられ、正直「可愛い」と思った。
その娘はジェーン・リスボン伯爵令嬢。伯爵令嬢が王族とは結婚できないしきたりはあるが、レオナルドはレオンハルトの庶子のような扱いだとばかり思っていたので、気にも留めていなかったが、ここにきて立太子とは……。
いやはや困った。
将来、セントルイスがバルセロナを手に入れるためには、レオナルドが王太子になることは好ましいことだが、ジェーンのことはどうなる?
なんとなく気が付けば、ゲートをくぐりセントルイスの城に来ていた。そして、両親の寝室をノックしようとしたら、中から喘ぎ声が聞こえてくる。
息子を全部バルセロナに送っちまったから、もうおっ始めているとは……、レオナルドだってまだジェーンと手を繋いだだけで、キスもしていないというのに。
記憶はないが、物心ついた時から両親は、異常と思えるほど仲が良かった。いつも一緒で、どこかしらカラダの一部が繋がったままだったように思う。
レオナルドが熱を出して、寝込んでいるとき、夜中にふと目が覚めると両親が素っ裸のままで抱き合っていたこともあった。
その時は、何も思わなかったが、今から思えば、息子が熱を出している夜まで、二人は睦あっていたということだと知り、恥ずかしいやら、なんやら複雑な気分でいたことを覚えている。
おかげで閨教育を受けずとも、早くそのことを知って良かったのかもしれない。
いったんは廊下を引き返したが、やっぱりまだモヤモヤ感がとれない。それでお邪魔虫だとわかりつつも、両親の寝室をノックしてみた。
急に無言になり、その後、どこか慌てたような音がすると、父が扉を開いてくれた。
「どうした?レオナルド、入っていいよ」
「母上は?」
「ああ……今、風呂に入っている。構わないから、もう入りなさい」
レオナルドは、モジモジしながら
「実は、好きな令嬢がいます。それなのに、立太子なんてすれば、彼女はどうなるかが気になって……王都へは今しがたバブーと共に戻ってきました。騎士団を撒くような形になったけど、バブーに乗って帰った方がはるかに速いので」
「そうか。その好きな令嬢とは?」
「はい。ジェーン・リスボン伯爵令嬢です」
「ああ。リスボン伯爵のところの一人娘だったか……、よく城へ遊びに来ていたね。レオナルドはその娘のことが好きなんだね?わかった。一度、リスボン殿に聞いてみて婚約できるようなら、婚約を結べるようにするよ」
「え!いいのですか?」
「もちろんレオナルドの片思いに終わるかもしれないけど、それは覚悟しとけばいいよ」
「伯爵家とは婚儀を結べないと伺いましたが……」
「うん。昔はそうだった。そんなものもし誰かが反対したなら、レディ・ジェーンをどこかの高位貴族の養女にしてしまえばいいだけのことさ。心配いらない」
「父上、ありがとうございますっ!」
レオナルドは、そのままスキップしたいぐらい小躍りしたいぐらいの気持ちになって、ゲートをくぐっていった。
風呂場に逃げ込んだバレンシアは、その話をそっと聞いていた。早いものね。もうレオナルドに好きな娘ができていたなんて。
そしてレオンハルトとの初体験は17歳だったことを思い出して、一人赤面していた。
怖くて。痛くて。の思い出しかない。
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