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新しい出会い
53.お説教
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「若旦那様、よろしいのでございますか?若奥様をおひとりにして?」
「昨日から、喧嘩中でな、結婚式の最中に言い合いになってしまい、それをまだ引きずっているのだろう。アナザーライトからの侍女がつきっきりになっているから大丈夫だろう。子供のころからの付き合いが長いから、あの者たちに任せておけば間違いはない。」
「それならいいのですが。これからどこへ行きますか?」
「地図をもらっているだろ。この通り、行けば5時までにはここへ戻ってこれるさ。」
「May I help you?」
何度となく、声をかけられていても、自分たちに話しかけられていることさえ、気づかず通り過ぎてしまう一行。
その頃、ジャクリーンたちは、大検事務局にいた。あいにく願書配布までは10日後のことであったが、特別に外国人だということもあり、配布日前でも、なんとか便宜を図ってもらえ、もらえることになったのだ。
後は、お買い物をして、それから美味しいものを食べて、久しぶりに劇団の芝居を観て、約束の集合時間の30分前に駐車場のところまで来たのだが、まだ誰もいない。
アナザーライトの侍女たちも心配そうにしているが、約束の30分前はいくら何でも早すぎたのかもしれない。
そう思い直して、待つこと20分、一向に来る気配すら感じない。これはあれだな?きっと迷子になっているのかもしれない。
迷い異世界人?と言ったところか?
少し高台のところまで行き、そこから拡声魔法を使い園内にいるレバトリー家に向かって、アナウンスを始める。
乙女ゲームの世界語だから、他の人には雑音が入っているようにしか聞こえていないはず。
5分後、戻ってきたのは、レバトリー侍女軍団。でもシャルマン様と護衛騎士の姿はない。
「あのバカ、どこをほっつき歩いている?」
さらに5分経っても、戻ってこないので、侍女には、先にバスに乗り込んでもらうことにし、ジャクリーンひとりがシャルマンを探しに行く。
バスの運転手には、携帯電話の番号を教え、何かあれば携帯へ電話してもらえるように手配する。
シャルマン様にヘリウムガス風船を持たせておけばよかったと、後悔しながら。探し回ること10分間、それは、シャルマン様の鳴き声で分かった。こともあろうにシャルマン様は美人局に引っかかっておられたのだ。
ちょっとカワイイ娘が、シャルマン様によりかかってきて、護衛がそれを払おうとしたら、大げさに転び、それからコワイ人がたくさん出てきて、「俺の女によくも手を出してくれたな。」と脅したらしいが、ニッポン語では、何を言われているかさっぱりわからない一行。
それで埒が明かないので、身ぐるみはがれそうになり、感極まって情けない泣き声を発してしまい、その声でジャクリーンにはシャルマンの居場所を特定することができたというから皮肉なものである。
「どうしたの?」
「若奥様!」
「アナタたち、何者?ギャング?デズニーの運営事務局に通報するわよ!」
ジャクリーンが出てきたことで、ヤバイと思ったコワイ人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行ってしまう。
結局、何も盗られずに済んだことは、よかったかもしれないが時間を盗られたことは大きい。
その夜、ホテルでギュウギュウに絞られたシャルマン様と護衛騎士は、あくる日、ハウステンボスには連れてもらえずに、乙女ゲームの世界に強制送還されることが決まる。
異世界ニッポンは、男が生きられる場所ではないようだ。誘惑が多すぎる。絨毯の上で、正座はよほどキツかったらしく、しおらしく頭を下げるが、シャルマン様だけは、やけに反抗的。今、反抗期なのかしらね。
とにかく明日からは、アナタたちは、レバトリー家に預けますからおとなしくしていなさい。
「新婚旅行なのに、俺だけ置いてけぼりか?」
「新婚旅行はもうやめました。その代わり、侍女たちとの親睦を深めるための女子会旅行に行きます。」
「俺も連れてってよ。ヤダよ、ヤダ、ヤダ。」
「ダメ!異世界は危険と隣り合わせなのよ。1年前のこと忘れたの?」
1年前のことと言えば、あのステーキハウスで、テレビ局のスタッフたちと飲んで、アラサー女性にお持ち帰りされそうになった時の話。
騎士たちは、初めて聞くシャルマンの失態話に興味津々だが、本人に聞くわけにもいかないので、聞き耳を立てている。
「シャルマン様は、いつも、いつも、簡単な手口にすぐ引っかかってしまわれるの。これからは婚約者時代と違って、次期当主としての自覚をもって、慎重に行動していただかないと、しばらくはお父様である宰相閣下の仕事ぶりを見学されたらいかがでございますか?」
「向こうについて、落ち着かれているようであれば、ハウステンボス一日ぐらいは、ご一緒してもよろしいけれど……?」
「本当に?じゃ、おとなしく待っているよ。」
女子会として、ジャンボタクシーでハウステンボスに向かい車内では、何語をしゃべっているかわからない運転手さんを一人にして、大盛り上がりになる。
「昨日から、喧嘩中でな、結婚式の最中に言い合いになってしまい、それをまだ引きずっているのだろう。アナザーライトからの侍女がつきっきりになっているから大丈夫だろう。子供のころからの付き合いが長いから、あの者たちに任せておけば間違いはない。」
「それならいいのですが。これからどこへ行きますか?」
「地図をもらっているだろ。この通り、行けば5時までにはここへ戻ってこれるさ。」
「May I help you?」
何度となく、声をかけられていても、自分たちに話しかけられていることさえ、気づかず通り過ぎてしまう一行。
その頃、ジャクリーンたちは、大検事務局にいた。あいにく願書配布までは10日後のことであったが、特別に外国人だということもあり、配布日前でも、なんとか便宜を図ってもらえ、もらえることになったのだ。
後は、お買い物をして、それから美味しいものを食べて、久しぶりに劇団の芝居を観て、約束の集合時間の30分前に駐車場のところまで来たのだが、まだ誰もいない。
アナザーライトの侍女たちも心配そうにしているが、約束の30分前はいくら何でも早すぎたのかもしれない。
そう思い直して、待つこと20分、一向に来る気配すら感じない。これはあれだな?きっと迷子になっているのかもしれない。
迷い異世界人?と言ったところか?
少し高台のところまで行き、そこから拡声魔法を使い園内にいるレバトリー家に向かって、アナウンスを始める。
乙女ゲームの世界語だから、他の人には雑音が入っているようにしか聞こえていないはず。
5分後、戻ってきたのは、レバトリー侍女軍団。でもシャルマン様と護衛騎士の姿はない。
「あのバカ、どこをほっつき歩いている?」
さらに5分経っても、戻ってこないので、侍女には、先にバスに乗り込んでもらうことにし、ジャクリーンひとりがシャルマンを探しに行く。
バスの運転手には、携帯電話の番号を教え、何かあれば携帯へ電話してもらえるように手配する。
シャルマン様にヘリウムガス風船を持たせておけばよかったと、後悔しながら。探し回ること10分間、それは、シャルマン様の鳴き声で分かった。こともあろうにシャルマン様は美人局に引っかかっておられたのだ。
ちょっとカワイイ娘が、シャルマン様によりかかってきて、護衛がそれを払おうとしたら、大げさに転び、それからコワイ人がたくさん出てきて、「俺の女によくも手を出してくれたな。」と脅したらしいが、ニッポン語では、何を言われているかさっぱりわからない一行。
それで埒が明かないので、身ぐるみはがれそうになり、感極まって情けない泣き声を発してしまい、その声でジャクリーンにはシャルマンの居場所を特定することができたというから皮肉なものである。
「どうしたの?」
「若奥様!」
「アナタたち、何者?ギャング?デズニーの運営事務局に通報するわよ!」
ジャクリーンが出てきたことで、ヤバイと思ったコワイ人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行ってしまう。
結局、何も盗られずに済んだことは、よかったかもしれないが時間を盗られたことは大きい。
その夜、ホテルでギュウギュウに絞られたシャルマン様と護衛騎士は、あくる日、ハウステンボスには連れてもらえずに、乙女ゲームの世界に強制送還されることが決まる。
異世界ニッポンは、男が生きられる場所ではないようだ。誘惑が多すぎる。絨毯の上で、正座はよほどキツかったらしく、しおらしく頭を下げるが、シャルマン様だけは、やけに反抗的。今、反抗期なのかしらね。
とにかく明日からは、アナタたちは、レバトリー家に預けますからおとなしくしていなさい。
「新婚旅行なのに、俺だけ置いてけぼりか?」
「新婚旅行はもうやめました。その代わり、侍女たちとの親睦を深めるための女子会旅行に行きます。」
「俺も連れてってよ。ヤダよ、ヤダ、ヤダ。」
「ダメ!異世界は危険と隣り合わせなのよ。1年前のこと忘れたの?」
1年前のことと言えば、あのステーキハウスで、テレビ局のスタッフたちと飲んで、アラサー女性にお持ち帰りされそうになった時の話。
騎士たちは、初めて聞くシャルマンの失態話に興味津々だが、本人に聞くわけにもいかないので、聞き耳を立てている。
「シャルマン様は、いつも、いつも、簡単な手口にすぐ引っかかってしまわれるの。これからは婚約者時代と違って、次期当主としての自覚をもって、慎重に行動していただかないと、しばらくはお父様である宰相閣下の仕事ぶりを見学されたらいかがでございますか?」
「向こうについて、落ち着かれているようであれば、ハウステンボス一日ぐらいは、ご一緒してもよろしいけれど……?」
「本当に?じゃ、おとなしく待っているよ。」
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