前世記憶持ちの悪役令嬢は聖女様呼ばわりされることが嫌で嫌で仕方がない~乙女ゲームのヒロインにゲームクリアしてもらうために奮闘する

青の雀

文字の大きさ
上 下
59 / 76
新しい出会い

59.勉強1

しおりを挟む
 新学期が始まり、学園に中退届を出さないまま、またレバトリーの領地から女子寮に通学し?学園に通うことになったのだ。

 シャルマンから強く勧められ、中退をあきらめたのだが、今月中にも男爵令嬢のリリアーヌが転入してくることが最大の恐怖には変わりがない。

 ところがその最大の恐怖が学園に転入してきたという噂は聞かない。ん?どうしたのだろう。ヒロインのことを心配しているわけではないが、何か手違いがあったのでは?と思ってしまう。

 アルフレッドは、ジャクリーンから領地を贈与されたことにより、新たに男爵位を拝命し、学園内で時折すれ違いざまにジャクリーンの方を見て、笑顔で「お義母さん」と呼ぶことは止めてね。

 アルフレッドが男爵になってからというもの、ブルオード国のカーネル様人気の半分がアルフレッドに行ったことは間違いようがない事実になってしまう。

 隣国へお嫁に行く心配がなくなり、同じブルオード国の貴族になられたのだから親が娘に唆すように諭しているのだろう。

 最近は、義母のジャクリーンのところまで付け届けが来るようになったのだ。

 義理の息子とはいえ、同級生なのだからもう少しフレンドリーであってもいいと思う。

 今までエドモンド殿下べったりの側近をしていたくせに、最近は、ジャクリーンの兄エルモアを「伯父さん」と呼び、一緒にいることが増えたような気がする。

 金沢大輔時代でも経験できなかった「伯父さん」が実現できたことが嬉しいらしい。

 もっとも、エドモンド殿下も愛するエリーゼ様と一緒にいられることが増え、側近に近寄られていては、愛も語れないから迷惑なさっているのだと思う。

 それで側近たちもそれぞれの相手を求め、自由行動をしているのだと思われる。

 それにしてもリリアーヌ様の所在が知れないことが不安のような、ホッとしているような複雑な感情を常に持っているが、そろそろ大検に向けて、本格的な受験勉強をしなければ、65年ぶりの受験勉強を再開しなければ、下手をすれば浪人するかもしれないから必死なのだ。

 英語や数学は何とか行けるだろうが、問題は日本史、古文、漢文?現国?ずいぶん長い間、漢字の読み書きをしていないから忘れている部分が相当あると思う。

 それらをもう一度大学受験用のテキストを見ながら覚えなければならない。

 しばらくカントリーハウスへ戻らず、ここで、泊まり込みで勉強した方がよさそうな気もする。

 模擬試験を受けに行くこともそうそうできないから、本当の意味で一発勝負になる。

 同じことをエルモアも感じていたみたいで、毎晩これから二人で特訓することにしたのだ。双子だから学力に変わりがない。

 でもそれを許さず、阻止しようとしているのがキャサリン王女殿下とわが夫シャルマン様である。

 キャサリン殿下は、夜中に女子寮のジャクリーンの部屋を訪ねてこられ、勉強している二人の姿をジロリとにらみつけ、文句をタラタラ言われる。

 正直なところ、それを聞いている時間がもったいないのですけど……?もっぱらなだめる役目をしているのがエルモアで、ジャクリーンは二人を無視して勉強し続けている。

 シャルマン様もレバトリー領地に執務室からマンションを通って、女子寮の中に入ってこられるのだが、こちらは、文句は言われない。ただ早く帰って、ヤろうよ。ということだけ。独り寝は寂しい。うん。それはわかるけど、人生をかけて勉強している者に対しては、言うことではない。

 ソコデ、ハタと思い出したことがある。確か王都にあるレバトリー家の図書室で、スーパー速読魔法なるものが書かれてあった本を見つけていたんだ。その時は、まだ1年生で、将来、こんなものが必要になるとは思ってもみなかったから、その本を最後まで読まずに放置していた。

 アレを全部、読めば受験に役立つこと間違いなし!

 思い出したジャクリーンは、ニッポン語でエルモアにそのことを言う。

 「でかした。」もちろん、ニッポン語で言っているけど、キャサリン殿下とシャルマン様はポカンとした顔で、二人を見つめている。

 「「今日はもう遅いから、明日の放課後にでも、そこへ行って勉強しようか?」」

 その話がまとまったところで、すんなり帰宅することにしたのだ。

 キャサリン殿下は、そのままジャクリーンの部屋から出られるが、エルモアはそうはいかない。いったん書斎の診療所から自室に戻ってから、女子寮から出てこられるキャサリン殿下を待ち受けるという体裁をとる。

 その後、二人がどこにしけこんだのかは、わからない。次の朝、学園でエルモアに会ったら、げっそりとした顔をしていたのに対し、キャサリン殿下は、つやつやとした肌の色をなさっていたから、推してしるべしか。

 放課後は、二人でいったんアナザーライト家に行き、そこで着替えて、レバトリー家のタウンハウスの図書室へと向かう。

 アナザーライト家では、急に二人して帰ってきたことで、学園で何かあったのかと、しきりに尋ねてくるが、レバトリー家で本を読むためとしか答えようがない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...