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新しい出会い
45.アルフレッド2
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それからというものジャクリーンは、アルフレッド君を重用するようになる。
ブルオード国の子爵領に度々連れて行き、学園を卒業したら領主代行をしてもらうことを打診する。代行と言っても、それは形だけのことで、事実上の領主持ちと変わらない処遇。
アルフレッド君は、もちろんYesで、義姉のために働くことを誓ってくれた。ジャクリーンは、自分の死後の所有権をアルフレッドに相続させる気でいる。もし、アルフレッドの方が先に亡くなるようなことがあれば、その妻子に相続させるつもりでいる。
普通、公爵の家に生まれても長男だけが領地も爵位も継げるもの。それ以外の兄弟は、貴族の家に養子に出るか、臣下として召し抱えられる立場になる。
それを事実上の領主持ちとなるのだから、Yesの返事をして当然と言えば、当然の返答になる。
事実上の領主持ちになれば、貴族令嬢とも結婚できるし、縁談が殺到することは間違いない。
エルモアを通じ、キャサリン王女から国王陛下にも話が通っている話なので、いずれ、アルフレッドに爵位が与えられることになると思う。
ジャクリーンとしては、この土地のレストランだけあれば、十分なのだ。これで誰にも見られず。好きなところに行き来できるだけで十分と思っている。
もっと早く贈与できるのであれば、その時にでも贈与をするつもりでいる。ただし、レストランだけは使わせてね。という条件付きで。
この領地の使途もアルフレッド君に任せることにしたのだ。当初は、インターチェンジのようなものを作り、観光地化しようと考えたり、あるいは田園地帯にするのも悪くないと思ったりしていたのだが、その使途も含めて、アルフレッド君に贈与する。
自分の好きなように思うように領地経営をしてくれたらいいと思っている。ジャクリーンにとっても、可愛い義弟なのだ。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
デビュタント後、急速に人生の歯車が回り出した。まさにそんな感じの波乱の、幕が切って落とされたのだ。
俺は宰相の息子でありながら、次男だから美味しいところは全部兄貴が持って行ってしまう、あの日まで、ずっとそう思っていたのだ。でもそれは、間違いだったことを後からさんざん思い知る羽目になるとは、その時はまだ知る由もなかった。
デビュタントだというのに、俺には婚約者すらいない。それはこの国の王太子殿下エドモンド様に、いまだに決まったお相手がいないから、高位貴族の息子は皆、エドモンド殿下に遠慮して婚約者を決められないのだ。
それは世界一の美女と謳われた令嬢が、エドモンド殿下との婚約を蹴ったことから始まる。
何が世界一だ。思い上がるなよ。貴様のおかげで、どれだけの貴族令嬢や令息が迷惑を被っていることをわかっているのか?
どんな高飛車なイヤな女かと思っていたら、デビュタントの翌日になり、兄貴とその女が婚約したという話を聞かされ、青天の霹靂とは、まさにこのことかと思ったのだ。
兄貴の婚約者は会ってみると確かに美人だが、普通の少女だった。それで、俺はこんな少女でも小さい時から美人だ、美少女だと言われ続け、自分に何ら責任のないところで勝手に政略の道具にされていると知り、今まで何も知らずに批判してきたことを後悔した。
その少女は、少々ボケているところがあるのか天然なところがあるが、それ以外はとても優しく親切な少女だった。美人に根性悪はいないという通説は本当だと思ったのだ。小さい時から可愛い、綺麗、と言われ続けて育ったのだから、性格が悪いわけがない。
ところがだ。その少女が図書室に入った途端、祖父さんの遺言本を見つけたというから、驚いた。その遺言本は、聖なる少女=聖女様以外は、見つけられないとする代物だったのだから。
レバトリー家は騒然となり、その後、お祭り騒ぎになったことは言うまでもないこと。これは、ひょっとすれば、俺にも運が回ってくるかと思ったよ。実際、回ってきたが。
その聖女様は、遺言本の最初のページの一説をスラスラ読み、地下室への入り口まで開いてしまったのだ。
あんな古語をどうやって、覚えたのだろう。聖女様になるような少女には、簡単なことなのだろうか。
後で祖父さんの遺言本を見たけど、俺にはサッパリ読めるような文字ではなかった。
初日は親父と兄貴が異世界へ行き、俺が行ったのは、確か2日目だったか?セバスチャンと一緒に行ったと思う。
異世界は、もう驚愕の連続だった。でも、異世界人はみんな笑顔だったことが強烈に印象に残っている。
異世界人は人種が違うのか、黒髪黒眼が大半を占めているが、中には我々と似たような肌の色や髪色をしている人間もいるにはいる。
異世界の食べ物は、この世界と似たようなものもあるが、味が全然違う。めちゃくちゃ美味しい。特に肉の美味さは群を抜いていて、柔らかいし、味が濃い。
調理方法もおそらく違うのだろう。この世界には焼くと煮るしかないが、異世界では揚げる、蒸し料理などもあるようだ。
聖女様が作ってくださる料理が特に美味しいと感じるのは、調理のバリエーションもあると思う。
ブルオード国の子爵領に度々連れて行き、学園を卒業したら領主代行をしてもらうことを打診する。代行と言っても、それは形だけのことで、事実上の領主持ちと変わらない処遇。
アルフレッド君は、もちろんYesで、義姉のために働くことを誓ってくれた。ジャクリーンは、自分の死後の所有権をアルフレッドに相続させる気でいる。もし、アルフレッドの方が先に亡くなるようなことがあれば、その妻子に相続させるつもりでいる。
普通、公爵の家に生まれても長男だけが領地も爵位も継げるもの。それ以外の兄弟は、貴族の家に養子に出るか、臣下として召し抱えられる立場になる。
それを事実上の領主持ちとなるのだから、Yesの返事をして当然と言えば、当然の返答になる。
事実上の領主持ちになれば、貴族令嬢とも結婚できるし、縁談が殺到することは間違いない。
エルモアを通じ、キャサリン王女から国王陛下にも話が通っている話なので、いずれ、アルフレッドに爵位が与えられることになると思う。
ジャクリーンとしては、この土地のレストランだけあれば、十分なのだ。これで誰にも見られず。好きなところに行き来できるだけで十分と思っている。
もっと早く贈与できるのであれば、その時にでも贈与をするつもりでいる。ただし、レストランだけは使わせてね。という条件付きで。
この領地の使途もアルフレッド君に任せることにしたのだ。当初は、インターチェンジのようなものを作り、観光地化しようと考えたり、あるいは田園地帯にするのも悪くないと思ったりしていたのだが、その使途も含めて、アルフレッド君に贈与する。
自分の好きなように思うように領地経営をしてくれたらいいと思っている。ジャクリーンにとっても、可愛い義弟なのだ。
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デビュタント後、急速に人生の歯車が回り出した。まさにそんな感じの波乱の、幕が切って落とされたのだ。
俺は宰相の息子でありながら、次男だから美味しいところは全部兄貴が持って行ってしまう、あの日まで、ずっとそう思っていたのだ。でもそれは、間違いだったことを後からさんざん思い知る羽目になるとは、その時はまだ知る由もなかった。
デビュタントだというのに、俺には婚約者すらいない。それはこの国の王太子殿下エドモンド様に、いまだに決まったお相手がいないから、高位貴族の息子は皆、エドモンド殿下に遠慮して婚約者を決められないのだ。
それは世界一の美女と謳われた令嬢が、エドモンド殿下との婚約を蹴ったことから始まる。
何が世界一だ。思い上がるなよ。貴様のおかげで、どれだけの貴族令嬢や令息が迷惑を被っていることをわかっているのか?
どんな高飛車なイヤな女かと思っていたら、デビュタントの翌日になり、兄貴とその女が婚約したという話を聞かされ、青天の霹靂とは、まさにこのことかと思ったのだ。
兄貴の婚約者は会ってみると確かに美人だが、普通の少女だった。それで、俺はこんな少女でも小さい時から美人だ、美少女だと言われ続け、自分に何ら責任のないところで勝手に政略の道具にされていると知り、今まで何も知らずに批判してきたことを後悔した。
その少女は、少々ボケているところがあるのか天然なところがあるが、それ以外はとても優しく親切な少女だった。美人に根性悪はいないという通説は本当だと思ったのだ。小さい時から可愛い、綺麗、と言われ続けて育ったのだから、性格が悪いわけがない。
ところがだ。その少女が図書室に入った途端、祖父さんの遺言本を見つけたというから、驚いた。その遺言本は、聖なる少女=聖女様以外は、見つけられないとする代物だったのだから。
レバトリー家は騒然となり、その後、お祭り騒ぎになったことは言うまでもないこと。これは、ひょっとすれば、俺にも運が回ってくるかと思ったよ。実際、回ってきたが。
その聖女様は、遺言本の最初のページの一説をスラスラ読み、地下室への入り口まで開いてしまったのだ。
あんな古語をどうやって、覚えたのだろう。聖女様になるような少女には、簡単なことなのだろうか。
後で祖父さんの遺言本を見たけど、俺にはサッパリ読めるような文字ではなかった。
初日は親父と兄貴が異世界へ行き、俺が行ったのは、確か2日目だったか?セバスチャンと一緒に行ったと思う。
異世界は、もう驚愕の連続だった。でも、異世界人はみんな笑顔だったことが強烈に印象に残っている。
異世界人は人種が違うのか、黒髪黒眼が大半を占めているが、中には我々と似たような肌の色や髪色をしている人間もいるにはいる。
異世界の食べ物は、この世界と似たようなものもあるが、味が全然違う。めちゃくちゃ美味しい。特に肉の美味さは群を抜いていて、柔らかいし、味が濃い。
調理方法もおそらく違うのだろう。この世界には焼くと煮るしかないが、異世界では揚げる、蒸し料理などもあるようだ。
聖女様が作ってくださる料理が特に美味しいと感じるのは、調理のバリエーションもあると思う。
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