前世記憶持ちの悪役令嬢は聖女様呼ばわりされることが嫌で嫌で仕方がない~乙女ゲームのヒロインにゲームクリアしてもらうために奮闘する

青の雀

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新しい出会い

41.春休み

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 お義母さんのお茶会のお菓子も無事仕入れることができ、シャルマン様の晴れ舞台?のファッションショーも無事終わり、そろそろ卒業シーズンと社交界デビューの日に近づいてくる。

 もう早いもので、シャルマン様と運命の出会いをしてから1年が経とうとしているかと思うと、感慨深い。

 その頃、社交界では、ある噂が持ちきりになっている。それは、マーロン・ブラウデン公爵令息の庶子が巷で溢れかえっているという噂。

 相手がそこそこの名家の令嬢ならば、婚約者として王家に届け出るのだが、伯爵以下の公爵家の嫁にふさわしくないような家の娘ばかりで、妊娠した娘の存在を隠すため、市井の下女の家で産み落とす事件が頻繁に起こっている。という話。

 シャルマン様の父、宰相閣下もこのことを深刻にとらえ、マーロンの種ならば、ブラウデン公爵が責任を持つべしという考え方を国王陛下に進言している。

 とはいえ、きちんとした家の娘でもないから、結婚前に男とふしだらな関係をしたことへの責任をすべてブラウデン筆頭侯爵が責任をとるというのもおかしな話。

 成人している娘をふしだらに育てた家の責任もあると言い、議論は難航している。

 今のまま、あるいは、もっと他にもマーロン様に弄ばれたと訴え出てくる娘が増えれば、マーロン様も廃嫡の危機にあるという。そうなると、次期公爵の座は弟御のカーネル様に行くのかしら。

 そうなると、今度のヒロインは、エドモンドよりもカーネル様狙いの方が玉の輿だということもありうる話。

 エドモンドなんて、狙ったら、ハピエン後のお妃教育が大変よ。と言ってあげたい。

 前世では、あんなにまじめだったマーロン様も今世では、ずいぶんと羽目を外されましたこと謹んで申し上げます。と言ったところだ。

 やっぱり、前世コンドームを渡したことは正解だったのかもしれない。

 外で遊んでいらしたとしても、コンドームのおかげで庶子を作らずに済んだと言える。

 やっぱり持つべきものは医学の知識と文明の利器よね。

 シャルマン様には、浮気の心配など、全然、まったくしておりませんわ。だって、これだけ毎日、毎日、ヤりまくっていたら、浮気している時間などない。……はず。

 いずれにしても、ジャクリーンには関係がない話で、高見の見物と言ったところ。

 シャルマンのお義父様とブラウデン公爵、それに国王陛下との協議はまだ続く見込み。

 新しい領地をもらえたおかげで、本郷へ最新の医学知識を盗み見するための余念がない。本郷のキャンパス内に仕掛け放題だから、後は、自分に隠ぺい魔法をかけ、教室や研究室、病院へと行き放題なのだ。

 今は6年生の講義を聴きに来ている。最初は1年生からと思っていたけど、まだまだ昔取った杵柄は現役だったようで、6年生からの講義で十分追いつけることが分かった。

 それもこれも、長年にわたる臨床の成果、実務経験がモノを言う。経験値だけは、今の若いものよりある。すでにこの発想をしている時点で、オバサン認定なのだが、本人は気づいていないので、このままいきます。

 春休み、社交界に入り浸るより、勉強していた方が断然楽しい。

 シャルマン様はというと、モデルが本格的に始動し、他社や雑誌、テレビ出演に追われている。言葉の壁はどうしたかというと、それが乙女ゲームのご都合主義で、契約金の1000万円で、翻訳機が無事買えたということ。

 あいかわらず、エルモアが父親のごとくシャルマン様にくっついて、自分も便乗して名を売っている。

 エルモアに対して、「勉強しろ!」と怒鳴っているジャクリーンはオカンそのものになっているのだが、これにも本人は全く気付いていないので、そのままにしときます。

 エルモアもシャルマン様もある意味で、気分転換をしているだけ。仕事という意識は希薄で、どちらかと言えば、散歩やスポーツをしているときの意識と似ている。

 エルモアは、キャサリン王女の婿殿という周りからの視線と扱いに重圧感を感じている。シャルマン様も、宰相の嫡男で、次期宰相を約束された職業の責務と重圧感、それに世界一の美女を娶るという周囲から常に羨望のまなざしを向けられている。

 たまには、こうして全く違う世界に身を置くことで、心のバランスをとっているといえよう。

 ジャクリーンは医学への執着、エルモアとシャルマンは、それぞれの重圧からの解放と三者三様の春休みは終わりに近づいている。

 新学期が始まりクラス替えが発表された。今度のクラスはエドモンドと同じクラスで、取り巻き連の中で、レバトリー家の次男アルフレッドとも同じクラスになったことは、ある意味、よかったこと。何かと突っかかってくるエドモンドのいい意味での緩衝材となってくれて、助かっている。

 「今度、異世界土産を持ってくるね。」とアイコンタクトで通じ合える仲は貴重だ。

 でも、エドモンドもブルオード国でいい人に出会えたようで、カノジョ持ちがほかの令嬢と仲良くしたいとは、どういうことだろうか?ジャクリーンには、理解しがたいけれど、そのカノジョがいいと言っているのであれば、別の話になるから黙っている。
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