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新しい出会い
57.京都旅行
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兄に緊急用のベルを鳴らすと、すぐに来てくれて
「内科医としての見立ては?」
「アッペだと思うのだけど?」
「虫垂炎か……、虫垂炎ぐらいなら、すぐ手術すれば助かるのだけど、放っておくと手遅れになり、腹膜炎を起こして死ぬ可能性があることは知っているね?」
「ええ。レントゲン車を買うにも、置き場所がなくて、どうしようかと悩んでいたのよ。」
「とにかく抗生物質を飲ませてみるわ。後は、様子見して、それで治らないようなら、お兄様に手術をお願いすることになるわ。」
「わかった。ところでその格好をしているということは、異世界で?」
「新婚旅行に行くつもりだったのだけど、いつまで待ってもシャルマン様が来られないから見に来たら、こんなことになっていたのよ。あちらだったら、救急車を呼んでいるところよ。」
「そうだろうな。新婚旅行って、前にも行ったんじゃないのか?また行くとは?」
「兄弟のIPS研究所に仕掛けをしてこなかったことを思い出してね。本郷から新幹線で行くつもりだったのよ。」
「あいかわらず研究熱心だね。ところで大検受けるの?」
「ええ。そのつもりで願書を取り寄せたのよ。大切な人を助けられないようなら、医師失格だもの。」
「そうだよな……。俺も受けようかなぁ。」
「今度は脳神経外科か心臓血管外科あたりがいいかも?でも、お兄様には王配としての仕事が降ってくるかもよ?」
「うーん。それが問題だよ。」
シャルマン様は、初期の段階だったので、抗生物質で散らすことに成功する。
快気祝いを兼ねて、もう一度新婚旅行に行き直すことにした。今度はきちんと説明して、京都にある大学の研究施設に行ってみたいというと、すんなりお許しが出たから。
屋敷の者も、シャルマンが苦しんでいた様を知っているから、何も言わずに送り出してくれる。
誰も付いていきたいと言わないと却って、不気味な気もするけど、その温情に甘えることにしたのだ。だって、目的の半分?70%以上は、勉強に行くのだから。
それに長崎オランダ村には、行こうと思えばいつだって行けるのだから。
本郷から東京駅に出て新幹線に乗り、京都についたのは、まだ午前中、もうすぐお昼だからと、先に京都駅周辺でランチにすることにした。
京都は世界有数の国際観光都市なので、ジャクリーンたち、外国人旅行者にとっては、ぶしつけな視線にさらされることもなく非常に快適に過ごせる。
それに大学が多く、というのも本山クラスの寺院が皆、学校法人を運営していて、宗教関係の大学が多い。
昼食後、八条口に戻り、京都大学直通バスに乗る。京都駅正面から206番に乗れば行けるのだが、三十三間堂、清水寺、八坂神社に知恩院といった観光地を通っていくので、常にバス車内が満員だが、この八条口から出ているバスに乗ると、四条河原町と市役所前にだけ停留所があり、京大までほぼノンストップで行けるから便利なのだ。
熊野神社を超えると、だんだんアカデミックな雰囲気が伝わってくる。ほどなくして京大病院前に到着するが、ここではまだ降りずに、次の京都大学前まで乗る。
京都大学の顔と言えば、まずは時計台。一条通を東に進む。突き当りにある緑の塊と朱塗りの鳥居は吉田神社。その吉田神社を抱きかかえるようにそびえる吉田山が見える。吉田山と言ってもほとんど丘のような高さで、京都大学の運動部の学生はこの山をトレーニングコースよろしく上り下りをしている。
まずは時計台を拝んでそれから東大路をはさんで西側へ移動すると、そこにはIPSの研究施設や医学部、大学院、研究棟が建ち並んでいる。
まずは、附属病院のホスピタルストリートあたりに、まずは一つ目の出入り口を作る。
次に向かった先は、IPSとそれぞれの研究機関がある研究棟に、ここからは白衣を着た医師に案内してもらい、ジャクリーンとシャルマンに隠ぺい魔法をかける。
医師の後をついていけば、それぞれの研究室にたどり着き、暗証番号を押した中の部屋内にまた異世界との出入り口を作る。
同じように、どんどん研究室の暗証番号が解除された部屋の中に出入り口を作り、後は獲物が罠にかかるのを待つだけとなる。
医師は、誰かがついてきている気配があるのか?時折、振り返るが、誰もいない。首をかしげながら、秘密の研究所の中に入っていく。
スクリーンセーバーがかかっているパソコンの前に座り、データを閲覧する。
さすが毎年、ノーベル賞を輩出する大学のことだけあり、それぞれ、様々な研究が行われていることが窺われる。
一つずつ見ていきたい気もするが、そろそろシャルマン様がお疲れのご様子なので、後は異世界出入り口を遣って、見て回ったらいいと思う。
実は、京都旅行の前にレバトリーの空き家を一軒持ってきたのだ。今回は、その空き家に出入り口を仕掛けて片っ端からデータを盗もうという作戦。
その空き家をどこに出そうか、それが思案のしどころなのだ。吉田寮に出しても目立つし、熊野寮に出しても、しかり。最初は吉田山の参道から外れたところに出そうかと思ったが、案外、人通りが多い。鴨川の橋の下には、先住民の方がいらっしゃるし、京都は狭いから何か変わった建物を出すとすぐ目立つ。
結局、大手住宅メーカーが有しているモデルルーム、モデルハウスの一角に事務所のような異国の家を置いた。カギを壊して泥棒や空き巣に入られたところで、他のモデルハウスと違い、電化製品も家具もないから、盗られて困るようなものは何一つない。
その空き家は、元は、倉庫として使われていたものを老朽化したため、もらい受けたものだった。時折、不特定多数の足音が聞こえるぐらいで、異世界から、通り道として使っているだけだから、夜中にはなるべく一人で行かれませんように。
それだけが注意点としてある家。
とにもかくにも、これで京都にも拠点を置くことに成功したわけで、旅の目的はほぼ達成できたというところ。
「内科医としての見立ては?」
「アッペだと思うのだけど?」
「虫垂炎か……、虫垂炎ぐらいなら、すぐ手術すれば助かるのだけど、放っておくと手遅れになり、腹膜炎を起こして死ぬ可能性があることは知っているね?」
「ええ。レントゲン車を買うにも、置き場所がなくて、どうしようかと悩んでいたのよ。」
「とにかく抗生物質を飲ませてみるわ。後は、様子見して、それで治らないようなら、お兄様に手術をお願いすることになるわ。」
「わかった。ところでその格好をしているということは、異世界で?」
「新婚旅行に行くつもりだったのだけど、いつまで待ってもシャルマン様が来られないから見に来たら、こんなことになっていたのよ。あちらだったら、救急車を呼んでいるところよ。」
「そうだろうな。新婚旅行って、前にも行ったんじゃないのか?また行くとは?」
「兄弟のIPS研究所に仕掛けをしてこなかったことを思い出してね。本郷から新幹線で行くつもりだったのよ。」
「あいかわらず研究熱心だね。ところで大検受けるの?」
「ええ。そのつもりで願書を取り寄せたのよ。大切な人を助けられないようなら、医師失格だもの。」
「そうだよな……。俺も受けようかなぁ。」
「今度は脳神経外科か心臓血管外科あたりがいいかも?でも、お兄様には王配としての仕事が降ってくるかもよ?」
「うーん。それが問題だよ。」
シャルマン様は、初期の段階だったので、抗生物質で散らすことに成功する。
快気祝いを兼ねて、もう一度新婚旅行に行き直すことにした。今度はきちんと説明して、京都にある大学の研究施設に行ってみたいというと、すんなりお許しが出たから。
屋敷の者も、シャルマンが苦しんでいた様を知っているから、何も言わずに送り出してくれる。
誰も付いていきたいと言わないと却って、不気味な気もするけど、その温情に甘えることにしたのだ。だって、目的の半分?70%以上は、勉強に行くのだから。
それに長崎オランダ村には、行こうと思えばいつだって行けるのだから。
本郷から東京駅に出て新幹線に乗り、京都についたのは、まだ午前中、もうすぐお昼だからと、先に京都駅周辺でランチにすることにした。
京都は世界有数の国際観光都市なので、ジャクリーンたち、外国人旅行者にとっては、ぶしつけな視線にさらされることもなく非常に快適に過ごせる。
それに大学が多く、というのも本山クラスの寺院が皆、学校法人を運営していて、宗教関係の大学が多い。
昼食後、八条口に戻り、京都大学直通バスに乗る。京都駅正面から206番に乗れば行けるのだが、三十三間堂、清水寺、八坂神社に知恩院といった観光地を通っていくので、常にバス車内が満員だが、この八条口から出ているバスに乗ると、四条河原町と市役所前にだけ停留所があり、京大までほぼノンストップで行けるから便利なのだ。
熊野神社を超えると、だんだんアカデミックな雰囲気が伝わってくる。ほどなくして京大病院前に到着するが、ここではまだ降りずに、次の京都大学前まで乗る。
京都大学の顔と言えば、まずは時計台。一条通を東に進む。突き当りにある緑の塊と朱塗りの鳥居は吉田神社。その吉田神社を抱きかかえるようにそびえる吉田山が見える。吉田山と言ってもほとんど丘のような高さで、京都大学の運動部の学生はこの山をトレーニングコースよろしく上り下りをしている。
まずは時計台を拝んでそれから東大路をはさんで西側へ移動すると、そこにはIPSの研究施設や医学部、大学院、研究棟が建ち並んでいる。
まずは、附属病院のホスピタルストリートあたりに、まずは一つ目の出入り口を作る。
次に向かった先は、IPSとそれぞれの研究機関がある研究棟に、ここからは白衣を着た医師に案内してもらい、ジャクリーンとシャルマンに隠ぺい魔法をかける。
医師の後をついていけば、それぞれの研究室にたどり着き、暗証番号を押した中の部屋内にまた異世界との出入り口を作る。
同じように、どんどん研究室の暗証番号が解除された部屋の中に出入り口を作り、後は獲物が罠にかかるのを待つだけとなる。
医師は、誰かがついてきている気配があるのか?時折、振り返るが、誰もいない。首をかしげながら、秘密の研究所の中に入っていく。
スクリーンセーバーがかかっているパソコンの前に座り、データを閲覧する。
さすが毎年、ノーベル賞を輩出する大学のことだけあり、それぞれ、様々な研究が行われていることが窺われる。
一つずつ見ていきたい気もするが、そろそろシャルマン様がお疲れのご様子なので、後は異世界出入り口を遣って、見て回ったらいいと思う。
実は、京都旅行の前にレバトリーの空き家を一軒持ってきたのだ。今回は、その空き家に出入り口を仕掛けて片っ端からデータを盗もうという作戦。
その空き家をどこに出そうか、それが思案のしどころなのだ。吉田寮に出しても目立つし、熊野寮に出しても、しかり。最初は吉田山の参道から外れたところに出そうかと思ったが、案外、人通りが多い。鴨川の橋の下には、先住民の方がいらっしゃるし、京都は狭いから何か変わった建物を出すとすぐ目立つ。
結局、大手住宅メーカーが有しているモデルルーム、モデルハウスの一角に事務所のような異国の家を置いた。カギを壊して泥棒や空き巣に入られたところで、他のモデルハウスと違い、電化製品も家具もないから、盗られて困るようなものは何一つない。
その空き家は、元は、倉庫として使われていたものを老朽化したため、もらい受けたものだった。時折、不特定多数の足音が聞こえるぐらいで、異世界から、通り道として使っているだけだから、夜中にはなるべく一人で行かれませんように。
それだけが注意点としてある家。
とにもかくにも、これで京都にも拠点を置くことに成功したわけで、旅の目的はほぼ達成できたというところ。
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