64 / 76
新しい出会い
64.公爵
しおりを挟むエルモアの便利通路のおかげで、疑いが晴れた王子殿下連中は、あれだけのチートスキル保持者が子爵などとは、爵位が低すぎると父である国王陛下に訴え出て、エルモアとジャクリーンは、公爵の位をもらえることになったのだ。
ジャクリーンの養子であるアルフレッドもまた、それに引きずられるような形で男爵位から伯爵位に爵位が上がる。
爵位が上がったところで、別に何も変わらない日常がある。ただ毎月?毎年?国からいただけるお給金が少し上がったぐらいなもの。学生の身分だから、実感としてはゼロなのだが、アルフレッドは伯爵になってから、またまた縁談に事欠かないようになったみたい。
確かにかっこいい。若き伯爵さま。シャルマン様と出会わなかったら、ジャクリーンが嫁候補として、立候補したいぐらいだけど、シャルマン様がいたからアルフレッドの良さが際立って見えたことも確かで。
もう鶏が先か、卵が先かの議論になりそうな話。
それにこの前、エルモアからレバトリーの図書室で聞いた話によれば、あのテレビ局のアラサーと一緒にいた時、すでにヒアリングは完ぺきだったという話に、マジでムカつく。
アルフレッドは、ヒアリングなどわからなくても、わたくしの盾となるべく立ち位置で、守ろうとしてくれたのに対して、シャルマンはどう思っていたのだろうか?
ただ浮気がバレて、オドオドしていたにすぎない。そういうところがムカつく。
でも、なんだかんだ言ってもシャルマンとは腐れ縁のようなもの。愛してはいるが、ウザイと思うところもある。
別れたいと思うこともあるけど、めんどくさい。
それに今度こそ別れでもしたら、また断罪ルートになるかもしれない。シャルマンの父レバトリー宰相がうまくやってくれているおかげで、首の皮一枚でつながっているだけかもしれないのだ。
だからこそ、アルフレッドと道ならぬ恋に落ちたいという願望を持つのかもしれないが、こればかりは絶対秘密の内緒の話。
シャルマンとは、あんなことやこんなこと、他人には絶対に言えない恥ずかしい痴態をさんざんさらけ出してきた仲でもある。
ちょうど性に興味を持った健康的な若い男女が偶然とはいえ、出会ってしまったのだから自然な成り行きで、行けるところまで突っ走った感がある。
そのせいで、最近のシャルマンは、少々ドSになり、それを知らず知らずに受け入れているジャクリーンもまたドMになりつつある。
もうアブノーマルでなければ満足できないかも?という恐怖心にさいなまれる毎晩。ただ、ろうそくはイヤ、それと縛られて上からつるされるのもイヤだな。毛羽たき責めと、吸盤オモチャと目隠しは辛抱する。
もうはた目から見れば、十分変態だと思うレベルだが、本人たちは気づかない。
アルフレッドが見てしまったら、どう思われるかが怖い。
そもそも見られる危険性がないから、安心していたらいいと思う。
ひょっとしたらアルフレッドに見られたいという願望があるのかもしれない。絶対ないとは言い切れない。3Pでヤるのも悪くはないかもと思っている自分が怖い。これ以上、エスカレートすることなく、そろそろ軌道修正に入った方が身のため、家のためかもしれない。
夏休みに入り、ここの所毎日、本郷の図書館に入り浸り、スーパー速読魔法で読書三昧の日々を過ごしている。
またキャサリン様に自殺されないように気を付けなければならないエルモアなのだが、エルモア自身口に出していないが、キャサリン様にそろそろ飽きが出てきているのかもしれない。
変態プレイをしたら、飽きないわよ。とは、死んでも言えない。
それとも4人でスワッピングごっこする?ってことも、これまた死んでも口にできない。第一、双子でスワッピングなんて、気持ち悪いだけ。考えられない。スワッピングの相手がアルフレッド様ならいいけど?
だいたい、あの自殺の原因が服毒自殺なんて、どう考えても恋愛がらみの話としか思えない。エルモアの気を惹きたいキャサリン殿下が狂言で致死量を超える毒を呷ったとしか考えられない。
でも、その手なら二度目は使えないわよ?
そうそういつも、ジャクリーンが女子寮の部屋にいるとは限らないから、でも今は、うまくいっているみたいだから良いけど、キャサリン王女は少々情緒不安定なところがあるのかもしれない。まぁ普通なら高校生ぐらいの年齢はそうかもしれないけど、前世の記憶があるジャクリーンとエルモアは特別大人なのだけかもしれないけど。
前世プレイボーイだったエルモアには、考えられないこともないけど、女の子を不安にさせるような男は、カスよ。不安にさせないようにうまく立ち回って、と願うだけ。
ちゃんとやっているとは思うけど、それでも不安になるのが女心というもの。今度ブルオードで公爵になってしまったのだから、余計キャサリンは心配になっているだろう。顔だけは十分すぎるほどいいから。リアル王子殿下より、はるかにかっこいい。
そういうジャクリーンも絶世と謳われるほどの美女なのだけど、こればかりは本人の自覚が伴っていないから困りものなのだ。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」
***
ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。
しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。
――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。
今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。
それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。
これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。
そんな復讐と解放と恋の物語。
◇ ◆ ◇
※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。
さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。
カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。
※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。
選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。
※表紙絵はフリー素材を拝借しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる