63 / 76
新しい出会い
63.勉強2
しおりを挟む
あの日のように、実際にクリニックの中を通って、女子寮の一室に行けるかどうかの検証が行われることになったのだ。
「私ができるのは、入り口部分を自在にどこにいても出すことができるというスキルしかございませんが、妹だけが、裏口を自分の近くに置くことができるのです。だからもし、妹が嫁ぎ先の領地にいたとしたら、急患のベルは聞こえず、助けられないということになります。」
「では実際に通って見せましょう。今秋はわかりやすくするために、クリニックの入り口部分をお見せします。」
何もない空間のところが、急に建物らしき入り口が出現する。それだけで、審問官たちの間にどよめきが広がる。
「中にジャクリーンが待っているかもしれませんが、お気になさらずに。あ!それとこの建物の仲は滅菌状態にしておりますので、入る前は必ず手洗いをしてから入ってくださいね。手洗いが済めば、靴のカバーと手袋とヘアキャップをお渡ししますので、できましたらそれをかぶって、入っていただけますか?」
審問官も王子殿下も言われたとおり、手洗いをしてマスク着用、ヘアキャップと手袋、靴底にはカバーを嵌めている。
非常に素直、これぐらいでないと本来は入れないということを示しておかなければ、今後、どんなに乱雑に便利通路として使われるかわからないから。あえて滅菌であるということを強調しているのである。
「では、お気をつけて。」
審問官たちも、そして一度目は通ったはずの王子殿下たちも中にある医療器具に目を白黒させている。
50歩あたり歩くと扉があり、そこを開けると女子寮の書斎のクローゼットに穴が開いたようになっている。
確かに雰囲気が違うところに出たが、ここが女子寮だと言われても正直なところ分からない。
女子寮だとわかるのは、この部屋を出てから出ないと見当がつかない。
そこで、審問官の一人が代表して、見てくることになったのだが、誰が代表者になるかで今度はモメている。
結局、平等にしようということになり、全員で女子寮かどうかの確認に行くことになったのだ。
頭の禿げたオジサン審問官がジャクリーンの部屋の扉を開け、一歩踏み出したところで、もう悲鳴が上がっている。
王子殿下が、女子寮から出てきたときでも、ここまでの悲鳴は聞かれなかった。
「きゃぁっー!」
「痴漢!」
「変態!」
「あっち行ってー!」
枕は投げつけられるわ。花瓶は投げつけられるはで、大惨事になっている模様だが、放っておくことにした。
もとはと言えば、王子様たちに冤罪を着せようとしたのは、そちらではございませんこと?
こうして王子殿下たちの容疑は晴れたのだ。
ジャクリーンとエルモアは、今度は、正々堂々とレバトリー家の玄関ベルを鳴らす。
「おや、お珍しいことで、今日は子爵様も伴ってこられたのでございますね。」
「あら、わたくしも子爵を拝命しておりますわよ。」
「そうでございました若奥様、どうぞ中へ。」
「ちょっとゴタゴタがあって、なかなか勉強に来られなくなりましたわ。」
「若奥様と子爵様なら、いつでも大歓迎でございますよ。」
今日ここに来た目的は、ひとつ。
回復魔法と治癒魔法をマスターするためである。もう大検を受けずに、この世界で有効な魔法を活用することにした。それで魔法で治らない難しいことだけを現代の医学で補おうという考え方をとことにしたのだ。
せっかく魔法の素養を持って生まれているのだから、これを活用しない手はない。
それにもし、来世、ニッポンに生まれたとしたら、魔法が使えるに越したことはないと思うからで、下手な護身術よりもよほど自分の身を守るのに有効だからと思ったので、真剣に勉強を始めようと考えた。
それにキャサリンを救えたのも、間違いなく治癒魔法のおかげだと思う。今まで治癒魔法の原理など知らなかった分だけ損した気分がなおさらなのだ。
エルモアも、医者だから人体のことがよくわかっている。だから、この世界の治癒魔法の使い手よりは、きちんと覚えたら、習得は早いと思う。
だから誘ってみたわけで、それにしてもシャルマン様がニッポン語を理解しているとは、思わなかった。これからは、内緒話は英語で、それもクイーンズ・イングリッシュではなく、メリケンイングリッシュにしようねと、確認を取り合う。
「モデルの仕事で、1年以上ニッポンにいれば、ヒアリングぐらい完ぺきにこなせると思うよ。読み書きは、まだ無理だろうけど、そのうち読めるようになるかもしれないから、ジャッキーも気を付けた方がいいぜ。」
「そうね。そうするわ。」
「それはそうと、ヴィンセント殿下がジャッキーの下僕になりたがっているよ。」
「なにそれ?下の句ってどういう意味?」
「この前、シャルマン殿とイチャついたろ?それで、妻に臨むことをあきらめられたようなのだが、それならば少しでも一緒にいたいという思いから下僕を志願されているみたいだ。」
「うそ!?シャルマン様とイチャついたって?」
「聞いたぜ。シャルマン殿がジャッキーに馬乗りになって、頬をペチペチ叩かれたら、とんでもないような甘い声でジャッキーが反応したらしいぜ。」
そういって、お兄様はニヤニヤする。
「王子殿下連中は、その時のジャッキーの声が耳から離れないって、ボヤいていたぜ。」
「うそだぁー!」
あの時は、初めて使った治癒魔法のせいで、自分をコントロールできなかっただけと、心の中で言い訳をする。
「私ができるのは、入り口部分を自在にどこにいても出すことができるというスキルしかございませんが、妹だけが、裏口を自分の近くに置くことができるのです。だからもし、妹が嫁ぎ先の領地にいたとしたら、急患のベルは聞こえず、助けられないということになります。」
「では実際に通って見せましょう。今秋はわかりやすくするために、クリニックの入り口部分をお見せします。」
何もない空間のところが、急に建物らしき入り口が出現する。それだけで、審問官たちの間にどよめきが広がる。
「中にジャクリーンが待っているかもしれませんが、お気になさらずに。あ!それとこの建物の仲は滅菌状態にしておりますので、入る前は必ず手洗いをしてから入ってくださいね。手洗いが済めば、靴のカバーと手袋とヘアキャップをお渡ししますので、できましたらそれをかぶって、入っていただけますか?」
審問官も王子殿下も言われたとおり、手洗いをしてマスク着用、ヘアキャップと手袋、靴底にはカバーを嵌めている。
非常に素直、これぐらいでないと本来は入れないということを示しておかなければ、今後、どんなに乱雑に便利通路として使われるかわからないから。あえて滅菌であるということを強調しているのである。
「では、お気をつけて。」
審問官たちも、そして一度目は通ったはずの王子殿下たちも中にある医療器具に目を白黒させている。
50歩あたり歩くと扉があり、そこを開けると女子寮の書斎のクローゼットに穴が開いたようになっている。
確かに雰囲気が違うところに出たが、ここが女子寮だと言われても正直なところ分からない。
女子寮だとわかるのは、この部屋を出てから出ないと見当がつかない。
そこで、審問官の一人が代表して、見てくることになったのだが、誰が代表者になるかで今度はモメている。
結局、平等にしようということになり、全員で女子寮かどうかの確認に行くことになったのだ。
頭の禿げたオジサン審問官がジャクリーンの部屋の扉を開け、一歩踏み出したところで、もう悲鳴が上がっている。
王子殿下が、女子寮から出てきたときでも、ここまでの悲鳴は聞かれなかった。
「きゃぁっー!」
「痴漢!」
「変態!」
「あっち行ってー!」
枕は投げつけられるわ。花瓶は投げつけられるはで、大惨事になっている模様だが、放っておくことにした。
もとはと言えば、王子様たちに冤罪を着せようとしたのは、そちらではございませんこと?
こうして王子殿下たちの容疑は晴れたのだ。
ジャクリーンとエルモアは、今度は、正々堂々とレバトリー家の玄関ベルを鳴らす。
「おや、お珍しいことで、今日は子爵様も伴ってこられたのでございますね。」
「あら、わたくしも子爵を拝命しておりますわよ。」
「そうでございました若奥様、どうぞ中へ。」
「ちょっとゴタゴタがあって、なかなか勉強に来られなくなりましたわ。」
「若奥様と子爵様なら、いつでも大歓迎でございますよ。」
今日ここに来た目的は、ひとつ。
回復魔法と治癒魔法をマスターするためである。もう大検を受けずに、この世界で有効な魔法を活用することにした。それで魔法で治らない難しいことだけを現代の医学で補おうという考え方をとことにしたのだ。
せっかく魔法の素養を持って生まれているのだから、これを活用しない手はない。
それにもし、来世、ニッポンに生まれたとしたら、魔法が使えるに越したことはないと思うからで、下手な護身術よりもよほど自分の身を守るのに有効だからと思ったので、真剣に勉強を始めようと考えた。
それにキャサリンを救えたのも、間違いなく治癒魔法のおかげだと思う。今まで治癒魔法の原理など知らなかった分だけ損した気分がなおさらなのだ。
エルモアも、医者だから人体のことがよくわかっている。だから、この世界の治癒魔法の使い手よりは、きちんと覚えたら、習得は早いと思う。
だから誘ってみたわけで、それにしてもシャルマン様がニッポン語を理解しているとは、思わなかった。これからは、内緒話は英語で、それもクイーンズ・イングリッシュではなく、メリケンイングリッシュにしようねと、確認を取り合う。
「モデルの仕事で、1年以上ニッポンにいれば、ヒアリングぐらい完ぺきにこなせると思うよ。読み書きは、まだ無理だろうけど、そのうち読めるようになるかもしれないから、ジャッキーも気を付けた方がいいぜ。」
「そうね。そうするわ。」
「それはそうと、ヴィンセント殿下がジャッキーの下僕になりたがっているよ。」
「なにそれ?下の句ってどういう意味?」
「この前、シャルマン殿とイチャついたろ?それで、妻に臨むことをあきらめられたようなのだが、それならば少しでも一緒にいたいという思いから下僕を志願されているみたいだ。」
「うそ!?シャルマン様とイチャついたって?」
「聞いたぜ。シャルマン殿がジャッキーに馬乗りになって、頬をペチペチ叩かれたら、とんでもないような甘い声でジャッキーが反応したらしいぜ。」
そういって、お兄様はニヤニヤする。
「王子殿下連中は、その時のジャッキーの声が耳から離れないって、ボヤいていたぜ。」
「うそだぁー!」
あの時は、初めて使った治癒魔法のせいで、自分をコントロールできなかっただけと、心の中で言い訳をする。
0
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる